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セールスストラテジーの正体

セールスフォース・ジャパン激動の17年を支えた「黒衣」川上和代さんに聞く、セールスストラテジーの正体

 売上は偶然ではなく、戦略によってつくられる。戦略の設計を担い「どう勝つか」を考える機能がセールスストラテジーだ。欧米企業では一般的な役割だが、日本企業では十分に根付いていない。本連載は、これまで日本のビジネスメディアで語られてこなかったセールスストラテジーの内側に迫る。第1回のゲストは、従業員数30名から3,000名規模へと拡大したセールスフォース・ジャパンで17年間ストラテジーの設計を担い続け、現在はJapan CloudでグローバルIT企業の日本法人立ち上げを支援する川上和代氏。聞き手は『レベニューオペレーション(RevOps)の教科書』著者で、Xactly 日本GTM統括責任者の川上エリカが務める。

セールスストラテジーとの出会いは「消去法」

川上エリカ(以下、エリカ):セールスストラテジーという仕事に出会ったきっかけを教えてください。

Xactly 日本GTM統括責任者 川上エリカ
Xactly 日本GTM統括責任者 川上エリカ

川上和代(以下、和代):英国の大学でコンピューターサイエンスを学び、日系のCRMパッケージ企業でSEを経験した後、セールスフォース・ジャパン(当時はセールスフォース・ドットコム)にローカライズエンジニアとして入社しました。

Japan Cloud Director of Consulting 川上和代氏
Japan Cloud Director of Consulting 川上和代氏

和代:ある日、本社から来日したCOOに「君の部門は本社に移管する。営業かSEかフィールドオペレーション(セールスストラテジーの前身)のいずれかを選んでくれ」と言われまして。消去法で「フィールドオペレーション」と答えたのが始まりです。当時のセールスフォース・ジャパンは従業員数が約30名、営業担当者は20名にも満たない組織でした。

エリカ:始まりは消去法だったんですね。セールスストラテジーは、今や経営層への登竜門とも言われる仕事ですが、当時から仕事内容をご存知だったんですか?

和代:まったく知りませんでした(笑)。周りからも「英語が少し話せるCOOのアシスタント」くらいに思われていたと思います。

「Samurai 70」と郵便番号で塗り分けた日本市場

エリカ:セールスストラテジーとして最初のプロジェクトが、テリトリー(※1)整備だったとうかがいました。

※1 特定の期間において、個々の営業担当者または営業チームが売上責任を負う顧客グループ、または地域

和代:はい。当時のセールスフォース・ジャパンでは、リードをラウンドロビン(※2)で配り「シニアは大企業担当」「若手は中堅中小企業担当」くらいの緩い区分けしかしていませんでした。私の上司にあたるCOOは、米国でトップ営業に輝いた“狩り”のプロフェッショナル。最初に言われたのが「鳥を打ち落とすのに、闇雲に石を投げても当たらない。一羽を定めて狙えば必ず当たる」という言葉でした。

※2 新規のリードや商談を営業担当者に順番かつ均等に割り当てること

エリカ:定めて狙う一羽、つまりテリトリーをどのように設計したんですか?

和代:市場を2つに分けました。大企業は「Fortune Global 500(※3)」にランクインしていた日本企業を「Strategic70(通称 Samurai70)」と呼んで集中投資の対象に。中堅中小企業は郵便番号別のブロックに割り振り、各ブロックのリード件数、コンバージョン数、パイプライン金額、年間契約額、アクティブ企業数を過去12ヵ月分遡って「ホット」「ミドル」「ロー」の3階層に分類。各営業が一定数のホットブロックを持てるよう設計しました。これがセールスストラテジーとして任された最初のプロジェクトです。

※3 世界中の全産業の企業を対象とした、総収益に基づく企業ランキング。米国の経済誌『Fortune』が毎年発表している

エリカ:営業担当者の自由度が減ることに対して、社内の反発はなかったのでしょうか。

和代:もちろん抵抗はありました。ただ、各営業が一国一城の主としてテリトリーを回るうち、狙ったところで結果が出ることが証明されていくんです。実際、私が在籍した17年間でセールスフォース・ジャパンがネガティブグロースに沈むことは一度もありませんでした。

エリカ:「テリトリー設計=担当分け」のように聞こえますが、本質は「どの市場で、どう勝つか」を形にする営業戦略そのものなんですね。

次のページ
営業企画とセールスストラテジーを分ける決定的な一線

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この記事の著者

川上 エリカ(カワカミ エリカ)

株式会社マルケト(現アドビ株式会社)にてインサイドセールス部およびゼネラルビジネス営業部を統括。営業組織改革、プロセス設計、マーケティングオートメーションを軸としたデジタルシフトを推進し、スタートアップから大手企業までテクノロジーを活用した収益組織の構築を支援。株式会社みずほ銀行、株式会社リクルートおよび外資系IT...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2026/07/10 09:00 https://markezine.jp/article/detail/76988

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