生成AIからAIエージェントへ 米国で起きている変化
石野(ナインアウト) 福田さんは日々、米国の現地企業と接していらっしゃいます。この1年で空気は変わってきていますか。
福田(Japan Cloud) 年に5、6回ほど米国に行っていて、ちょうど先週サンフランシスコから戻ってきたところです。カンファレンスに参加するだけでなく、AI関連スタートアップのCEOやCTOと直接話す機会も多いのですが、明らかにフェーズが変わってきています。
中でもベンチマークにしているのが、毎年3月と10月に開催される米国投資銀行主催のカンファレンスです。数百社のCEOやCFOが登壇し、各セクターの現況を議論する4日間のイベントですが、ここ3年ほどAIがテーマになっています。
昨年までは、アナリストが「自社のジェネレーティブAI(生成AI)戦略はどうですか」と各社に聞いていたのですが、今年は、ジェネレーティブAIという言葉は一切出てこず、すべて「AIエージェント」の話になっていました。
石野 言葉の置き換わり、興味深いですね。実態も伴っているのでしょうか。
福田 そうですね。2年前は「ChatGPTをどう使うか」「それで社員の生産性をどう上げるか」が中心でしたが、今年は完全に「自律的なエージェントをいかに組織の中に取り込むか」という議論になっています。
導入が進んでいる業務領域も具体化していて、とくにコンタクトセンター、一部の営業ワークフロー、そして最近はリーガル領域がかなり進んでいる印象です。生産性を上げるだけではない、業務完結型のエージェントが増えてきていますね。
石野 2年前のPoCの段階とはまったく違っているんですね。
福田 ええ。2年前は翻訳や要約といった、個人単位での活用が中心でした。今は業務プロセスをかなり細かく分解して、エージェントを活用する仕組みが生まれています。さまざまな領域に特化したAIエージェント化されたアプリケーションが出てきていて、それぞれの差別化要因はいかに業務プロセスを理解しているかになっています。
組織の再設計はどう進む? 日本企業のAI投資は遅れていない?
石野 AIエージェントが業務を担うようになると、組織設計はどう変わるのでしょうか。
福田 最近のニュースを見ていると、米国企業ではこれまでと桁違いの規模で人員を削減している例がたくさん出てきます。日本で同じことができるかというと、難しいと思います。ただ単純に人を減らす話ではなく、業務プロセスをきちんと分解して、「どこにAIを使い、どこまでをカバーさせるか」「組織図の中にAIをどう組み込むか」をかなり緻密に設計している点が重要です。
重視されているのは、「人とのリレーションシップ」の領域です。たとえば法律事務所でも、仕事を取ってくるパートナーの役割は実は最も重要で、その下で過去判例を調べたり矛盾点を発見したりする作業はAIで置き換えられていく。「肝心な部分はどこか」を見極めたうえで、組織を再設計しているという感じです。
石野 テクノロジーの導入や活用において日本は遅れていると言われがちですが、現場の感覚はいかがでしょうか。
福田 日本企業の方々と話すことも多いですが、インターネットや、クラウド、モバイルなどのこれまでの大きな変化と比較しても、速いスピードでAIに投資している会社が多い印象があります。
石野 私も同じ体感を持っています。新しい考え方やテクノロジーが日本に浸透するまでに一定の時間差があり「日本は10年遅れている」と言われた時代がありましたが、AIに関しては情報もツールも世界中でほぼ同時に利用できる環境にあります。
企業の投資スピードや投資額も非常に大きく、変化の速度はこれまで以上に速いと感じています。だからこそ、国や市場の差というよりも、企業や個人がどれだけ本気で取り組むかによって、今後の差は大きく開いていくのだろうと思います。
