大企業ならではの挑戦を称えるアワード
イベントの前半戦として開催された「カスタマーサクセス・アワード」は、CSに取り組む企業の裾野を広げる目的で企画された。

これまでCSの実践ノウハウや成功事例は、新興のスタートアップ企業に偏りがちであった。2020年代に入り、歴史ある大企業でもCS組織の立ち上げが相次ぐ一方で「大企業ならではのノウハウや仲間が見つからない」という声も聞こえる。同アワードは、そうした大企業の挑戦者が成果を共有し、互いに高め合う場として設立されたものだ。
審査にあたっては、大企業特有の壁を考慮した3つの基準が設けられた。1つ目は、長年の商習慣や「従来の営業と何が違うのか」という社内の疑問を乗り越える突破力。2つ目は、新しい試みを社内に定着させ、全社的な数値メリットを示した全社的インパクト。そして3つ目は、多くのステークホルダーや厳しいセキュリティ要件に対応する再現性とガバナンスである。
一次審査を通過したのは、NTTドコモビジネス、日本電気(以下、NEC)、ベネッセコーポレーション(小中学校事業本部)の3社。さらに、3つの審査基準とは別の角度で優れた取り組みが評価され、パーソルキャリアに審査員特別賞が贈られた。
2026年の大賞である「ザ・ブルーフラッグ・オブ・ザ・イヤー2026賞」に輝いたのは、NECだ。日本のCSにおける「青い旗印(指標)」として、大企業の事業構造改革を牽引する取り組みが高く評価されての受賞となった。
3つの壁と売上低迷を乗り越えたNEC
大賞を受賞したNECの服部佳正氏と、日本カスタマーサクセス協会 代表理事の山田ひさのり氏が登壇し、NECがいかにして巨大組織の中にCSを定着させたかが語られた。
メーカーでありSIerでもあるNECは、長年にわたりシステムを構築して納品する「売り切り型」のビジネスモデルで成長を遂げてきた。しかし2010年代以降、市場の成熟とともに従来のモデルは頭打ちとなり、月額や年額で継続的に利用してもらうSaaSや、ストック型ビジネスへの転換が急務となった。
この変革の過程で、同社は「3つの壁」に直面したという。1つ目は、過去の成功体験が根強い「文化の壁」。2つ目は、CSが単なる問い合わせ対応と混同される「認知の壁」。そして3つ目は、多角的な事業部ごとに取り組みが孤立してしまう「縦割りの壁」である。
服部氏自身、2018年頃に携わったRPA(業務自動化ソフト)事業で苦い経験をしていた。当時は新規受注が好調だったものの、裏ではそれ以上の顧客が離脱しており、売上が突如として頭打ちになったという。そこでCSの考え方を導入し、顧客の継続率を劇的に改善させた実体験が、同社におけるCS推進の原点となった。
個別最適化された活動を統合し、全社最適な司令塔として推進するため、NECは2023年に全社横断組織「カスタマーサクセスCoE」を正式に設立した。服部氏は現在、同組織を統括するディレクターの立場にある。
