バッティングを解消する見極めは「担当者の名前が出るか」
──組織が急成長する中、社内での連携面で壁はありましたか。
草別:社内でのバッティング調整には苦労しました。数年間接点が途絶えていたお客様へISが架電し、DX営業部のFSへトスアップしようとしたところ、アカウント営業から「自分の顧客であるため任せてほしい」とストップがかかることがよくありました。それぞれが売上目標を持つプロフィット組織であるからこそ、案件の取り合いのような摩擦が起こってしまったのです。
加えて、当時はDX営業部という部署の存在や役割自体がイトーキ社内でまだ認知されておらず、アカウント営業から「顧客から『草別という人から電話がかかってきた』と言われたが、一体何者なんだ」と電話がかかってくることも珍しくありませんでした。
森田:そこで、明確な運用ルールを作りました。架電した際に「イトーキの〇〇です」と名乗り、顧客から担当のアカウント営業の名前が出なかった場合、直近で十分なタッチができていない休眠顧客とみなしてDX営業部が主体となって進めるルールを設定し、アカウント営業にも周知しました。
草別:社内理解を得るためのプロジェクトを立ち上げたメンバーが社内向けの紹介ページを作成し、全国の支店を回ってDX営業部の活動内容や連携のメリットを丁寧に説明していきました。地道な社内広報と実績の積み重ねにより、現在では社内のバッティング摩擦はほぼ解消され、「この休眠顧客リストへDX営業部からアプローチしてほしい」「商談のきっかけを作ってほしい」と相談される機会も増えています。
森田:地方のお客様や地場の知識に強い営業担当を希望される場合などは、DX営業部で創出した案件を各拠点のアカウント営業へ引き継ぐケースもあります。その売上実績は両部署で折半する評価の仕組みを設けたことで、アカウント営業にとっても「確度の高い案件をトスアップしてもらえる」というメリットが生まれ、全社が協調して成果を最大化できる文化が醸成されていきました。

売上15倍、定着率93%を実現。アプローチ対象をさらに拡大
──DX営業部の取り組みによって、具体的にどのような成果が生まれたのでしょうか。
田中:2021年の発足から2025年まで、DX営業部の売上は15倍に拡大しました。全社売上は4年間で約1.2倍ですから、それを大きく上回る成果です。さらに評価されたのが「新卒が辞めない組織」になったことです。業務改善プロジェクトによってモチベーションを高める組織文化を醸成したことに加え、新卒営業全員を東京に集めて育成したことで心理的安全性を築けたことや、自由に席や環境を選べるABW(Activity Based Working)の働き方が組み合わさった結果、新卒営業の定着率93%、休職者ゼロという大きな成果を達成しました。
草別:顧客アプローチの面でも、定性的な成果が生まれています。オフィス家具や改修は、納品が完了すれば再び疎遠になってしまいがちです。そこで新規開拓や休眠顧客へのアプローチで培ったノウハウを活かし、再休眠化した顧客をISのアプローチ対象へ戻し、定期的なフォローやチューンアップの提案を行う再ナーチャリングに取り組み始めています。約8割にのぼる再休眠顧客に対してタイミング良くアプローチし、継続的な接点と次の商談機会を作り出せるようになったことは、組織の大きな強みになっています。
──最後に、DX営業部として今後どのような挑戦をしていきたいか、展望をお聞かせください。
草別:立上げから5年が経ちましたが、まだ完成とは思っていません。当時自分たちが様々な提案を会社に受け入れてもらったように、若いメンバーが新しいアイデアを出しやすく、それを認めて成果につなげる組織文化を継続していきたいです。
田中:現在、DX営業部で成功したこのモデルを全社に展開しようと取り組んでいます。既存の営業組織に新しい手法を浸透させていくのは一筋縄ではいかない面もありますが、ここを乗り越えることが、持続的な売上向上に直結します。身近に成功事例がなく、手探りで改革を進めている方も多いかと思いますが、ぜひ自信を持って、一緒に営業変革を進めていきましょう。
森田:これまでの挑戦を踏まえて、今まさに私たちが取り組んでいるのがAI活用です。最新のテクノロジーを活用して営業生産性を高め、1人あたりの売上を持続的に拡大させようと挑戦しています。目まぐるしく変化する時代だからこそ、失敗を恐れず変化を受け入れ、進化を重ねていきたいと考えています。
