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エンタープライズセールス事例

MRR6倍を実現したエンプラ開拓の「型」を解説。 商談の設計図「ビジョンページ」と集団学習の仕組み

ディグル株式会社 エンタープライズ事業部 部長 松本 翔吾[著]

1件の商談を「チーム全員の経験」に変える

 以前、多くのリソースをかけた案件を、最後の最後に失注したことがあります。私はその経緯を、経営陣や他のセールスメンバーの前で自ら振り返りました。正直、話しづらくはありましたが、「全力でやり切った結果なら、恥じる必要はない。むしろ振り返らずに終えるほうが問題だ」という考えでした。

 案件数が限られるエンタープライズセールスでは、こうした経験を個人の中だけにとどめるのはもったいない。そこで、以前からあった夕会を、各案件をチーム全員で追体験する場へと再設計しました。

 現在は、受注・失注した案件を振り返る「受失注振り返り」、進行中の案件について話し合う「案件検討会」、エンタープライズ特有の文化や作法を扱う「案件推進ディスカッション」の3つを行っています。

 どの会も、上司が部下に正解を教える場ではありません。私自身も、夕会で「答えを持っている人」として参加しているわけではありません。企業ごとに事情が異なるエンタープライズセールスでは、絶対的な正解などないからです。だからこそ、役職にかかわらず、全員が一参加者として意見を出し、問いを重ねながら一緒に答えを探します。大切にしているのは、私の考えを正解として渡すことではなく、案件を担当した本人が、他のメンバーの視点も借りながら、自分なりの答えにたどり着くことです。

 たとえば案件検討会で確認するのは、「どの選定軸で、どう選ばれるのか」という仮説です。お客様の要望をすべて同じ重さで拾うと、提案が八方美人的になり、「なぜDiggleを選ぶのか」がぼやけてしまいます。そこで、お客様が重視する要件と競合の特徴を踏まえ、「Diggle」の強みが生きる選定軸を見定め、その軸に沿って提案のストーリーを組み立てられているかを全員で考えます。

 夕会で得た気づきは、「次回に何を生かせるか」まで振り返り資料に残し、Notionに蓄積します。ただし、その企業固有の事情による可能性があるため、1件の成功や失敗だけですぐに型へ組み込むことはせず、複数の事例で有効性を確認できるまで待ちます。

 新たに加わったメンバーに向けては、2〜3週間かけて1つの仮想案件を追う、エンタープライズセールスに特化したロールプレイも実施しています。一般的なロールプレイは、商談の1場面を想定して行うことが多いですが、リードタイムの長いエンタープライズ案件では、複数回の接点を通じた関係構築と合意形成が重要です。そこで、複数の上司が顧客企業の課長や部長に扮し、メンバーにはメールでのやり取りや日程調整から、複数回の商談、ヒアリング、提案資料の作成まで、一連のプロセスを疑似体験してもらうのです。

 最近では、以前は機能中心で提案していたメンバーが、お客様にとっての価値を意識してヒアリングするなど、少しずつ変化も見られるようになりました。

「正解」は見つけるのではなく「作り続ける」

 こうした取り組みを重ねる中、2024年第3四半期から2026年第3四半期までの2年間で、エンタープライズ領域のMRRは6倍、単価は2倍に伸びました。

 ただ、ここまで紹介したのは、あくまで私たちがたどり着いた答えです。企業によって製品も顧客も異なるので、同じ方法をそのまま取り入れれば、同じ成果が出るとは限りません。大切なのは、1つひとつの案件を振り返り、自社なりの勝ち筋を育てていくプロセスだと考えています。

 そのヒントは、意外なところにもあります。私自身、ビジョンセリングを知ってはいたものの、「Diggle」には合わないと決めつけ、実践していませんでした。営業の答えを、営業の世界だけから探す必要もありません。私はプロバスケットボールチームのドキュメンタリーを見ることがあります。勝っているとき、負けているとき、監督や選手は何を話し、どう振る舞うのか。そこからチーム作りのヒントを得ることもあります。

 大切なのは、既存の「正解」に自分たちを当てはめることではなく、あらゆるところから学びながら、自分たちに合う答えを作り続けることだと思っています。

 他社の正解をそのまま真似るのではなく、先入観を捨てて、自分たちの案件から学び続ける。その積み重ねが、自社なりの勝ち筋を作るのだと思います。この記事が、そのきっかけになれば幸いです。

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この記事の著者

ディグル株式会社 エンタープライズ事業部 部長 松本 翔吾(マツモト ショウゴ)

 2017年、大手銀行に入行。都内の支店でスタートアップから中堅企業まで幅広い業種の法人営業を担当した後、本店営業部で売上高1兆円以上の通信系大企業に対する事業提案や財務提案に従事。2022年1月、ディグル株式会社に参画。年間200社を超える中堅・大企業へ予実管理を軸とした経営基盤構築を提案。エンタープライズ領域の...

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