メンバーは懸命に動いているのに、組織がうまく回らない──。その原因は現場ではなく、もっと手前にあるのかもしれない。本連載では、GO株式会社 執行役員の中西氏が、起業やスタートアップ経営での失敗と成功、そしてタクシーアプリ「GO」の法人向けサービス「GO BUSINESS」での実践をもとに、事業・組織づくりのリアルを解説する。第1回のテーマは「組織をつくるときに最初に決めること」だ。
「量」が成果につながらない……こんな経験ありませんか?
月曜の朝、まず数字を確認し、未達であれば今週の巻き返し策を練る。メンバーの商談に同席し、夕方には経営層への報告を行う。気づけば1週間が終わり、目の前の業務をすべてこなしているにもかかわらず、なぜかチームは疲弊していく。
こんにちは。GO株式会社で執行役員をしている中西です。冒頭の情景は、かつての私の姿そのものです。起業やスタートアップの取締役などを経験するなかで、こうしたもどかしい日々を何度も味わってきました。
組織がうまく回らないとき、私はまず「もっと訪問を」「もっと提案を」と、メンバーの動き方を変えようとしていました。
しかし、一時的に数字が持ち直しても、組織はさらに疲弊していきます。原因は現場の努力不足ではなく、私自身が「決めるべきことを決めていなかった」「決めるべきことの解像度が低かった」ことにありました。解くべき課題がずれていたと気づくまで、ずいぶん時間がかかってしまったのです。
本連載では、そうした失敗と成功、そして現在管掌している「GO BUSINESS」での実践をもとに、事業・組織づくりのリアルをお伝えします。今回は、「組織をつくるときに最初に決めること」についてのお話です。
まず「最上段」を決める
組織をつくる際、私が最初に決めるのは「最上段」です。最上段とは、「自分たちは何のために集まり、何を実現する組織なのか」という問いへの答えを指します。目標も戦略も日々の業務も、すべてこれをもとに決まります。迷ったときに立ち返る原点と言ってもよいでしょう。
ここで、多くの会社がつまずきます。「ミッションを決めよう」「パーパスを決めよう」と、言葉選びから入ってしまうのです。言葉は完成しても、それが何のためにあるのか、他の理念とどんな上下関係にあるのかが整理されていないため、全員に迷いが生じます。
順序が逆です。まず最上段を決める。それをミッションと呼ぶか、パーパスや経営理念と呼ぶかは後から整理すればよく、「最上段を決める」という行為そのものが最も重要です。
環境が変わっても「何を成し遂げる集まりなのか」はそう簡単には変わらないため、最上段は極めて不変に近いものだと言えます。
ちなみに私は、最上段を「ミッション」と呼んでいます。日本語の「使命」、つまり「何に命を使うのか」という言葉の重みを大切にしたいからです。最上段は組織の「WHY(なぜやるのか)」でもあり、サイモン・シネックの著書『WHYから始めよ!』(日本経済新聞出版)にあるように、WHYに共感した組織は強固です。ただし、ミッションという呼称自体は私の好みにすぎません。
最上段はすべての出発点ですが、掲げただけでは現場は動きません。目標、戦略、日々の施策までが一貫してつながって初めて、現場で機能するものになります。そのつなげ方については、本連載で順次解説していきます。
では、よい最上段の条件とは何でしょうか。それは「①一つに絞られていること」と「②それが組織に浸透していること」の2つです。
まずは①についてです。多くの会社にはミッションやビジョンがあるため、「自社にはちゃんと最上段がある」と言いたくなるかもしれません。しかし残念ながら、経営陣が次の図のような「理想型」だと思っていても、現場からは各理念が「並列型」に見えているケースが多々あります。決まっていても、伝わっていなければ同じことです。
並列型と理想型
ミッション・経営理念・ビジョンなどが横並びになり、どれが最上段かわからない「並列型」に陥ると、次のような問題が発生します。
- 経営の戦略と現場の活動の間にギャップが生まれ、マネジメントの手間が増える
- 採用のメッセージに一貫性がなくなり、採用がうまくいかなくなる
- メンバーが、自分の仕事と会社の目標のつながりを理解しにくくなる
1つひとつの言葉は大切なのでしょう。しかし、「なぜその言葉があるのか」「最上段は何か」という問いに答えられない場合、並列型になっている可能性が高いと言えます。この領域にあいまいさは許されません。全員が迷ってしまいます。
最上段が決まり、その意味を全員が理解し、目標や戦略、日々の業務までがつながっている状態を、私は「組織に一本の背骨を通す」と表現しています。これは会社全体に限った話ではありません。事業や部門にもそれぞれの最上段があり、それが会社の最上段と結びついて初めて、全員が同じ方向を向くことができるのです。これはあくまでGOでの経験を中心にした話ですが、事業と組織という構造で捉えるとすべてに通ずる側面があると僕は思っています。
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中西 佑樹(ナカニシ ユウキ)
GO株式会社 執行役員。2008年、不動産会社にてキャリアをスタート。2015年にフィリピン・セブ島で語学学校を創業。2019年よりスタートアップ企業の取締役として、事業開発、コーポレート、人事など幅広い領域を統括。2024年10月、GO株式会社に参画。現在は執行役員として、法人向けサービス「GO BUSINESS」と新規事業(物流領域)の事業責任者を務める。同時に、採用・広報・コミュニケーションデザインを含む全社横断的な施策を幅広く管掌。個人のnoteでは「組織と人」をテーマに発信中。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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