アパレルEC関連のさまざまなゲストをお招きし、メガネスーパーでECを統括する川添隆さんと対談していただくこのコーナー。第11回は、百貨店ECの先駆者・マルイでオムニチャネルを推進する、臼井毅さんが登場です。後編では、ヒットPB商品「ラクチンきれいシューズ」の成功事例をもとに、各チャネル、そしてECがどのように機能すべきかを聞きました。
積極的なシステム投資が売上アップにつながっている
川添(メガネスーパー) EC事業立ち上げ当時、「在庫連動」とともに「カード連動」にも取り組まれたのは、マルイさんならではだと感じました(前編参照)。今でこそ自社でもカードを発行して、顧客化しようという企業も増えていますが、マルイさんのカード事業は、オムニチャネルやECどころか小売事業以前からのものですよね。
臼井(マルイ) マルイのオムニチャネル戦略において、ECの顧客獲得はもちろん、カード会員の数を積み上げていくことも非常に重要です。どちらもLTVが試算され、明確な利益額が共有されています。これが現場にも伝わると、たとえば実店舗の販売員にも、「だから私たち、クーポン配ってるんだ」とわかってもらえる。配ったクーポンから、今週はいくら、月では、半年ではいくら売り上げた……と理解することが、取り組みを進めていくうえでは非常に重要です。
川添 なるほど、よくわかります。メガネスーパーの企業としての憲法第二条は「顧客情報を活用せよ」というもので、そのため、あらゆるチャネルで顧客情報の獲得を徹底しています。今でこそポイントカードやEC、アプリ等の手段がでてきましたが、そもそも顧客情報を活用している小売企業のほうが実は少ないです。顧客と紐づいたデータが明らかになると、それぞれの施策の成果が把握しやすく、実感も得やすいですよね。それが重要だとわかっていても、多くの企業は、在庫連動、カード連動といった大きなシステム投資はなかなかできないものです。
臼井 システム投資せずにアナログで続けた場合、たとえば実店舗で品切れがあった場合に、他店に電話をかけて在庫がないか確認を取りますよね。そこで展示品しかなかった場合、それでもよいかをお客様に確認したりする。お客様がそれでいいとおっしゃったら、伝票を記入し、個人情報を管理する。入荷したら中身を確認して、お客様に入荷した旨を電話でご連絡する。これが年間で何万件も起きると、相当な時間のロスですし、お客様にとっても不便ですよね。
在庫連動やEC基盤ができていると、たとえば実店舗でPB商品が欠品したら、タブレットでECに接続し、その場で受注処理をし、倉庫からすぐに出荷できるようになっています。するとお客様の中には、そのままネット会員に登録される方も、場合によってはカードに入会される方もいらっしゃいます。お客様に喜ばれるサービスを提供していくことで、自然と会員登録、カード入会していただけることがわかってきました。
川添 ECやデジタルマーケティング分野でもいろいろなツールやテクノロジーが出てきていますが、そちらへの投資はいかがですか。
臼井 最先端と言えるかはわかりませんが、レコメンドエンジンがフル稼働して1年半くらい経ちました。チームラボさんとタッグを組んで、プライベートDMPを作ってもらったんです。このDMPには、もともと持っていた商品、カード、購買データに加え、ECや店舗サイトの閲覧情報、購入された商品のカラー・サイズといった情報も入れていて、そこからレコメンドする情報を導き出しています。
最近では、ECで購入してくださるお客様の50%以上は、購入するまでの遷移の中で、レコメンドした商品を閲覧していることがわかってきました。さらにその50%、つまり4分の1の方たちが、レコメンドした商品そのものを購入しています。結果的に、プライベートDMPの情報からレコメンドを受けたお客様は、通常のお客様よりも購入点数が2割ほど多くなっています。
当社のトップは、そういったツールがお客様のお買い物体験にどういった効果をもたらすのかに、非常に高い関心を持っています。それを説明するのも、私の大事な仕事です。EC事業の開始から今に至るまで、経営陣がこちらを向いてくれていると感じています。そういう意味でこの10年間、とてもやりやすかったですね。

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フロッグデザイン株式会社 代表取締役 丸山彰護(マルヤマ ショウゴ)
コンピューター系からデザイン全般にわたる数々の出版物の制作と執筆を行う。EC関連の事業として店舗の運営を行いながら市場のチェックは欠かさない。最近では、コンテンツマーケティングやマーケティングツールなどの施策に興味を持っている。
●連絡先:東京都町田市玉川学園2-12-36
●電話:042-732-3571
● E-MAIL:info@frogdesign.jp
●会社HP:https://frogdesign.jp※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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