地元の産業や食の課題解決をしたい──こうした想いから新潟県長岡市で創業した株式会社FARM8が、日本酒の可能性をアップデートすることを目指して新たな取り組みに挑戦している。酒蔵と日本酒に興味を持つ顧客との出会いを生む日本酒定期便「SAKEPOST」実施の経緯と、酒蔵×デジタルの掛け合わせで生まれた効果について、同社の石橋てるみさんに話を聞いた。
インバウンドの購買行動から生まれたパウチ入りの日本酒
2015年に新潟県の食の課題を解決することを目指し、創業したFARM8。創業者の樺沢さんは、創業前からNPO支援と地域づくり活動に軸足を置いた活動を行っており、地域のさまざまな課題と直面していたと言う。
「新潟と言えば米や日本酒が有名であり、地域を支える重要な産業のひとつとなっています。中でも私たちが拠点とする新潟県長岡市は新潟県内で酒蔵がもっとも多い街であり、日々多くの相談が寄せられています」
FARM8に寄せられる相談は、「若者の日本酒離れ」を課題としたものや「マーケットの発掘」「日本酒をつくった後に生まれる酒粕の利活用」など幅広い。課題を解決するにも、家族や個人など経営規模が小さい酒蔵では酒づくり以外の作業時間を捻出するのが難しいなど、「実行に至るまでの障壁が多数存在することが見えてきた」と語る石橋さん。
「そこで酒づくりは行っていないながらも、メーカー・企画を行うことができる立場から酒蔵にできることはないか、管理栄養士など食品に関する資格や業界経験を活かし、新しい仕組みをつくることで課題解決に貢献できないかと考え、日本酒をカクテルのように飲むことができる『ぽんしゅグリア』や酒粕ヨーグルトの『JOGURT(醸グルト)』、発酵ドリンクを提供する実店舗『Hacco to go!』などの展開を行っています」
コロナ禍以前は豊洲や赤坂、吉祥寺など都心部にも実店舗を構え、日本酒や酒粕の楽しみかたを顧客に伝えていた同社。しかし、コロナ禍で人の動きが変わる様子を目の当たりにし、現在は売上の7割ほどをECで創出しているとのこと。酒類を提供する店舗の営業自粛・時短要請などにより日本酒卸の需要が減り、自宅でお酒を嗜む動きが出てきた中、2021年11月に提供を開始したのが日本酒定期便「SAKEPOST」だ。
「『SAKEPOST』は日本酒をパウチに入れ、ポストに投函できるサイズにしてお届けしているのですが、『日本酒をパウチに入れるのはどうだろうか』と案が浮かんだのは、実はコロナ禍以前になります。
当時は、豊洲の店舗に日々観光バスでインバウンドの観光客がたくさん訪れていました。扱う商品が日本の名産品ということもあり、多くの方に商品を見ていただけていたのですが、米菓などはよく売れてもなかなかお酒、とくに瓶に入った日本酒が売れずに苦戦していたのです。
たしかに観光客の立場に立って考えてみても、重くて割れる心配がある瓶製品は購入をためらいますよね。しかし、店頭を眺めると日本酒はどれも瓶に入ったものばかりです。私は食品業界にずっと携わってきたので、液体を入れる容器が多種多様あることは把握していましたが、パウチのように軽くて割れない容器に日本酒を入れることはできないのだろうか。そう思い、商品開発を始めました」
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ECzine編集部 木原 静香(キハラシズカ)
立教大学現代心理学部映像身体学科卒業後、広告制作会社、不動産情報サイトのコンテンツ編集、人材企業のオウンドメディア編集を経験し、2019年に翔泳社に入社。コマースビジネスに携わる方向けのウェブメディア「ECzine」の編集・企画・運営に携わる。2025年4月1日より、ECzine 副編集長を務める。
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