AIを導入したのに、営業の提案が「顧客自身も知っている公開情報のまとめ」で終わっていませんか?課題解決型営業で成果を出すには、AIの分析結果をそのまま使うのではなく、営業担当者が顧客から引き出した「定性的な情報」を掛け合わせ、仮説の精度を対話的に高めていく思考プロセスが欠かせません。本稿では、AIに自社の商談・提案データを学習させて組織独自の強みを引き出す具体策について、消費財メーカーの改善事例を交えて紹介します。
課題解決型営業とAI
第1回で掲載したとおり、課題解決型営業の推進・高度化には、営業のスキル、マネジメント、組織文化の3つを改善・高度化することが必要です。このような3つの課題を一定程度クリアしたうえで、次に検討すべきが、推進に必要な“エンジン”としてのシステムやAIの活用方法です。
昨今、AIの活用方法が見直され始めています。たとえば、米アマゾン・ドット・コム社においては「AIを使うこと自体を目的化しないように」という号令が出されています(出典:「『AI使用、目的化やめて』 アマゾンが社員に呼びかけ」日本経済新聞、2026年6月6日)。
営業プロセスにおけるAI活用も例外ではありません。特に課題解決型営業では、AIの活用は、目的と手段のとらえ方を誤ると、マイナスの効果につながってしまう危険性さえあるのです。
本稿では、そもそも現代における企業の「課題解決」をベースとして、必要なAIの機能と活用方法、およびAIを機能させるために必要な業務とデータについて、事例も交えながら紹介します。
そもそも「課題解決」とは何をすることか
「価値創造経営」という言葉の流行は、ステークホルダーからの企業への要求の変化を示しています。
従来、ステークホルダーが企業に求めていたのは、「現状の売上・利益」が中心でした。しかし、経営環境の急速な変化と不確実性の増大により、中長期的に企業が維持・成長するためにどのような成長戦略を描くのかということに関心がシフトしています。結果として、企業は自社の中長期課題を分析し、既存事業の改革と新規事業の創出によって、どのように企業価値を高めていくかを提示することが求められるようになったのです。
課題解決型提案は、顧客の中長期的課題と対応する施策を提案し、自社の商材・ソリューションがその施策の実行に(部分的にでも)寄与するというロジックを構築する必要があります。すなわち、大まかに分けると、次の4つのステップで提案を構成する必要があるのです。
- 企業の内部・外部環境分析
- 課題の導出(特に中長期の観点)
- 事業の創出・変革の方向性
- 自社商材・ソリューションの寄与
筆者は複数の企業で課題解決型営業の実現に向けたコンサルティングを提供してきましたが、営業が最も悩むのは「3、事業の創出・変革の方向性」から「4、自社商材・ソリューションの寄与」へのつなぎ込みです。「分析した課題の解決に自社の商材が貢献できない」という相談を数多く受けました。第1回で述べた、商材を機能ではなく課題解決の文脈に書き換える「価値化」の作業が、まさにこのステップで決定的な意味を持ちます。
すなわち、商材を「機能」として提案するのではなく、どのような課題を解決するのに有用なのか、事業の推進にどのように寄与するのかという文脈に書き換えるという作業が必要なのです。
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株式会社博報堂 奥山 友貴(オクヤマ トモキ)
株式会社博報堂 コマースビジネスデザイン事業ユニット エグゼクティブビジネスコンサルタント。シンクタンク系コンサルティングファーム、外資系コンサルティングファームを経て、2025年より現職。事業戦略策定、セールス改革のコンサルティングを専門領域として、小売、メーカー、不動産、金融、IT通信など幅広い業界に対するコン...
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