AIが入口になり、本はその先にある
──ずばり、AIに聞けば答えが返ってくる時代に、三宅さんはなぜ本を愛するのでしょうか。
三宅:結局、世の中の問題は、正解がないもののほうが多いですよね。同じ事象でも専門家によって意見が分かれるし、様々な見方がある。AIはそれを要約してまとめ、答えを出してくれますが、私は「どういう立場があるのか」のほうを知りたいと思うことが多くて。
文芸評論家。京都市立芸術大学非常勤講師。1994年高知県生まれ。京都大学人間・環境学研究科博士前期課程修了。リクルート社を経て独立。小説や古典文学やエンタメなど幅広い分野で、批評や解説を手がける。著書『文芸オタクの私が教える バズる文章教室』『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』『「好き」を言語化する技術』『「話が面白い人」は何をどう読んでいるのか』『考察する若者たち』等多数。2025年、『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』にて、「新書大賞」を史上最年少で受賞。第76回NHK紅白歌合戦ゲスト審査員。
三宅:それぞれの立場を知るには、その立場の人が書いた本を読むのが、いちばん自分の求める答えに近いんですよね。要約は全体感がわかりやすい。でも、その人が何を細かく考えているのか、何を知識として差し出しているのかは、今のところ人が書いた本のほうがわかりやすい。詳しく知るには、本のほうが自分にはしっくりきます。
──1冊読み切ると、その人の考え方そのものが落ちてくる感覚があります。同じ情報を得ているはずなのに、まったく違う取得の仕方だなと。
三宅:共感します。良い意味で「ノイズ」が多いんじゃないかなと思いますね。
──では、AI時代に書籍の価値はどう変わっていくとお考えですか。
三宅:知りたいことがあったらとりあえずAIに聞く、という人は増えていますよね。昔なら、大学生がレポートで調べものをするなら図書館に行って本を読んでいました。でも今は、入口が本ではなくインターネット検索やAIになっています。
ただ、深く調べようとすると、その先でAIが教えてくれた本を読むことになったり、ネットに落ちていない情報を探すことになる。AIが入口で、さらに深めていくのが本、という役割分担になってきていると思います。
──読み手は結果的に本にたどり着いている。一方で、作り手や売り手はその入口の変化に慣れていない課題があります。
三宅:AIが食べている情報は、今のところ大半がネットの情報ですよね。この先、AIが本の情報を取り入れるようになるかどうかで、大きく変わってくるかもしれません。
先ほど「ノイズ」と言いましたが、本は良い意味で文脈や周辺知識も含めて教えてくれるものです。ただ、素早く答えを求めたいとき、入口にするにはハードルが高いと感じる人は、正直増えていると思います。
