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押さえておきたい!ECトレンド図鑑

4年で売上3倍!カインズEC事業部が実践した「泥臭い商品登録」と「在庫表示改革」の裏側

 ホームセンター大手のカインズは、この4年間でEC売上を数十億伸ばし、改革前と比較して約3倍の規模へと急成長させた。停滞していた事業をいかにして立て直したのか。その裏側には、徹底した商品登録によるSEO強化、実店舗を活かした在庫表示の改革、そして月間6,000万円の売上を創出する「同梱チラシ」などの地道な取り組みがあった。EC事業部長の長谷川氏と、EC販売部部長の田村氏に、売上拡大のロジックと今後の展望について伺った。

売上停滞からの脱却、EC成長の鍵は「SEO」と「商品登録」

━━まずは、お二人の役割とEC事業強化に踏み切った背景を教えてください。

長谷川:EC事業部長として、事業全体の推進を担当しています。私がこの部門に着任したのは2022年の10月で、もうすぐ4年になりますね。着任当時のEC売上は4年連続で横ばい、むしろ少しシュリンク気味でした。

カインズ EC事業部長 長谷川 雅宏氏
株式会社カインズ EC事業部長 長谷川 雅宏氏

田村:私は長谷川の下で、EC販売部の部長を務めています。商品登録から最終的な出荷、カスタマー対応までのEC運営全般が管轄です。カインズには20年以上在籍していますが、EC部門に来てからは2年半ほどになります。

長谷川:着任したからには事業を伸ばさなければなりませんし、着任当時の規模であれば、正直なところ何をやっても伸びる余地はありました。

 ただ、リソースは有限なので、目先の売上ではなく長期的に売上を最大化できる方法を考えました。そこで一番時間がかかる「SEO」にメスを入れたのです。

━━SEO強化のために、具体的にどのような取り組みから始めたのでしょうか。

長谷川:非常にシンプルで「ECサイト上の商品を増やす」ことです。実店舗には小さいお店で8万SKU、大型店だと12万SKUほどの商品があります。しかし当時のECサイトでは、カインズの実店舗で在庫を持って販売している商品のうち、掲載されていたのは2万〜3万SKUにとどまっていました。これでは流入が増えるはずもありません。

 そのため、最初に「販売終了商品」の再掲載から始めました。これまで販売終了商品は非公開にしていましたが、適切に代替品へ誘導できれば集客として機能するのです。実際に販売終了商品の登録を進めただけで、いきなり流入と売上が上がりました。

田村:また、実店舗とECのSKU数の乖離が大きな原因として「商品画像がない」こともわかっていたので、EC事業部で商品撮影を進めました。その後、商品調達の段階で画像を用意できるよう、商品の買い付けなどを行うバイヤーや商品管理部門のチームを巻き込み、組織的にECへの商品登録が行える体制を構築しました。

機会損失を防ぐ「在庫表示」の改革

━━SEOによる流入増加とともに、在庫面でも大きな改革があったと伺いました。

長谷川:ええ、商品登録の増加で流入が増えたことで「在庫」の問題が浮き彫りになりました。あるとき、アクセスは悪くないのにコンバージョン率が下がっていることに気づきました。

 よく見られている商品5,000個のデータを確認すると、そのほとんどが「売っていない(在庫がない)」状態だったのです。たとえば夏用のシーズン品などは、時期が終わると販売終了となり、そのタイミングでECの商品掲載は終わっていました。

 そこで冬のクリアランスセールの際、各店舗の在庫を特定の店舗に集約しECで販売継続してみたのです。すると、そこだけで1,000万以上の売上が埋まれました。もったいない機会損失をしていたことに気づくのに、1年かかりましたね。

━━そこからどのように在庫表示を改善していったのでしょうか。

長谷川:2024年の10月には、自社の現物在庫だけでなく、メーカーから取り寄せ可能な商品も含め、出荷可能な数量を表示するように切り替えました。すると、切り替えたその瞬間から月の売上が4,000万円も増加したのです。年間で5億円規模のインパクトです。

 さらに、我々はすべての注文の7〜8割を実店舗の商品からピッキングして出荷しています。当初は東西の2店舗(千葉ニュータウン店、名古屋みなと店)の現物在庫だけをベースに販売していました。しかし、出荷拠点は28店舗あるのです。

田村:そこで、対象となる各店舗の現物在庫を統合して表示する仕組みへと変更しました。今後はさらに拠点を増やしていく予定もあります。

長谷川:この在庫統合を行った瞬間から、前年比で20%も売上が伸びました。在庫数が増えたことで一人あたりが買える数が増え、客数が増加したのは想定通りです。しかし驚いたのは、1SKUに対し数百個といった大量注文をする法人などのお客様が増えたことです。豊富な在庫を表示し、常に買える状態にしておくことの重要性を痛感しました。

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この記事の著者

道上 飛翔(編集部)(ミチカミ ツバサ)

1991年生まれ。法政大学社会学部を2014年に卒業後、インターネット専業広告代理店へ入社し営業業務を行う。アドテクノロジーへの知的好奇心から読んでいたMarkeZineをきっかけに、2015年4月に翔泳社へ入社。7月よりMarkeZine編集部にジョインし、下っ端編集者として日々修業した結果、2020年4月より副...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2026/09/03 08:30 https://markezine.jp/article/detail/76982

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