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LTVに約30%差を生む「定期通販のジレンマ」を解く。カード払い促進の変革を決済サービス開発者に聞く

 定期通販事業者にとって、新規獲得のコンバージョン率(CVR)を上げるには「後払い」が不可欠だが、後払い顧客はカード払い顧客に比べてLTVが大きく後れを取る。また、昨今はクレジットカードの本人認証サービスEMV 3-Dセキュア(3Dセキュア2.0)の義務化により、追加認証が発生した際の離脱リスクも意識されるようになり、カード払い促進への課題はより複雑さを増してきた。この二律背反を解決する手法とは? 今回は、定期通販の決済に関する課題解決支援や決済サービス開発に長年従事してきたSCOREの森裕士氏に取材し、課題の構造から解決策に求められた設計思想、そして2026年6月にリリースされたばかりの新たなサービスの具体像まで聞いた。

定期通販業界と親和性の高い「後払い」という仕組み

――定期通販事業者にとって顧客のLTVを左右する要素の一つが、利用される「決済手段」です。今回はこの決済手段のよくある課題とその解決についてうかがっていきたいのですが、森さんは定期通販ビジネスの現場が長く、特に決済手段に関する業務経験が長いそうですね。

森:新卒で通販会社のニッセンに入社し、ターゲット広告の営業を担当していました。主な顧客は定期通販、いわゆる単品通販会社でしたので、業界全体の現場感覚を早い段階から身につけることができました。その後、ニッセンの後払いサービスの企画開発チームに参画。定期通販と後払いは非常に親和性が高く、多くの販売店様が導入していますが、このチームで決済サービスに関する知見も積み重ねました。

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SCORE 戦略推進室 室長 森裕士氏

 その後、DGフィナンシャルテクノロジー(当時はベリトランス社、以降はDGFTと表記)とニッセンの合弁会社として「SCORE」が設立され、2024年7月、SCOREはDGFTの完全子会社となりました。私はDGFTへの出向を経ながら、後払いサービスの立ち上げと拡販を担い続けています。現在は営業に加えて、後払いサービスの企画開発がメインの仕事です。直近では「スコアあとからカード」もその1つになります。

後払いとカード決済、長年横たわる業界のジレンマ

――定期通販事業者が「決済」において抱えてきた課題を教えてください。

森:一言でいうと、「獲得効率とLTVのトレードオフ」です。定期通販において新規顧客のCVRを上げるには、後払いが必須という認識が業界全体にあります。後払いならカード情報の入力が不要で、商品が届いてから支払える安心感もあるためです。実際に、定期通販では後払いが売上全体の5〜6割を占めるのが一般的。会社によっては8〜9割に達することもあります。

 ところが、定期通販の重要なKPIである継続率とLTVを見ると、カード払いのお客様と後払いのお客様では、大きな差が生まれています。「後払いは新規獲得のために必須なのに、後払いに寄るとLTVが落ちる」というジレンマが、後払いが業界に浸透してきた時から存在している状況です。

――後払いとカード払いでは、LTVにどのくらいの差があるのでしょうか。

森:たとえば弊社の調査した化粧品定期通販会社のケースでは、後払いのお客様はカードのお客様に比べてLTVが約30%も低くなっています(1年間の毎月の継続率を合算した値から比較)。年間売上の実数値で換算した場合、数億円規模の収益差になる事業もありえるでしょう。ただ、この点については課題感をお持ちの販売店様は多いものの、実際にどのくらいの差があるか把握されていないケースも少なくありません。

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サービス公式ページより(クリックすると拡大します)

 加えて直近では、EMV 3-Dセキュアの義務化により、カード決済のCVRが以前より下がりやすくなっています。CVRを上げるために後払いに寄せようという発想も出てきますが、そうするとLTVがさらに落ちてしまいかねません。一方、デジタル広告費の高騰でCPA(顧客獲得単価)が上昇し、獲得効率が悪化する中、各社がLTVをより強く意識するようになっており、各社が解決策を模索している状況です。

後払いからカード払いへの切り替え率は1%に満たない。これまでの打ち手は?

