コメ兵、ユナイテッドアローズでDXを推進した後に、現在は株式会社300Bridge 代表取締役として経営、事業戦略、デジタルに関する各社のサポートや情報発信を行う藤原義昭氏。同氏が2018年から2019年にかけて連載していた「オムニチャネルの次の話をしよう」が、アップデートして帰ってきました。連載第4回は株式会社R6B 代表取締役 師橋淳一氏と対談。後編は、AI活用を含めたこれからのEC事業成長の見通しについて語り合いました。
前編の記事はこちら
円安リスクよりも恐ろしい機会損失 海外・越境EC展開を阻む“ある壁”とは
藤原(300Bridge) 前編では、Shopifyの“らしさ”や、それを生かせる・生かしきれない環境の差などについて議論しました。これは、事業者側が中長期の戦略を描ききれていなかったり、そもそも事業が抱えている課題の可視化・言語化ができていなかったりといった問題もありそうです。このほかに、師橋さんが話を聞く中で感じているEC事業者の課題はありますか?
師橋(R6B) 海外展開(越境EC)ですかね、やはり。
藤原 どんな課題があるのでしょうか?
師橋 海外戦略こそ、これからの経営の根幹ですし、トップがしっかりと指揮を執って進めるべき案件だと思うのですが、担当者に丸投げで経営陣の中でたらい回しにあった挙句、「リスクがあるからやらない」という判断に行き着くケースが多いなと危機感を覚えています。
確かに、僕自身もアメリカで事業を立ち上げてみてわかりましたが、海外展開は責任を負う覚悟と根気が必要です。まだ目に見える成功者が多いわけではありませんから、失敗することもあります。頓挫する案件を見ていると、その“失敗”を恐れているのかなと。意欲ある担当者がきちんと座組を整えても、「円安だから」「世界情勢が不安だ」といった理由で止まってしまい、もったいないなと思います。商材によっては、ライバルがまだ少なくて寡占状態ですし、日本の事業者はサービス品質が良いので、きちんとやり切れば新しい扉が開けるはずなんですよ。
藤原 師橋さんがなぜR6B Americaを立ち上げたのかも、聞いて良いですか?
師橋 Shopify構築支援をしていると、アメリカやカナダなどグローバルの企業と同じ土俵に立たなければ勝ち残っていけないなとよく思うんです。なので、自らシアトルの街に足を運んで銀行口座を作るところから始めました。今は主に、日本の事業者の海外展開をオン・オフ双方から支援しています。
消費者はいつでもどこでも買いたいのか 多チャネル展開時に陥りがちな“どっちつかず”の罠
藤原 海外のEC市場を覗き見ることで、日本のEC市場に対する見方も変わりそうですが、実際いかがですか?
師橋 ここは藤原さんともぜひ議論したいなと思うのですが、現状の日本は、北米のD2C文化とアジア圏のライブ配信文化が共存しつつありますよね。各社が自社ECを立ち上げながら、モールでも売上を伸ばしていますし、なんでもやらなきゃならなくて大変だなと感じる部分もあるんです。「この国を真似すれば良い」といった、絶対的なベンチマーク先はないですよね?
藤原 そうですね。ただ、どのチャネルもメインストリームになりきれていないなと思います。EC事業者側も、ビジネスを尖らせるためにチャネルや施策を絞り込んで、そこでしっかり結果を出せるようにアクションを起こしていくのがセオリーですが、舵を切って失敗したら……と考えて前に進めない。「他にないブランド・商品だね」と思ってもらえなければ勝てないのに、なぜかみんな他社の事例に倣って真似事をしたがるんですよね。
「いつでもどこでも買える」はもう当たり前の世界なので、本来は買う場所やものに“意味”をもたせるべきです。なので、他社と同じことをするよりも、自社のブランドや商品に適したチャネルを選び、購買体験を設計して「あえてここでは売らない」「この売り方はしない」といった選択をしたほうが良い。僕はそう思うのですが、いまだに全モールに出店してそれぞれを少ないリソースで運営し、どっちつかずになるといった悲劇はなくならないですね。
師橋 その判断が正しいのか、事前に数字で説明がつかないから踏み出せない可能性もありますよね。なので、まさに今、R6Bの支援例からロジックを導き出し、施策の優先度をアドバイスするようなプランを作れないかと考えているところです。参考になるデータがあれば、判断しやすくなるのではないかと仮説立てています。
藤原 確かにそうかもしれません。
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ECzine編集部 木原 静香(キハラシズカ)
立教大学現代心理学部映像身体学科卒業後、広告制作会社、不動産情報サイトのコンテンツ編集、人材企業のオウンドメディア編集を経験し、2019年に翔泳社に入社。コマースビジネスに携わる方向けのウェブメディア「ECzine」の編集・企画・運営に携わる。2025年4月1日より、ECzine 副編集長を務める。
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