第1回では、新型コロナウイルス感染症の流行以降、顧客の行動変容やそれに伴う営業の在り方について詳述し、顧客接点改革の3つのポイントについて触れてきた。本稿では、ニューノーマル時代における営業マネジメントを実現するために、顧客中心型の組織とは何かについて検討しながら、CRO‐Chief Revenue Officerという考え方を導入した企業の挑戦を紹介していく。
顧客接点改革とは?「売る」を省力化し「つながる」へとシフトする
ここ数年、注目されている「サブスクリプション」「カスタマーサクセス」という言葉をご存じであろうか。
サブスクリプションは、商品やサービスごとに購入金額を支払うのではなく一定期間の利用権として料金を支払う方式のビジネスモデルのことである。ソフトウェアの業界ではクラウド型のサービスが始まったころからしばしば耳にするようになった。
カスタマーサクセスとは、サブスクリプションビジネスと共に登場した考え方である。既述のようにサブスクリプションビジネスは、一定期間の利用権に対して収益を得るビジネスモデルあるがゆえに、常に解約というリスクを伴っている。つまり、顧客が利用サービスに満足をしてくれなければ、期待収益を得られないため、顧客には提供サービスの利用によって成功体験を得てもらう必要がある。この「成功体験」の提供を行うための組織や仕組みなどをカスタマーサクセス(カスタマーサクセスマネジメント)という。
近年、IoT(Internet of Things-モノのインターネット)の普及により、多くの製造業が自社製品のインターネット接続を可能とし、サブスクリプションビジネスへとシフトを始めている。なかでも製品をIoT化し、顧客接点の改革にまで着手し始めている代表的な業界のひとつは、自動車業界である。自動車業界は、新車販売台数が伸び悩み始める中で、新車販売だけでなく、車検・メンテナンスなどのいわゆるアフターマーケットの拡大を狙っている。
新車購入時に1年点検、1回目の車検が割引きされていたり、交換用のエンジンオイルが購入特典としてついていたりという経験はないだろうか。これは、新車販売台数が逓減する中で、利益を確保するため、メンテナンスサービスを獲得することで、利益を確保していこうとしているものであり、自動車業界では重要な戦略のひとつである(図1)。 また、一部の自動車メーカーでは、サブスクリプションビジネスを開始し、車離れに歯止めをかけようとしている。

出典:三井住友銀行国内自動車ディーラーを取り巻く業界動向
自動車業界では、今後、CASE(Connected(コネクティッド)、Autonomous/Automated(自動化)、Shared(シェアリング)、Electric(電動化))と呼ばれる新しい技術領域を利用して、自動車の利用状態をリアルタイムで把握し、顧客と直接的に「つながり」を持つことで、自動車のメンテナンスサービスの提供だけではなく、保険や飲食、旅行などさまざまなサービスの提供、収益機会の獲得へと変革を遂げていこうとしている。
たとえば、米国EV(電気自動車)メーカーはすでに車両のオンライン販売を開始し、自動車業界では、これまでになかったような顧客接点のデザインを始めている。つまり、店舗は車両を販売する場所ではなく、顧客をもてなすショールームとなっており、そこでの体験をもとに、顧客はオンラインで車両を注文するのである。
このようなスタイルが浸透すれば、既存の顧客接点であったディーラーの位置づけ・役割が大きく変化し、複数のビジネスモデルが展開されたり、プレイヤーの入れ替えが起こり、サービスの提供構造が大きく変革されたりすることも容易に想像できる。図2で示すようなエージェンシー型やセレクトショップ型、またはプラットフォーム型のような顧客接点が登場していくかもしれない。

自動車業界を例に顧客接点の改革の一例をご紹介してきたが、これは自動車業界固有のものではない。たとえば、製造機械メーカーや医療機器メーカー、プリンターメーカー等、あらゆる製品メーカー(BtoC、BtoBに限らず)でこのような検討が始まっており、早い企業では、顧客との直接的な対話を実現するため、顧客接点の大改革が始まっている。つまり、先進的な企業は、「売る」ということを省力化し、「つながる」ということに水面下では大きく舵を切り始め、コロナ禍においてその流れは加速し始めたのである。
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EY ストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社 ディレクター 千葉友範(チバトモノリ)
大学院在学中より産学官連携によるソフトウェアベンチャー立ち上げに参画後、会計系コンサルティングファーム、IoTベンチャー企業の役員のほか、AIやブロックチェーンベンチャー企業の顧問などを務め、2019年3月より現職。20年近いコンサルティング経験を通じて、エマージングテクノロジー(先進技術)の活用、UXやUIデザイ...
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