2022年に入り、レザー代替素材を用いた商品や倉庫に眠る過去の良品ランドセルを集めた「STOCK LUCK」シリーズの販売に加え、リユース事業を開始している株式会社土屋鞄製造所。以前より修理の受付など、顧客と長期的な関係の構築を意識するのみならず、早期からShopifyを導入するといったテクノロジー活用にも積極的な同社が、なぜこのタイミングで製品ラインナップの多様化や修理のその先まで見据えた取り組みに着手したのだろうか。同社で取締役を務める沼田雄二朗さんと、コミュニケーション本部 CRAFTCRAFTS部 受注相談部 部長の笹田知裕さんに話を聞いた。
購入検討者の声が製品の選択肢を増やすきっかけに
アメリカのバイオテック企業 Bolt Threads(ボルト・スレッズ)社が開発する、キノコの菌糸体から生まれたレザー代替素材「Mylo(マイロ)」。日本国内のブランドが同社と手を組み、製品開発を行うのは初の試みとなる。世界に目を向けると、すでにラグジュアリーブランドなどが同素材を用いた製品を販売しているが、土屋鞄製造所は同社に出資し、素材開発・製品開発を共同で行う業務提携を行っている点も特徴だ。いったい、どのようなきっかけで出会い、手を組むまでに至ったのだろうか。
「当社は革製品を扱っていますが、2020年頃からお客様の考えかたが多様化しつつあることを感じる機会が増えていました。具体的には、購入を検討してくださっているお客様から『ヴィーガンなので動物性素材は購入したくないが、土屋鞄で購入できる製品はあるか』といったお問い合わせを店舗やメールでいただくなどの動きです。こうしたお声を踏まえ、『中長期では従来使用している革と異なった選択肢も必要になるのではないか』という議論が社内で出てきたことが、マッシュルームレザーやMyloに目を向けた最初のきっかけとなります」(沼田さん)
気になるメーカーを複数ピックアップする中でBolt Threads社のMyloと出会ったが、当時すでにMyloは名だたるブランドともコラボレーションを行うほどの存在となっていた。「果たして日本のいち企業からの相談を受けてもらえるのだろうか」と不安を抱えながらも相談をしたところ、話が前に進み始めたと沼田さんは振り返る。
「『日本のものづくり企業』という立ち位置や、世界的に見たら特殊なランドセルという商材を扱っている点に興味を持っていただけたようでした。当社からも『革素材の新たな選択肢を日本国内で啓蒙したい』『中長期で製品の開発にもかかわっていきたい』という想いを伝えた点が良かったのかもしれません」(沼田さん)
実際に製品開発がスタートしたのは2021年の夏。土屋鞄製造所はMyloを使って鞄などの製品作りを行うにあたり、サンプルを先方に見せるだけでなく、素材として難しさを感じた点や素材の良さを活かした縫製方法などといったナレッジの蓄積とフィードバックをこまめに行うように心がけているそうだ。
「マッシュルームレザーはすでに製品化に値するだけのクオリティーを保持していますが、素材として完成はしておらず進化の途上です。当社の職人も、最初にMyloのサンプルが届いた際にすぐに『これで何か作っても良いですか?』と聞いてくるほど、見ているだけでアイディアが湧いてくる気配を感じました。日本のものづくりの知見を掛け合わせれば、より良い素材になるに違いありません。こうしたフェーズで当社が関与できるのはとても夢があることだと思います」(沼田さん)
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ECzine編集部 木原 静香(キハラシズカ)
立教大学現代心理学部映像身体学科卒業後、広告制作会社、不動産情報サイトのコンテンツ編集、人材企業のオウンドメディア編集を経験し、2019年に翔泳社に入社。コマースビジネスに携わる方向けのウェブメディア「ECzine」の編集・企画・運営に携わる。2025年4月1日より、ECzine 副編集長を務める。
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