営業とマーケティングは「本来同じもの」
能村:本日のテーマは「営業はキャリアの登竜門? マーケターは憧れの仕事? BtoBビジネスを味わうリーダーに聞くキャリア論」です。私自身31歳になり、まさに今キャリアの分岐点で迷っている立場でございます。本日は参加者を代表して、素朴な悩みをぶつけていければと思っています。
セレブリックスのアカウントセールスとして活躍し、二期連続で全社MVPを受賞。さらに通期優秀マネージャー賞を獲得するなど、営業・マネジメントの両面で実績を残す。大手自動車メーカーをはじめとした企業への営業コンサルティングに従事した後、現在は事業開発部門にて新規事業の推進に携わる。営業職を応援するメディア『YEALE』の事業オーナーとして、「いい営業して、うまい酒飲もうぜ」をコンセプトに、営業パーソン向けの実践的なナレッジコンテンツを発信している。
能村:営業・マーケティングのキャリアについてのお話の前に、まずは「そもそも営業職とマーケティング職は何がどう違うのか」について、目線合わせから始めていきたいと思います。向井さん、いかがでしょうか?
向井:もちろん様々な論調や諸説がありますが、まず海外の学説の代表的な定義で言うと、一番上に「マーケティング=商売全体の設計」という巨大な枠組みがあります。その枠組みの中に、人が直接商品を提供してお金をもらう「セールス=販売行為」がぶら下がっているという構造が基本になります。
一方で日本の場合、マーケティングと対になる形で「営業」という独自の広い仕組みを築いてきました。この「営業」とは本来、単に商品を売るだけでなく、集客から価値提供、商売を成立させて利益を出すまでの「バリューチェーン(商売全体)を動かす深くて広い仕事」なんですね。
このように本質を辿れば、営業もマーケティングも「商売全体を動かす」という同じ目的に向かって動くという意味で同等に広い概念であり、実は違いは大きくないんです。
約20年にわたるIT業界でのB2B営業経験を基盤にもつ。国内大手IT企業から外資系3社で多様な事業環境で成長を牽引。グローバルNo.1プレイヤーやマネージャーとして400%成長を牽引するなど、常に卓越した成果を創出してきた。2020年7月にはウェルディレクションを創業し、業種・規模を問わず、組織が自律的に成長し続ける「自走型営業組織」の構築を支援。2023年には社会構想大学院大学で実務教育学の修士号を取得し、営業戦略とマネジメント理論を高度化。現在は事業構想大学院大学の客員教授として知見を体系化し、大手企業の経営層が求める持続的な営業成長を実現するパートナーとして活動している。
飯髙:私も「本質的に同じ」だと考えています。マーケティングって「欲しいと思っている人に届ける仕組みを作ること」なんです。自分たちのソリューションを本当に求めている顧客を探し出し、そこにどうセールス(=販売行為)をつなぎ込んでいくか。本来、「マーケティング」と「セールス(営業)」は切っても切れない一本のストーリーなんですよ。
ベーシック執行役員、ホットリンクCMOを経て2022年6月「ひとの温かみを宿した進化を。」をテーマにGiftXを創業。「最高のギフト体験を、最小の工数で。」法人ギフトプラットフォーム「GIFTFUL for business」運営。 Webサービス・メディアの立ち上げなど200社以上のコンサルティングを経験。現在も企業のアドバイザーやマーケティング支援を実施。著書に『僕らはSNSでモノを買う』『BtoBマーケティングの基礎知識』など、5冊のマーケティング専門書を執筆。
なぜ組織の「分断」はなくならないのか?
能村:本質的にはどちらも「商売を成立させること」で一致している、と。しかし現実は少し違って、いま多くの現場で営業とマーケティングの分断が問題になっているじゃないですか。なぜこういうことが起きてるんですかね。
向井:分断が起きる大きな原因は2つあります。1つ目は、経営やマネジメント層が「商売全体のバリューチェーン」を理解していないことです。特にここ10数年、スタートアップを中心に特定分野(営業だけ、プロダクトだけなど)の専門経験から起業や幹部になる方が増えました。バリューチェーン全体を体験したことがないままマネジメントに就くと全体像がわからないので、他社の表面的な分業モデルをそのまま真似しにいってしまうんですね。
その結果起きる2つ目の原因が、「局所的なKPI設定と評価制度」です。マーケティングをプロモーションと捉えて「どれだけリードを取れたか、CPC(Cost Per Click)はいくらか」だけで評価してしまう。現場のマーケ担当者も「リードを取るのが自分の仕事だ」と錯覚して、手前の指標だけを追うようになります。一方の営業担当者も、本来の広い役割を認識しないまま「目の前の顧客に販売すること」だけに閉じて目先の数字を追ってしまう。
能村:なるほど、経営側の理解不足と、それに紐づく局所的な評価制度で分断が起きていると……。せっかくなので、両方を経験したお二人にお聞きしてみたいのですが、もしお二人が同じ会社にいて、向井さんが営業責任者、飯髙さんがマーケ責任者だったとしたら、分断を起こさないためにどんな連携の工夫をされますか?