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――そうした課題に対して、各社はどのような打ち手を講じてきたのでしょうか。

森:主に2つのアプローチがあります。1つは、メールや商品の同梱チラシで「後払いのお客様はカードに切り替えませんか」と案内するCRM施策です。「自宅で簡単にお支払いいただけます」「カードに切り替えていただいた方にサンプルをお届けします」「後払い手数料がかからなくなります」といった訴求をされているケースが多いです。

 もう1つは、注文時のカートページでカード決済を目立たせる設計です。後払いの選択肢は残しつつ、訴求文言やデザインでカードを優先表示し、なんとかカードを選んでもらおうと、各社テストしながら調整しています。

――それでも、なかなか切り替えは進まないのでしょうか。

森:そうですね。自社のCRM施策でのカード切り替え率は、1%にも満たないケースが大半のようです。

 我々が後払い決済の営業をしていても、販売店様から「後払いは必須だ」と言ってもらえる一方で、LTVの観点からは「本当は後払い比率を上げたくない」という本音もある。

 後払いを歓迎されているのか、そうでないのか、という複雑な気持ちを持つ中で、もっと価値のある解決策を作れないかというのが、今回新たにリリースした「スコアあとからカード」を開発しようと思ったきっかけです。

販売店とお客様、両方の負荷を限りなくゼロにする「スコアあとからカード」

――「スコアあとからカード」はどのような仕組みのサービスでしょうか。

森:一言でいうと、「後払いで注文したお客様の支払い方法を、商品到着後にスムーズにカード払いへ切り替える」サービスです。

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サービス公式ページより(クリックすると拡大します)

 開発にあたって特に意識した点は3つあります。

 1つ目は、注文時の顧客体験を損なわないことです。注文時点の体験は従来の後払いと一切変えず、カード情報の入力は商品到着後にしてもらうという設計にしました。これにより後払いのメリットであるCVRの良さは担保できます。

 2つ目は、カード入力時の手間をなくすことです。従来の自社CRM施策では、マイページにID・パスワードでログインしてカード情報を入力するか、コールセンターに電話して口頭で伝えるしかありませんでした。まさにこれがカード切り替えの大きな障壁です。「スコアあとからカード」では取引ごとにユニークなURLを発行し、払込票に印字したQRコードやメールのリンクから、ID・パスワード不要で直接カード登録ページへ遷移できます。

 3つ目は、販売店様側の開発・運用負荷をゼロに近づけることです。通常のカード決済では販売店様がカード加盟店になりますが、「スコアあとからカード」ではカード加盟店の立ち位置をSCOREが担います。販売店様は通常どおり、後払いのお客様として情報を連携していただくだけでよく、カード決済のために販売店様側のシステムを改修する必要はありません。カード決済の案内・処理から、2回目以降の定期決済まですべてSCOREが行います。

 なお、「スコアあとからカード」では特許を取得しており、利用者の利便性と事業者の運用負荷軽減の両立を図っています。

――DGFTのアセットが、今回のサービス実現を可能にしているようですね。

森:そうですね。DGFTには元々、取引ごとにユニークなカード決済ページを発行する「メールリンク」という既存サービスがあります。ECシステムを持たない事業者でも、URLをメールで送付するだけでカード決済を提供できる仕組みです。今回はこの機能を応用・発展させることができました。

 また、DGFTはカード決済代行を本業として30年以上の歴史を持つ会社で、カード決済の知見と実績が基盤にあります。その信頼性があるからこそ、販売店様の導入障壁を限りなく低く抑えた形での実現につながったと思っています。

到達率・即時性・特典付与――切り替え率最大25%を実現した背景

――先行して実施したパイロット版では、どのような成果が出ましたか。

森:複数の定期通販会社様にご協力いただいたパイロット版で、カード切り替え率が最大25%という結果が出ました。各社の自社施策では切り替え率が1%にも満たないことが多いのが現実のため、この数字をお伝えすると「本当ですか」と驚かれることがほとんどです。この結果がなければ、本格的なサービス開発には踏み切れなかったと思います。

――ここまで切り替え率が高められた理由は何でしょうか?

