小さな気づきから即日アクションへ。ダッシュボード共通化の威力
TSIではContentsquareを導入し、事業部別ダッシュボードとブランド別ダッシュボードを作成。表示するKPIは主要な「ページビュー数」「商品詳細遷移率」「貢献売上」の3つだけに絞り込んだ。セールスチームやPRチームが同じ画面、同じ期間の数字を直感的に把握できる環境を整備したことにより、数字を共通言語としたチーム内・チーム間における「コミュニケーションのハブ」が生まれたという。
また、ページコンパレーター機能を活用した特集ページの比較分析や、ゾーニング分析による詳細なレイアウト検証が日常業務に組み込まれた。象徴的な事例が、レディースブランドのデニム特集ページにおける改修だ。ゾーニング分析によって、ページ下部に設置されたデニム一覧ページへの遷移ボタンの魅力度が8.68%にとどまっていることが判明した。他のアイテムへの回遊ニーズがあると仮説を立てたチームは、1ヵ月前にリリースした別のデニム特集ページへ誘導するバナーの追加を立案。提案を受け、現場は迅速に動いた。
コンテンツマーケティング課の関河真歩氏はその成果を次のように語る。
「ブランドと合意を獲得し、エンジニアに即日修正依頼をかけてその日のうちにページ改修を行いました。翌週振り返った際に、設置したバナーの魅力度が8%から18%と倍以上獲得できており、過去ページへの回遊にも寄与しました」(関河氏)
この即日の改修と検証の結果、当該ページを経由した収益は約167%アップを記録。小さな気づきを素早いアクションへつなげるサイクルの有効性が実証された。
属人的な“センス”をナレッジへ。データ駆動型組織への挑戦
Contentsquareの導入から1年を経て、TSIの組織内には確かな変化が表れている。これまで、世界観を重視するアパレルのコンテンツ制作は、優れたアートディレクター個人の感性や感覚、いわゆる「センス」に依存しがちだった。しかし、クリック率やコンバージョン率といった客観的な数字が全員の共通言語となったことで、クリエイティブの評価や改善手法が再現性のある知識として組織に蓄積されるようになったという。セールスチームからも「配置を変えたことで数字に寄与した」という声が上がり、部門を越えた連携が加速している。
一方で、複数のブランド間で指標の意味合いを揃えることや、非エンジニア層も含めたツールのリテラシー向上には試行錯誤もあった。それでもなお、感覚的なアイデアをデータによって成功体験へと昇華させる取り組みは着実に実を結んでいる。今後は、各役割に応じた運用フローの定着とツールの民主化をさらに推し進め、感性とデータが融合した持続的なブランド体験の構築を目指していくという。
資生堂ジャパンとTSIの事例は、デジタル接点における高度なデータ活用が、単なる効率化を超えて組織の意思決定とブランド価値そのものを高める強力な原動力になることを示している。
