複数代理店の管理機能活用で、入稿管理やデータ集計の作業を週1日削減
Web広告を大規模に展開する企業の中には、キャンペーンの内容や出稿する媒体・広告枠に応じて複数の代理店と取引し、パフォーマンスの向上を図っている企業が多いだろう。
ただ、取引先を増やすことで、各代理店との情報共有が遅くなったり、計測パラメータの管理など入稿作業を全て自社で一元化する必要が生まれたりといった問題に直面してしまう。
そんな問題を抱えている企業に勧めたいのは、一部の広告効果測定ツールが備えている複数代理店の管理機能を使うこと。以前、MarkeZineで紹介した「ロゼッタストーン・ジャパン」の事例では、この機能を備えたツールを導入することで、データ集計や社内報告用のレポート作成にかかっていた作業を週1日分削減された。代理店に共有するために手作業で行っていたアクセス解析データの加工がなくなったためだ。
ここで、複数代理店の管理機能とは、代理店の閲覧できる範囲を制限した上で広告のクリック数・コンバージョン数を共有したり、効果計測用のパラメータ発行などの出稿関連の作業を代理店と分担できるようになる機能のことだ。
今回は、代理店管理機能を備える広告効果測定ツール「ウェブアンテナ」を利用しているエステティック業界最大手のTBCグループの取り組みを通じて、複数の代理店を通じたネット広告運用における課題がどのように解決されたのか、見ていこう。
出稿量増加とともに取引代理店との情報共有に課題
いち早くWeb広告に取り組んでいるTBCグループがより注力しはじめたのは2年前から。現在では6~7社ほどの代理店を通じて出稿している状況だという。
それぞれの代理店には「有力媒体とのリレーションに強み」「クリエイティブが上手い」といった特徴があり、TBCグループでは出稿する媒体・広告枠、キャンペーンの内容などに応じて複数の代理店から協力を得ていたが、情報を共有するところで課題を感じ始めるようになった。
単純に出稿量が増加することで、情報共有をしなければならない代理店の“数”が増えるという点がまず1点。もう1つは、情報共有を試みたとしても実際にはリアルタイムでの情報共有は難しいため、メニューの提案があってから過去の実績を共有するといった、代理店からの提案時にコミュケーションのずれが生じるケースがあったという。
そんな状況を踏まえ、TBCグループはWeb広告を本格展開しようと考えたタイミングで広告効果測定ツールの導入を検討。当時、複数代理店の管理機能を唯一備えていたウェブアンテナの採用に踏み切った。
リアルタイムでの情報共有を実現し提案精度が高まる
ウェブアンテナを導入したことで、TBCグループは過去の出稿実績や出稿中の広告パフォーマンスについて、閲覧可能な範囲を制限しながら代理店と数字を共有できるようになった。
従来、レポートを代理店に月に数回送ることで情報共有を図っていたが、リアルタイムにデータを共有できるようになったのだ。
また、情報共有の速さだけでなく深さも改善された。クリック数だけでなくコンバージョン数も共有されるようになり、代理店側も、顧客獲得単価(CPA)など、数字を意識するようになったという。
「導入後は自社のコンバージョン率(CVR)の過去実績を基にCPAの想定値まで算出して提案されるようになりました。以前でも広告メニューの平均CVRを使ってCPAの想定値を出すことはできました。ですが、自社のCVRの実績が共有できると、想定値の精度が上がり、広告出稿のプランニングがしやすくなります」
TBCグループ株式会社宣伝部の三吉利征氏は、ウェブアンテナを導入した成果について、このように話している。
多彩な商品ラインゆえの入稿管理の煩雑さも解消
また、情報共有とともに抱えていた課題が広告の入稿管理についてだ。
一口に「エステ」と言っても、TBCグループのサービスラインは脱毛・フェイシャル・ボディと分かれていて、さらに女性向け・男性向けといった区分もある。当然、広告のクリエイティブはサービス別に作成する必要があり、1つの広告枠で複数のクリエイティブを回すことが当たり前のことになっている。
