AIは「増幅器」。失敗を恐れず試し、戦略を磨き上げる
高橋:部門を超えた顧客理解とデータ活用を進める上で、AIの活用も大きなテーマとなります。パナソニック コネクト様におけるAI活用のポイントは何でしょうか。
関口:我々の基本的スタンスは「Fail Fast(早く失敗する)」です。2023年2月から国内全社員へAIを導入し、業務生産性の向上や知識の民主化を進めてきました。顧客側がこれだけAIを使いこなしている時代に、自分たちが試さずに議論ばかりしていては取り残されてしまいます。まず自分たちで使ってみて失敗から学ぶこと、そして思考の時間を作るためにテクノロジーを使い倒すことがポイントです。マーケティング部門でもアクティブユーザー率が7割を超え、戦略策定や商品企画の領域で活用が進んでいます。
高橋:営業組織におけるAI活用も急拡大しています。成果を出す組織にはパターンがあります。デジタル経営が浸透している企業、全社的に思考力の高いクリティカルシンキング集団、エバンジェリストに権限移譲している組織、そして非常に高い目標を掲げてAI活用を不可避にしている組織です。
ここで気をつけたいのは、AIは「魔法の杖」ではなく「増幅器」だということです。元の戦略設計や実力がしっかりしていなければ、ノイズを大きく増幅させるだけになってしまいます。
関口:まさにその通りですね。How先行にならず、何を目的とし誰にどんな価値を届けるのかという根本的な問いに向き合うことが、AI活用を成功させる前提条件となります。

顧客価値起点を実現する3つの要点。企画部門がとるべきアクションとは
高橋:ここまで顧客理解やAI活用についてうかがってきましたが、これからの企画部門はどのようなアクションに注力すべきでしょうか。
関口:意外に思われるかもしれませんが、価値観やスキルの多様性をもっと利用すべきです。当社の社員約3,000名を対象としたDE&I推進に関する調査では、興味深い結果が得られました。「DE&I」などの用語にはあえて触れず、組織のパフォーマンス・成果の源泉を分析した結果、性別などの属性の多様性だけでなく、価値観やスキルの多様性が掛け合わさった時に組織の成果が最大化することがわかったのです。
高橋:営業組織を対象とする調査でも、個人の強みが生きる経験や試行錯誤の経験が営業スキルの高さと強く相関していることが分かっています。ともすれば均質化しがちなAI時代こそ、標準化を進めると同時に、個人の工夫も取り入れて多様性を担保することも、企画部門の役割として重要ですね。
関口:ええ。企画部門の役割は、今期の売上達成を支援するだけではありません。顧客価値を継続的に提案・提供し続ける仕組みを構築することが本来の役割です。そのためには、部署間の「三遊間」に落ちるボールを拾い合うような連携のカルチャーを育てることが欠かせません。弊社では認識のズレを防ぐため、ターゲットや独自便益、メッセージ構造を明文化した「Blueprint」を作成し、共通言語化を図っています。
関口:見えにくくなった顧客を理解し、事業を顧客価値起点に変革するには「プロセス」「データ・システム」「社員カルチャー」の3つを揃えることが不可欠であり、それこそがこれからの企画部門が果たすべき真価だと考えています。
高橋:「顧客理解に終わりはない」ということですね。全方位で取り組み続ける重要性を再認識しました。本日はありがとうございました。

