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広がるテレビの価値を計測し、あらゆる視聴の場で収益を得る新たなビジネスモデルを【氏家x有園対談】


世帯視聴率を捨てるべきか

氏家:最近の若者は、地上波放送をリアルタイムで見ていないだけで、違法ですがYouTubeで見ていたり、Huluなどネットで見ていたります。

有園:テレビの番組やCMの指標の中心とされてきた世帯視聴率。そのボリュームゾーンはM3とF3になっているから、世帯視聴率を上げようとすると、おじさん、おばさんが楽しいと思う番組を作らなければ視聴率は上がらないという法則になっています。今後は世帯視聴率も計測しつつつも、他の計測の仕方も導入していくべきなのでは。

氏家:世帯視聴率がテレビ広告費の指標になっているシステムは半世紀をかけて築き上げたものだから、すぐに無くすことは難しいし、性別、世代別の視聴率を見ることもできるので、なくす必要はないでしょう。

 今、問題になっているのは、視聴率に引っかかってこないもの。これをちゃんと捉えていきましょうよと。ネットで配信していれば細かいデータがとれるんですよね。この人は、何月何日に何時から見始めて、どこでいったん止めて、それをまた再開してどこまで見たか。やろうと思えば細かい視聴ログデータがとれるんです。それってコンテンツを作る側からすると気になる情報だし、どんなものをユーザーが好んで見るかということ自体が非常に重要です。それに属性やIDが取れていればターゲティングができるようになる。

有園:そうですね。

氏家:そうすれば、Netflix(ネットフリックス)が得意なレコメンドができたり、いろいろなことができるようになります。それとは別に、番組の内容を記録しているメタデータというのがあるから、それと視聴ログデータを組み合わせると「このタイミングでこれが出てくる」ということがわかるから「そこで視聴のパターンがどう変わるのか」ということも、やろうと思えばいろいろとデータ分析ができます。それはとても面白いです。それと消費性向を連結するとスポンサーさんにも喜ばれるデータになります。

 大事なのは、ユーザーの視聴データを使うことによって一番メリットを受け取れるのはユーザー自身だということです。だから、そういうデータは積極的に使った方がいいと思います。

これからのテレビ局のあり方

氏家:これからは、放送というものは、上から降らせるものではなくてサービスだと考えなければならないと思っています。サービスにした途端、いかに儲けるではなくて、いかに良いユーザー体験を提供できるか、いかに良いユーザーインターフェイスを提供できるかという風にKPIが変わるはずなんです。そこからいかないと逆に儲からなくなってしまう。儲かるところから始めるとユーザーが増えないんですよ。素敵なユーザー体験を提供するところからいかないと儲からない。Facebookもそうだったし、インターネットサービスは、そうやって多くのユーザーを集めてから儲けるというやり方ですよね。

 放送はサービスであると完全に割切る必要があります。素敵なユーザー体験を与えるためには、実は放送をやっているだけでも、動画をやっているだけでもダメで、放送というコンテンツをもとにした、いろいろなサービスを提供しなければならない。

 実はすでにテレビ局はやっているんだよね。DVDなどパッケージやったりECやったり、世界観にあった商品開発とかをやっているわけです。キャラクターグッズも作っているし。そういうものもトータルで、サービスとしてのユーザー体験を高めるためのものなんだと考えると、まだまだできていないことがあって、実はやることがたくさんあります。

有園:結局、番組もしかりですが、いま起こっていることは、若者のテレビ離れではなく、テレビの若者離れだと思っているんです。つまり、若者に対して素敵なユーザー体験、あるいは、サービスを、きちんと提供できていない。

 世帯視聴率を上げようとすると、M3F3の人たち、つまり、50代以上のおじさん・おばさんにウケる番組を作らないといけない。その結果、若者が面白いと思う番組を作ってないわけですよ。若者に寄り添うには、若者にウケる番組を作ってスマートフォンとかに出す。つまり、若者にウケる番組を若者に向けてマーケティングしなければなりません。趣味嗜好、デモグラフィックみたいなものに合わせて、あまり小さなターゲティングはできないでしょうし意味がありませんが、そういうこともやっていかなければならないでしょう。

世帯視聴率に縛られない、新しいマーケティングを

有園:今でさえ若者は「TVer、面白い」と言っているわけですから、ちゃんとすれば絶対に戻ってくると思うんですよ。スマートフォンで見ているかもしれませんが、それでもいいじゃないですか。民放連の井上会長が言うように、スマートフォンも測ってお金に換えていければいいわけなので。そういうマーケティングをテレビ局はもっとやっていって欲しいのです。世帯視聴率だけに縛られない形のマーケティングが今後は必要だと思います。

氏家:テレビ局の中には保守的な人や、コンサバティブな人たちはいます。「そんな方向に大胆に変化して大丈夫なのか」と、よかれと思って言っているんです。「地上波の一番大事なビジネスモデルが壊れるじゃないか」と。でももう壊れ始めているんですよ。

 今までテレビは非常に効率的なビジネスだった。それを壊さないためには、変化などしないほうがいいと言うのは正解でした。でも時代は大きく変わってきている。民放連のトップが「こっちに行くぞ」とはっきり宣言したということは、そういう保守的な人たちを説得する上での効果がとても大きいんじゃないでしょうか。テレビの外の世界の人たちからは、井上会長の発言は評価されているようですし。

 TVerをやるときも各局の中には「そんなこと、やる必要ないだろう」という人が、かなりたくさんいたことはよく分かっているけれど、それでもやったわけですよ。で、実際にやってみると効果が出た。わずか3週間で100万ダウンロードでしょ。誰も考えていなかったスピードです。しかもほとんどTVerのプロモーションをやっていないんです。やっても、それこそ「下町ロケット」のドラマの終わりの5秒とかだけで。それなのに100万DLいってしまうんだから。Huluが60万から100万を超えるのに、どれだけCMを打ったことか。

 TVerはほとんど何もせずに100万いった。その潜在力はすさまじいものがあります。各局がバラバラにやっていたことを、ただ束ねただけなんです。ユーザーは、バラバラのところに見に行くんじゃなくて、一か所にまとまっているところで見られる、それだけです。だからユーザーインターフェイスが重要だと言っているんです。

有園:氏家さんとお話しして、テレビ局の未来は明るいなと改めて感じました。民放連の井上会長の存在が、やはり、大きいなとも痛感しました。

氏家:井上会長が道を作ってくれたことが大きいのと、5年、10年するとテレビの中の人が世代交代するじゃないですか。デジタルネイティブの人たちが組織の中で大きな決定権を持つようになります。だから、いまのペースでいけば、テレビ局の未来が明るいことは確かかな。

有園:長い時間、ありがとうございました。

本記事は「Unyoo.JP」の記事「テレビの未来は明るい!これからの放送はサービスでありユーザーインターフェイスが重要だ!」を要約・編集したものです。長編のオリジナルコンテンツを読みたい方は、こちらをご覧ください!

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この記事の著者

有園 雄一(アリゾノ ユウイチ)

Regional Vice President, Microsoft Advertising Japan

早稲田大学政治経済学部卒。1995年、学部生時代に執筆した「貨幣の複数性」(卒業論文)が「現代思想」(青土社 1995年9月 貨幣とナショナリズム<特集>)で出版される。2004年、日本初のマス連動施策を考案。オーバーチュア株式会...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2016/03/11 20:02 https://markezine.jp/article/detail/23825

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