『セールス・イズ2』を上梓したセレブリックスの今井晶也が、顧客とともに真の課題を発見する技術「ファクトファインディング」を解説する連載。単なる困りごとのヒアリングや質問術ではなく、正しい「順番」と「文脈設計」によって顧客が自然に未来を語りたくなる状態をつくり、買う理由を共創するためのアプローチを伝授します。第1回のテーマは、質問の順番です。
困りごとは誰でも聞ける
トップ営業ほど「何かお困りごとはありますか?」を最初に聞きません。理由はシンプルです。お客様が簡単に言葉にできる困りごとを対話したその先に待っているのは「なぜ今まで解決してこなかったのか」という現実だからです。
もちろん、それを整理することにも価値はあります。しかし、その会話だけでは“現状の欠損”を埋める話になりやすいのです。現状の欠損、つまり「何か足りない」「もっと良くしたい」という状態は、お客様にとって「あったらいいな」というニーズにはなります。ですが「今すぐ何とかしたい」「絶対に実現したい」という強い欲求にはつながりにくい。だからこそ、多くの営業はお客様の話を聞いているのに、案件がなかなか前に進まないのです。
さらに言えば、仮にその困りごとを起点に提案機会を得られたとしても、その時点でお客様の頭の中では比較検討が始まっています。顕在化したニーズに対する提案は、他社との比較がしやすい。そして比較しやすいものは、最終的に機能や価格の勝負になりやすいのです。
困りごとは誰でも聞けます。だからこそ、困りごとから入るだけでは差がつきません。では、トップ営業は何をしているのでしょうか。
未来の話をいかに自然に受け取ってもらうか
トップ営業は、対話の焦点を「現在」ではなく「未来」に置いています。お客様が今言葉にできる困りごとを並べるのではなく「これから実現したいことは何か」「どんな未来を目指しているのか」を対話するのです。
そして、その理想の未来を描く過程で「実現するために足りないものは何か」「今の取り組みのままで本当にたどり着けるのか」「これから起こり得る問題は何か」を一緒に言語化していきます。つまり、課題を聞くのではなく、課題を発見していくのです。
ここで1つ誤解があります。トップ営業は未来の話をするからといって、いきなり未来を聞くわけではありません。初対面で突然「御社は3年後どうなっていたいですか?」と聞かれても、多くのお客様は戸惑います。営業だけが未来を見ていて、お客様はまだ現在地を整理している──そんな状態では会話が噛み合いません。ここに営業力の差が生まれます。
未来を聞くことが大事なのではありません。未来の話を自然に受け取ってもらうための“順番”が大事なのです。そして、その順番をつくる技術こそ、セレブリックスが長年磨き続けてきたファクトファインディングです。
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今井 晶也(イマイ マサヤ)
セレブリックス営業総合研究所の所長兼セールスエバンジェリストとして、法人営業・購買・AI営業の最前線で研究や情報発信を行う。著書に『Sales is 科学的に「成果をコントロールする」営業術』『お客様が教えてくれた「されたい」営業』『The Intelligent Sales~AIを活用した最速・最良でクリエイティ...
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