会場を沸かせたAIエージェント マーケも営業もこなす世界がすぐそこに
ShopifyがAIによる購買体験の変化を語った一方で、コンタクトセンター(以下、CC)のアップデートを共有したのがChannel Corporationだ。人手不足の影響を大きく受ける中、特にCCではAIエージェント活用の可能性が問われている。そうした背景もあってか、同社が発表したCC向けAIエージェント機能は会場で注目を集めた。
ECサイトなどに設置したチャット窓口から顧客対応ができる「チャネルトーク」を展開している同社。自然言語で顧客と会話するAIエージェント「ALF」の開発にも力を入れてきた。ALFの適用範囲は、チャットだけでなく電話にも拡大しているという。
「日本の問い合わせの約半分は、いまだに電話で発生している」
そう語るのはCEOの崔在鎔氏だ。この状況に対応するために、同社では電話のモニタリング・録音・AI要約をワンストップで提供する「Meet」を2年前にリリースした。そして2025年、オペレーターの代わりにAIエージェントが対応する電話向けの「ボイスALF(β版)」を公開している。
たとえば、顧客が購入した商品を返品したい場合、一般的なAI音声対応では「マイページからキャンセルボタンを押してください」と案内するまでにとどまる。顧客は1度電話を切った後に、案内に従って自らキャンセル操作をしなければならない。
それに対してボイスALFは、着信番号から顧客を自動特定し「購入された商品のうち、何をキャンセルしたいですか?」などと音声で質問する。顧客がキャンセルしたい商品を伝えると、社内システムの注文履歴を参照した上でキャンセル手続きまで自律的に完結させることが可能だ。すでにボイスALFの問い合わせ解決率は80%を超えているという。
しかし、「コミュニケーション課題の解決はスタート地点。本当のカスタマードリブンにはデータ分析が不可欠」と崔氏。そこで、新たなAIエージェント「AI CoS(コス)」を紹介した。
自然言語で、たとえば「直近5年間の問い合わせ数を教えて」と入力すると、AI CoSがリアルタイムでSQLを生成してグラフを描く。チャネルトークのアプリストアを通じてアプリを追加すれば、チャネルトーク内に蓄積されたVOCに加えて、GoogleのBigQuery、Microsoft Excel、CSVといった自社データも連携できる。「5年間の売上を教えて」と入力すると、VOCデータだけでなく、売上データとのクロス分析も可能だ。
このように、CCで収集するVOCだけでなくさまざまなデータを分析できるAI CoSだが、本来の強みはそこではないという。会場で行われたリアルタイム電話調査のデモが印象的だった。
崔氏が「今回のカンファレンスの評価を知りたい」などと入力すると、AI CoSがアンケート内容を自ら設計する。さらに、当日の参加者リストを確認した上で電話番号を洗い出し、一斉発信から回答収集・結果の即時要約までを一気通貫で実行したのだ。会場中で携帯が鳴り響き、参加者が音声アンケートに答えると、AIが集計した調査結果がリアルタイムでスクリーンに映し出された。
「データの取得・分析だけでなく、マーケティングやセールスまで行う。これが、当社がAIで描くカスタマードリブンの未来です」(崔氏)
デモが行われた電話調査だけではなく、マーケティングもセールスも担うAI CoSの機能は、7月末のリリースが予定されている。現在、オープンベータ版として、無料プランを含む全プランで追加費用なく利用が可能だ。
AI CoSのPoCに参加した企業では、6ヵ所以上に散在したデータを一元化することで、分析・レポート作成が従来の6日から5分に短縮された事例もある。分析結果に基づいてメッセージ配信を行ったところ、クリック率は通常の4倍、さらに対象商品の日次売上は15倍に伸びたという。
なお、AI CoSは同社のAIビジネスOS「チャネルワークス」の一部として提供される。顧客対応から社内のやり取り、データ分析までを1つの画面でまとめて動かせる“業務の土台”の役割を担う。
データの取得から分析、顧客へのアクションまでをAIに委ねることで、人は戦略的な意思決定に集中できる。そんな未来がすぐそこまで来ている。