さらに言うと、出稿先は1つではなく、さまざまな媒体に並行して広告を出す。入稿日が月曜なのか火曜なのか、広告クリエイティブやリンク先ページの審査に掛かる日数は何日かと、媒体別の規定にも配慮しなくてはならない。
TBCグループではウェブアンテナ導入以前、各担当者が計測用パラメータを用意してExcelで作った管理表に記入。広告クリエイティブとリンク先の情報も入れていたが、クリエイティブで訴求するサービスが違えば、リンク先のページも変わってくる。
つまり記入が必要になるのは、出稿する媒体・広告枠の数×クリエイティブ数×リンク先URL数の掛け算。Web広告の展開規模を拡大していくと、入稿管理に綻びが生じるのは目に見えていた。
しかし、ウェブアンテナ導入後は、入稿管理の作業を代理店が自ら行えるようになった。具体的にはウェブアンテナの複数代理店管理機能を用いて、代理店ごとに計測用パラメータの発行作業ができるような体制を構築。
また、代理店で入稿管理を行えるようになると、同一キャンペーンを異なる名前で登録してしまい、管理が煩雑になる可能性がある。しかし、TBCグループでは、ウェブアンテナの提供元のビービットのサポートを受け、キャンペーンの命名ルールを厳密に決めることで運用負荷を軽減している。
それにより、複数クリエイティブ・複数URLをかけあわせるような複雑なキャンペーンでも入稿管理でのミスを防げるようになった。
このように、様々なパターンの訴求を同時展開できるようになったことで、思わぬ副産物も手に入った。
ウェブアンテナを使えばリアルタイムに各クリエイティブのパフォーマンスを把握できるため、さまざまな組み合わせの中から最も優れた組み合わせをすぐに見つけ出せる。その結果、直近の結果を反映したクリエイティブをタイムリーに入稿することが出来ようになる等、意思決定の迅速化にも貢献しているのだ。
運用を見据えた万全のサポート体制でツール導入
さて、こういったツールの場合、通常業務を妨げずに導入が行えるかどうか、という点は導入側の立場に立つと非常に重要な問題だ。特にTBCグループの場合は大規模にWeb広告を展開し多くの人が関わっているので、スムーズに導入が進むかどうかは、ツール選定時における大きなポイントとなる。
その点、ウェブアンテナの開発・サポートを行うビービットは、様々なクライアントへの導入から得た知見を活かし導入をサポート。ビービットのサポート力について、三吉氏は次のように評価する。
「弊社ではキャンペーンページと予約ページを別々のサーバーで管理しています。その場合、特に、モバイルサイトへの導入の際はデータ連携のやり方やセッション管理が複雑だったりします。そういった際にもビービットのご担当者様へ相談すれば的確に対応していただけます。そこは非常に安心であり大きな力になってくれていると感じています」
Yahoo!トピックスの効果が分かる。ニュースPRの間接効果を把握したい
複数代理店から協力を得るため、運用上の問題点をツール導入によって解決したTBCグループ。今後は、さまざまな広告の効率アップに取り組もうとしている。
具体的には、広告種別にリーチした後のユーザー行動の特徴を明らかにすること。広告種別にどんな見せ方が良いのか、あるいは多彩な広告種別をどう組み合わせて見せると最適なのか、間接効果も含めて分析していきたいと三吉氏は展望を語っている。
またTBCグループと言えば、木村拓哉やデビット・ベッカム、KARAを起用した話題性あるキャンペーン展開などでも知られる。
有名人を起用したことでYahoo!トピックスやテレビのニュースで取り上げられた場合、どれだけの成果に結び付くのか。そこまで踏み込んだ分析をしていきたいという考えだ。
そのような、これまでできなかった分析を実施する際に三吉氏はウェブアンテナの新機能に期待している。広告以外の経路、ブログやお気に入りなどからの流入についても測定できるという機能だ。
目には見えないが確かに効果は出ているはずのニュースPRの影響力。それを数値化して把握できるように、ウェブアンテナをより活用していきたいと考えているようだ。