「AIの奴隷になるな」求められる人間の進化
藤原:AIがこれだけ生活者の情報収集・購買に影響を与えるほどの進化をしている一方で、ビジネスパーソンのAI活用の現状を見ると、多くの人がAIを「高級な検索エンジン」としてしか使えていません。
本来AIは、こちらが出した指示通りに作業を行う「部下」であるべきです。しかし今は、AIに「これがいいですよ」と提示され、人間が「わかりました」とその通りに行動する「AIの奴隷」になってしまっています。
開発領域では「Claude Code」などを使って、今まで10時間かかっていた作業を1時間で終わらせるといった、本来あるべきAIの活用が進んでいます。
CommerceZineが扱う小売・ECの領域でも「夕飯にこれが食べたいから、生鮮食品のECで必要な材料を調べてカートに入れ、決済の指示を待て」というところまで進むと、AIによる購買体験といえますよね。

南雲:人間側のAIに対する指示を出すスキルがまだそこまで進化していないということですね。
藤原:AIというテクノロジーが進化の途上にあるというよりも、AIの進化に人間の意識や使い方が追い付いていないイメージですね。
検索して提示されたものを買うだけではなく、コンテキストを読み取らせて購入までの全ての準備を整えさせる。このパラダイムシフトがいつ起きるのかが、今後のリテール・コマース領域におけるマーケティングの大きなターニングポイントになるはずです。
AIでインプットを減らし、成果を最大化する思考
藤原:今、XなどのSNSを見ると「Claudeでこんなことができた」という話題は溢れていますが、「それをビジネスに活かして、いくら儲かったのか」を語る人は誰もいません。
本来、ビジネスでAIを使う目的は生産性を上げることです。そのためにはAIなどを駆使してインプットにかける時間を短縮し、アウトプットを最大化して成果を上げる。この本質を実現するための議論や実践ができていない人が多いと感じますが、南雲さんはどう思いますか。
南雲:個人に限らず、企業側も全く同じですね。ブランドの想起や衝動を高めるためのマーケティング施策はこれまで散々やってきましたが、「ビジネスとしてAIをどう活用することが、他との違いを生めるか、選ばれる仕組みをつくるか」という構想がまだほとんどの企業は持っていません。
お客様の購買行動や選択の何割かをAIが占める未来が確実に来る中で、ブランド側はどう動くべきか。正直なところ、どんな企業もまだはっきりとは見えていないのが現状なのではないでしょうか。
藤原:2026年1月にアメリカで開催された小売業界の巨大カンファレンス「NRF」で話を聞いても、アメリカでさえまだAIの本格的なビジネス実装には至っていませんでした。
未来に向けた決定打はまだ誰も持っていない今こそ、いかに早くこの構造の変化に気づき、AIのエコシステムの中に自社をどう組み込めるかを考え抜くことが、数年後の勝敗を大きく分けるはずです。
後編の予告
AIという「新たな選択の代理人」が登場する中、フィジカルな強烈な体験価値とデジタル戦略をどう融合させるかが、これからのブランドにとって不可欠な要素となります。
では、日々圧倒的な商品数と店舗数で顧客と接するコンビニエンスストアは、この複雑な時代にどう立ち向かうのでしょうか?
続く後編では、南雲氏が描く次世代のファミリーマートの革新的な店舗構想と、藤原氏が鋭く指摘するコンビニエンスの構造的課題、そしてマーケター必見の「本質を見抜くキャリア論」へと深く切り込みます。
