2026年9月29日にグランドハイアット東京で開催された「TikTok Marketing Summit 2026」。今年のテーマ「心が動く、指も動く」が示すとおり、TikTokは単なる認知獲得メディアから、ユーザーの行動や実店舗での購買までを牽引するプラットフォームへと進化している。本記事では、2027年の最新事業戦略の他、ファミリーマートやネスレ日本の事例から、小売およびメーカーが明日から実践できるTikTok活用のヒントを紐解く。
MAU4,950万。TikTokがもたらすビジネスの変化
TikTokは現在、日本国内における月間アクティブユーザー数(MAU)を4,950万人まで伸ばし、日本のスマートフォンユーザーの約半数が利用する巨大プラットフォームへと成長を遂げている。かつては若年層中心のエンターテインメントアプリという認識が強かったが、直近のデータではそのユーザー層に大きな変化が見られる。とりわけ、アプリ内で商品の発見から決済までを完結できるeコマース機能「TikTok Shop」においては、ローンチから約1年3ヵ月で利用者数が約30倍に増加し、そのうちの60パーセントが35歳以上のユーザーで構成されているという。これは、TikTokが幅広い世代の消費行動を喚起するインフラとして定着しつつあることを如実に示している。
TikTok for Business Japan ゼネラルマネージャーの宮内良輔氏は、プラットフォーム上で生まれるビジネスの熱量について「TikTokにおいて、心が動いてから行動が起こるまでのスピード感こそが特徴。その一つひとつの行動が社会現象やビジネスインパクトを作り出している」と述べている。
こうした成長を背景に、TikTokは2027年に向けて主に3つの領域に注力する戦略を掲げた。1つ目は、日本のブランドの海外展開(越境EC)を後押しする「ニューマーケット」。2つ目は、動画の企画から生成、編集までを一気通貫で支援するAIソリューション「Symphony Creative Studio」などの導入による「ニューイノベーション」。そして3つ目は、ミニドラマやミニゲームといった新たなコンテンツ体験による接点創出を図る「ニュービジネスモデル」だ。プラットフォームの規模拡大とAI技術の進化が両輪となり、企業のマーケティング活動をより強固に支える土台が構築されつつある。
AIとEC機能が牽引する実店舗への波及効果
こうしたプラットフォームの進化を、実際の購買行動へといかに結びつけるかが小売企業にとっての課題となる。TikTokでは、アテンション(認知)を購買などのアクションへつなげる一連のプロセスをカバーし、「フルファネル」で支援する体制を強化している。
ローワーファネル(購買に近い層)へのアプローチとして特に注目されるのが、先述の「TikTok Shop」をはじめとするコマース領域の機能拡張だ。TikTok Shop内でのライブ配信を活用した販売手法では、ライブ活用度が高い事業者ほどGMV(流通取引総額)が大きく成長しており、最も頻繁に活用する層では1.4倍の成長を記録している。さらに2027年からは、広告のROIだけでなく事業者の最終的な利益に向けてAIが配信を最適化する新機能の提供も予定されており、獲得効率のさらなる向上が見込まれる。
特筆すべきは、TikTok上での体験がデジタル空間に留まらず、オフラインの実店舗での購買にも強い影響を与えている点だ。電通とのデータクリーンルームを通じた共同研究により、TikTok Shopに訪問したユーザーは、ドラッグストアなどの実店舗での購買率が2.8倍から5.3倍に向上することが明らかになった。この結果について、TikTok for Business Japan 上級執行役員の長谷川圭介氏は「TikTok Shopへの訪問が実店舗での購買を後押ししていると言える。出店自体を、TikTok Shop内だけでなく実店舗や他のマーケットプレイスなども含めて包括的に評価していく必要がある」と分析している。
デジタル上の接点が、現実世界での売上を直接的に牽引する。次ページでは、こうしたトレンドの波及力とスピード感を自社のマーケティングにどう組み込むべきか、日本全国に実店舗を構えるファミリーマートの実践例からその最適解を探っていく。
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安原 直登(編集部)(ヤスハラ ナオト)
大学卒業後、編集プロダクションに入社。サブカルチャー、趣味系を中心に、デザイン、トレーニング、ビジネスなどの広いジャンルで、実用書の企画と編集を経験。2019年、翔泳社に入社し、MarkeZine編集部に所属。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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