森:先述の通り、カード情報の入力にマイページへのログインが必要ない「手間の少なさ」が挙げられますが、そのほかにも3つあります。

 まず1つ目に「到達率」の観点。払込票のすぐ上に訴求を掲載する設計にしました。払込票は後払いをご利用のお客様は必ず手に取るものです。コンビニに持参して支払おうとするそのタイミングに、カード切り替えの訴求が目に入ることで、メールの開封率とは比べものにならない到達率があります。

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訴求が記載された払込用紙および切替案内メールのイメージ(クリックすると拡大します)

 2つ目は「即時性」です。従来の施策では「次回からカードに切り替えませんか」という案内が中心でしたが、これだとまだ届いていない商品の支払い方法を変える話になるので、お客様のモチベーションがどうしても上がりにくくなります。

 「スコアあとからカード」では、「今回届いた商品の支払いから、今すぐカードに切り替えられます」という訴求ができます。払込票が手元にあって、コンビニに行かなければならないという義務が目の前にある段階で、「カードにすればコンビニに行かなくて済みます」と伝える。このように行動のタイミングに合った訴求ができることが大きいと思っています。

 3つ目が「値引きインセンティブ」です。あらかじめ販売店様と取り決めた金額をカード決済時にお値引きすることができます。たとえば、「2,000円の今回のお支払いを、200円引きの1,800円でお支払いいただけます」といった訴求が可能になります。先述のとおり、後払いとカードのLTVに約30%もの差があるなら、数百円の値引きコストは十分に回収できる計算です。

決済の先にある事業成長を、デジタルガレージグループ全体で支える

――今後の展望と、定期通販事業者へのメッセージをお聞かせください。

森:「スコアあとからカード」については、まだまだこれからという段階で、改善の余地は大いにあると思っています。重要なKPIはカード切り替え率と、切り替えたお客様のLTVをいかに上げるかの2つ。いずれもさらに工夫できることがあると考えており、販売店様にとっても、エンドユーザーにとっても、より価値のあるサービスに育てていきたいと思っています。

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 また、後払いには「購入後に必ずお客様とのコンタクトが生まれる」という、他の決済サービスにはない特性があります。多くのマーケティング支援サービスは「購入前にいかに購入させるか」に向けたものですが、後払いの支払いというコンタクトポイントは、購入後の体験を向上させる施策の起点にもなり得ます。このコンタクトポイントを活用して販売店様に新しい価値を届けることも、今後探っていきたい方向性の一つです。

 デジタルガレージグループとしては、決済や後払いに閉じない支援を目指しています。グループ会社と連動し、EC構築・不正利用対策・CRM・データ活用・業務DXといった領域まで含め、決済の前後にある体験や運用全体を見ながら販売店様を支援していきたいと思っています。決済はゴールではなく、事業成長の入り口の1つです。新規獲得と継続率の両立、LTV改善といった事業成長に直結するテーマに一緒に向き合うパートナーでありたい。それができるのが、様々なサービスと事業を持つデジタルガレージグループの強みだと考えています。

定期通販のCVRとLTVの両立に課題を感じている方におすすめ!

 「スコアあとからカード」は、後払いのCVRの高さを活かしながら、商品到着後にカード払いへスムーズに切り替えられる新サービスです。

 新規獲得と継続率改善の両立を目指したい定期通販事業者様は、ぜひサービス詳細をご覧ください。

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この記事の著者

落合 真彩(オチアイ マアヤ)

教育系企業を経て、2016年よりフリーランスのライターに。Webメディアから紙書籍まで媒体問わず、マーケティング、広報、テクノロジー、経営者インタビューなど、ビジネス領域を中心に幅広く執筆。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

提供:株式会社デジタルガレージ

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2026/07/13 10:00 https://markezine.jp/article/detail/50865