2029年「時価総額1兆円」から逆算する成長戦略
──まず、現在の事業内容について教えてください。
現在は、自社開発のAI自動分析システム「SELL」をマーケティングの中核に据え、スキンケアの「Yunth」、美容家電の「Brighte」、ヘアケアの「Straine」という3ブランドを中心に展開しています。
ただ、我々は化粧品やD2Cの会社だとは考えていません。商品を売るマーケティングソフトウェアを開発し、その仕組みを使ってブランドを拡大する「プラットフォーム」の会社です。
──売上、利益ともに大きく伸ばしています。今後の成長戦略をどのように描いていますか?
我々には、2029年3月期に時価総額1兆円を実現するという目標があります。そこから逆算して、成長戦略を進めています。時価総額1兆円には営業利益で最低でも400億程度は必要と考えており、売上と利益をおおむね2倍のペースで積み上げる成長モデルを推進中です。
2026年3月期の売上高は約293億円で前年比106.7%増。このペースで積み上げ、2029年3月期に売上高2,200億円へ到達する計算です。
──なぜ、時価総額1兆円にこだわるのでしょうか? その先の狙いはなんですか。
最終的な狙いは「時価総額1兆円の企業になること」ではありません。その先には、宇宙開発事業の展開を計画しています。時価総額1兆円の企業を作ることは、その事業の最初の成長基盤です。
もちろん、「何でも売って会社を成長させられればいい」と考えていたわけではありません。一社目の起業では女性向けメディア事業を立ち上げてバイアウトし、その後も美容メディアの運営を経て、美容領域に特化したマーケティングサービスを展開してきました。その経験から、顧客の課題を理解し、商品品質から販売方法までコントロールできる最も勝算のある領域が美容品カテゴリーだったのです。
大赤字だった独自開発AI「SELL」、広告運用を大きく拡張
──「SELL」について教えてください。
SELLは、広告の出稿、運用、効果測定、クリエイティブ生成などを自動化するAIシステムです。
出典:Aiロボティクス「2026年3月期 決算説明資料」
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2018年頃にFacebook Japan(現、Meta日本法人)の協力を経て開発しており、最初はFacebookとInstagramと連携し、その後、LINEやTikTokなどの主要プラットフォームにも活用を広げていきました。
プラットフォームの管理画面を開かず、当社のダッシュボード上で広告出稿から運用、パフォーマンス確認、チューニングまでを行える仕組みです。開発当初は、大手化粧品企業のマーケティング支援として活用していました。
──開発当初から高い精度を出せるAIソリューションだったのでしょうか。
いいえ。開発初期はそもそも分析データが乏しかったため、1人の新規顧客を獲得するのに20万円ほどの広告費がかかっていました。当時、定期購入型商品に対する成果報酬として受け取れるのは1万円程度でしたから、獲得するたびに大赤字です。
──1案件獲得するごとに19万円の赤字ですか……。
はい。仮に1万件も獲得してしまっていたらとんでもない数字になっています。取引先企業からも心配されるレベルでした。ただ、我々は目先の利益ではなく、当初から「どうすれば自動的に高い精度で良質なお客様を獲得できるのか」という課題に注力していました。
普通だったら投資を中断するようなCPAでしたが、長期の目線に立った時に膨大な学習データを先に確保しておくことで、どんな商品でも売れるようになる。それが会社が急成長するための大きな武器になると確信して、投資を続けました。
その結果、当社が蓄積したデータや判断ロジックと各プラットフォームの最適化アルゴリズムの融合が進んだことで、精度の高い広告運用の自動化を実現できました。
学習の深化は数値にも顕著に現れ、当初20万円だった獲得単価は15万円、10万円、5万円、2万円と下がり、最終的には1万円を切って利益が出るまで改善していきました。
