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セールスストラテジーの正体

セールスフォース・ジャパン激動の17年を支えた「黒衣」川上和代さんに聞く、セールスストラテジーの正体

なぜセールスストラテジーは日本に根付かないのか?

エリカ:なぜ日本では、セールスストラテジー機能が組織に根付かないのでしょうか。

和代:日本には「花形である営業が裏方も務めてこそ一人前」という精神性の色が濃いため、役割分担を組み込みづらいのだと思います。経営戦略の設計を担う機能はあっても、その先の営業戦略は「営業部門で立ててくれ」と切り出されがちです。本来、売上を上げることは経営戦略の根幹にあるはずなのに。

和代:当時の上司であるCOOの前提は明快でした。営業リーダーは売ることに集中する。それ以外のことはセールスストラテジーが考える。考える人と売る人の役割分担を徹底するという考え方です。

エリカ:「営業リーダーが立てた戦略のほうが、精度が高い」という考え方もあるように思います。

和代:営業リーダーが戦略立案に関わり、その上で実行することはもちろん大切です。ただ、売る責任を負っている人は、どうしても目の前の数字や商談を優先します。セールスストラテジーは市場全体や組織全体を見て、長期的にどう勝つかを考える役割です。同じ人が戦略設計と営業責任の両方を負うと、短期最適に引っ張られてしまうかもしれません。

エリカ:そう考えると、セールスストラテジーは営業を支援する機能というより、営業が売ることに集中できる環境を設計する機能と言ったほうが近いのかもしれませんね。

和代:そうですね。機能していない組織では、場当たり的な活動と投資が増え、結果としてプランが実行されにくくなります。まずは数字を分析し、課題を1つずつ潰していく。この積み重ねで営業担当者からの信頼を得るしかありません。そのうち「今週のフォーキャストではどんなリスクが見えている?」と、営業担当者から電話がかかってくるようになります。

エリカ:AIが分析やレポーティングを担うようになればなるほど、人間の役割は「何を考えるべきかを設計すること」へ移っていくのかもしれません。セールスストラテジーは、まさにその役割だと感じました。

改善策を考え続けられる人は向いている

エリカ:始まりは「消去法だった」とおっしゃっていました。それでも約20年間セールスストラテジーの仕事を続けられた理由は何だったのでしょうか。

和代:戦略設計はゲームに近いです。限られたリソースで市場の競争に勝つ方法を考え、自分の考えた戦略が営業担当者の行動になり、その結果が数字として返ってきます。企業を成長に導けるおもしろい仕事です。気付いたら夢中になっていましたね。市場も組織も常に変わるため、同じ課題が1つもないんです。だから飽きません。

エリカ:最後に、これからセールスストラテジーを目指す方、この機能を自社でも持ちたいと考えるリーダーに向けて、メッセージをお願いします。

和代:創造性、チャレンジ精神、慎重さは要するものの、最初から専門知識を持つ必要はありません。私もそうでしたから。「どうすればもっと良くなるんだろう」と考え続けられる人なら、この仕事はきっと楽しいと思います。

【取材後記】

 従業員数30名規模のセールスフォース・ジャパンで始まったセールスストラテジー。川上和代氏が同社を離れた頃、セールスストラテジー部門は60名規模の組織へと成長していた。営業の成果は「どう勝つか」を設計する仕組みによって大きく左右される。

 営業に多くを背負わせていないだろうか。市場で勝つための戦略設計を担う人は、自社にいるだろうか。AIが営業活動や戦略設計を支援する時代になっても「どう勝つか」を意思決定する役割はなくならない。その役割こそがセールスストラテジーである。

 次回は“黒衣”を右腕としてきた経営者の視点から、セールスストラテジーを掘り下げる。

川上エリカ

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この記事の著者

川上 エリカ(カワカミ エリカ)

株式会社マルケト(現アドビ株式会社)にてインサイドセールス部およびゼネラルビジネス営業部を統括。営業組織改革、プロセス設計、マーケティングオートメーションを軸としたデジタルシフトを推進し、スタートアップから大手企業までテクノロジーを活用した収益組織の構築を支援。株式会社みずほ銀行、株式会社リクルートおよび外資系IT...

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2026/07/10 09:00 https://markezine.jp/article/detail/76988

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