「原因は自分にある」リーダーに必須の覚悟
SLZ:こうした組織を率いるリーダーには、どんな覚悟が必要でしょうか。
中西:基本的にはすべて事業リーダーである自分の責任と考えることです。そのうえで大事なのが「メタ認知」です。リーダーは権力勾配の上にいるので、なかなかフィードバックをもらえません。常に、自分は今どういう状態にあるか、望ましい状態からずれてしまっていないか、問い続けることが求められます。
また、リーダーのひと言や仕草は、組織に浸透します。私がイライラしていれば、メンバーもそう振る舞う。以前、360度フィードバックの際に「中西さんが『いける』と言うと、いけると思ってしまう」というコメントをもらったのですが、これは本当にうれしかったですね。どんなに厳しい局面でも、リーダーは最後まで部下に「大丈夫、全部うまくいく」という姿を見せ続けるべきだと思います。
SLZ:とはいえ、営業責任者は、どうしても目の前の数字に追われがちですよね。
中西:その気持ちは痛いほどわかります。しかし、「誰に何を」という前提が正しくないままメンバーに頑張らせても、3年後も同じことを言うはめになるはずです。商談数や案件管理をどれだけ頑張っても伸びないなら、それはアラート。現象は下から上がってきますが、原因はもう1つ、2つ上の構造そのものにあることが多いんです。
SLZ:原因が現場で解決できないもの、たとえば市場、プロダクト、経営方針などにあるとわかったら、どう動くべきでしょう。
中西:目先の数字を犠牲にしてでも、構造的課題を解決する。「この3ヵ月は落ちてもいい。ここを変えれば来期は上がる」と決めて、やり切る。
マネージャー層には「決定」と「決断」の違いをよく伝えています。論理的に選ぶのが「決定」で、これに痛手は伴いません。正解がわからないものを決め、結果を出すのが決断です。決断の回数が多いほど、リーダーの器は大きくなる。自分自身、たくさんの失敗の中で事業の構造的課題が見えてきました。もし正解がわからなくても、正解に近づく決断を諦めないことが大事。私はそう信じています。
若手に決断の打席を 各世代の優秀な人が集う組織へ
SLZ:若手の育成では、どのようなことを大切にされていますか。
中西:「決断の打席」の機会をどれだけ手渡せるかです。ただし、誰にでもではなく、任せた仕事で成果を出すメンバーに渡していきます。実際、2023年入社の新卒メンバーが、入社4年目・26歳でグループ会社の取締役を務めています。毎月の業績報告の場でも堂々としていて、顔つきが違う。経営では、先のわからない決断を日々行う必要があります。成果を出せる人は、不確実性の高い場所に飛び込んでも、しっかりと伸びていくのだと実感しました。
若手に大切なのは、御用聞きにならないこと。決裁権がなくても「自分ならこうする」と決めて持ってこられるか。私自身も毎週、経営陣に「経営者ならこの課題をこう解決する」と決めて提案しています。いわば「バーチャル決断」です。これができるかで成長角度はまったく変わります。採用でも、過去に自分で決めてきた回数とメタ認知の高さを見ています。
SLZ:今後、どんな組織を目指していますか。
中西:私たちが狙う移動のドメインは大きく、社会に大きなインパクトを与えられる領域です。ここが進化しなければ10年後の日本が困る、くらいの気持ちでやっています。だからこそ各世代の優秀な人が集まり、それを束ねられる多様性のある組織をつくりたい。
平均年齢が高い組織は構造的に意思決定が保守的に寄り、若い世代だけだとイノベーティブに寄る。公共性のある領域だからこそ、バランスよく意思決定できる構造が必要です。

SLZ:最後に、SalesZine読者へのメッセージをお願いします。
中西:「俯瞰してみましょう」です。課題と解決策がはまれば、オペレーションをそこまで頑張らなくても売れる。やったほうが絶対に楽になります。私はその差を経験してきました。
そして、私たちが成長すれば日本の社会がよくなる。そう信じられる方、世代を問わず自分で決めて持ってこられる方と、一緒に挑戦したいですね。
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宮田華江(編集部)(ミヤタハナエ)
立教大学社会学部メディア社会学科卒業。2016年翔泳社に入社、MarkeZine・ECzineなどの広告営業を担当。2019年1月に営業組織をテクノロジーで支援するウェブマガジン「SalesZine」を立ち上げる。2020年4月、SalesZine編集長就任。ビジネスメディアの統合を担い、2026年...
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