機能要因の解約数が激減&受注率2倍のインパクトも
青山氏は、n=1の深い顧客理解を事業成果へと変えた2つの例を紹介した。1つ目は、freee販売のプロダクトフィードバックサイクルに関わる例だ。同社では解約した顧客へ全件インタビューを行い、真の「機能要因によるチャーン」を特定した。

具体的には、解約理由を深掘りする中で、対象顧客である無形案件型ビジネスの事業者の業務フローを解析。要望の中にあった「定期売上管理機能」が欠けていると、他社ツールとの併用になり、導入効果が激減することを見抜いたのだ。
業務プロセスの差分を明示し「この穴を塞げば解約が止まる」とPMに訴え開発の合意を取りつけた。その結果、翌年の同ターゲット層における機能要因の解約数は9件からわずか1件へと激減。さらに、受注前の機能不足による失注も大幅に低減したという。
2つ目は、freee販売のエクスパンション戦略における工夫である。freee会計を利用している顧客に話を聞くうち「見積書の送付後にExcelの案件管理表へ手入力で転記するのが面倒」という課題が顕在化する瞬間を特定。CSMが現場で聞いていた顧客の生の言葉「Excelの案件管理表とfreeeが1つにならないか」を、そのままシステム内の案内バナーやLPの訴求文に採用した。
顧客の心理に寄り添ったこのPLG施策により、バナークリック率は2倍に伸長。当該バナーをクリックした人専用のLPを用意し、そこから資料を請求した顧客に営業がアプローチした結果、freee販売の受注率が約2倍に跳ね上がるという圧倒的な事業成果をもたらした。
CSはバリューチェーンの末端ではない
青山氏の発表後、コメンテーターを務めたGainsightの絹村悠氏からは「CSは顧客対応の末端ではなく、プロダクト開発やマーケティング、営業までを含めた事業成長全体のコントローラー(司令塔)として機能すべきであるという強い姿勢を感じた」との講評が送られた。
新規顧客の獲得市場(SUM/有効市場)を拡張しつつ、既存顧客の解約による水漏れを防ぐ。この両立を果たす鍵は、単に声の大きい顧客の要望をそのまま聞くことではない。現場の泥臭い一次情報に立ち返り、業務プロセスと顧客の心理を深く捉えた「n=1の理解」を社内に提示することにある。
今回のイベントを通じて浮き彫りになったのは、大企業の基盤変革(NEC)とスタートアップのプロダクト主導型変革(freee)のいずれにおいても、CSが企業成長の推進エンジンになっているという事実だ。
顧客に最も近い場所で真の課題を把握しているCSMこそが、全社のプロダクト、マーケティング、営業の仕組みを動かし、事業のスケーラブルな成長を導いていく。CSは今、単なるサポート職種を越えて、企業の未来を左右するマーケターであり、事業責任者へとその存在感を高めている。
