コンテンツがコマースを牽引する次世代のブランド戦略
世界150以上の国と地域で事業を展開し、50以上のブランドを保有、年間380億ドル以上のシステム全体小売売上高を生み出すAuthentic Brands Group(以下、オーセンティック)。ReebokやChampion、Brooks Brothersなど、誰もが知るアイコニックなブランドを多数擁する同社のビジネスモデルは、一般的な小売・メーカー企業とは一線を画している。
彼らの基本戦略は、高い知名度と長期的な成長性を持つブランドの知的財産(IP)を取得・保有し、自らは製造や直接販売を行わず、ライセンスビジネスを通じて展開することだ。積極的なM&Aによる成長を継続しており、近年ではデニムブランド「Lee」などの買収も進めている。
特筆すべきは、単なるブランドの切り売りではなく、徹底した「ブランドの再構築と成長」にある。発表会に登壇したAPACプレジデントのWesley Chu氏は、自社の独自のモデルについて次のように語った。
「我々はブランドを取得したら、本物感を保ちながら再構成していきます。そして、コンテンツをしっかり整えていくことが、最終的にコマース、つまりビジネスにつながると考えています」
エンターテインメントを「成長の原動力」へと昇華
オーセンティックにおいて、エンターテインメントは単なるプロモーションの枠を超えた「成長の原動力」と位置付けられている。コンテンツを通じてブランドと消費者の感情的なつながりを深め、ブランドを「文化的な世界観」へと昇華させる戦略だ。
具体例として、シャキール・オニールやデビッド・ベッカムといった世界的なカルチャーアイコンとのパートナーシップが挙げられる。Netflixのドキュメンタリーシリーズ『ベッカム』は世界的な話題を呼び、結果として彼に関連するブランドの売上成長に直接的な影響を与えた。
さらに、彼らはライブイベントも重視している。年間50以上のイベントを開催し、6万5,000人以上を動員。そこから生まれるSNSでのインプレッションは3億2,400万件を超え、デジタル上での露出にもつながっている。
このアプローチは、現代のEC担当者にとって極めて重要なインサイトを含んでいる。自社のECサイトやSNSアカウントは、単なる「商品の陳列棚」になっていないだろうか。商品のスペックや価格を訴求するだけでなく、ブランドが持つ歴史や世界観をエンターテインメントとして昇華させ、消費者の感情を揺さぶる「ストーリーテリング」の構築が求められているのである。
