個人単位を案件単位に束ねるのがADR
Buying Groupの動きを捉えようとすると、個人リードを中心としたマーケティング/営業活動では限界があります。

たとえば、A社の担当者が資料をダウンロードし、A社の別部署の責任者がセミナーに参加したとします。個人単位では別々の反応ですが、同じ課題や購買テーマに関する動きであれば、1つのBuying Groupとして捉えられます。しかし実際には、2人目の反応が重複リードとして処理されたり、最初に反応した1人のリードだけが営業担当者へ渡されたりすることがあります。これでは、同じ企業で複数の関係者が動いていても、その動きを1つの購買案件として認識できないでしょう。
MQLが増えても商談につながらない背景には、こうした「人」と「案件」の管理単位の違いがあります。MAツールが捉える単位が人である一方、営業担当者はSFAやCRMでOpportunity、つまり案件を追っています。人と案件の間をつなぐ役割が、本連載で取り上げるADR機能です。
Forrester B2B Summit 2026のワークショップでは「Buying GroupをCRMやSFA上でどのように扱うか」についても議論されました。そこで紹介された機能の1つがADRです。本連載ではADRを、個人単位で得られた反応を企業の購買テーマと結び付け、営業が追う案件へとつなぐ機能として扱います。
ADRの役割は、単にアポイントを増やすことではありません。同じ企業から得られた複数の反応を整理し、どのような課題や購買テーマに関する動きなのかを把握します。さらに「既に接点のある人が購買にどう関わっているのか」「ほかにどのような関係者との接点が必要なのか」を見極め、Buying Groupを形成していきます。
たとえば、営業担当者が重点企業ごとに攻略計画を立てていても、マーケティング担当者やインサイドセールスが個人リードだけを追っていては、営業の方針と日々のマーケティング活動がかみ合いません。ADRは、営業が狙う企業や課題を踏まえて、営業のアカウント戦略をマーケティングやインサイドセールスの具体的な活動につなぐ役割です。
すべての企業/事業にADRが必要なわけではない
筆者が述べたいのは、必ずしも「ADRを新たな役職として新設しましょう」ということではありません。専任者を置く場合もあれば、既存のマーケティング、インサイドセールス、営業企画などが機能を分担する場合もあります。組織上の名称ではなく、重点企業の複数の接点を1つの案件へまとめる役割を誰が担うのかがポイントです。
また、すべての事業にADRが必要なわけでもありません。低単価のSaaSやSMB向けのように、短期間で多くの案件を扱う事業では、個人の反応を素早く営業へ渡すほうが合理的です。一方、重点企業を個別に攻略し、複数の関係者との合意形成が必要で、案件化や受注までに長い時間を要する事業では、ADRの機能が活きてきます。詳しい条件は第3回で扱います。
次回は、インサイドセールスがSDR、BDR、ADRなどの機能に分かれる理由を整理します。それぞれの名称を覚えることが目的ではありません。見込み客への対応、重点企業の開拓、Buying Groupの形成と案件化を、それぞれ誰が担うのかを考えます。
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熊倉 宏紀(クマクラ ヒロキ)
マーケットワン・ジャパン合同会社 デジタル&コンサルティング部 部長
リコーに入社し、大手法人営業を経験後、グローバルの製品マーケティングに従事。マーケットワン・ジャパン入社後は大手日系製造業や外資系ハイテク企業向けに、マーケティング戦略設計やデータ活用に向けたデジタルマーケティングの推進のコンサルティ...
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