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MarkeZine Day 2025 Autumn

石谷聡史と考える統合マーケティング・コミュニケーションの未来

「創造的なことには、リスクがあって当然」 ─ 原野守弘氏


創造的なことには、リスクがあって当然

 ―― 実際に、オリエン時に期待されている内容の上をいく提案をする場合、どんなことを意識されているんでしょうか?

 方法論でいえば、「完璧な絵を見せること」です。パッケージの提案なら細かいところまで作り込むし、店内ビジュアルなら店に入るとこんなふうに見えるというパースも用意する。中途半端に説明しても不安にさせるだけですし、「あのオリエンは違うと思ったけど答えはまだここまで」と言われたらいい気分はしませんよね。だから、一回で納得してもらうんです。

 それから、提案は一案に絞る。あれもこれもと全方位的に考えていくと、案も増えていきます。これもリスクヘッジの一種ですが、考えが浅い、詰め切れていないとも言える。オリエンに違和感がなく、そのまま受けて提案する場合でも、これは同じです。

 本質的なところでいうと、クライアントが感覚的に腑に落ちるような概念的なコアアイデアを共有することでしょうか。

 ―― なるほど。元々、原野さんもデジタル領域のご出身ですが、どうやってコアアイデアに触れるような全体的な発想で仕事ができるようになったんですか?

 そうですね、僕の場合は意図的ではなかったのですが、2008年のホンダのキャンペーン「Honda Green Machine」がきっかけでした。当時、僕は電通でWeb広告を扱っていて、このタグラインもたくさんあるホンダのバナー広告の一案でした。しかもアイデアもまったく別物。それが、たまたまホンダの担当者さんがネットのほかにハイブリッドカーの総合キャンペーンも担当していて、この言葉がズカッと響いたそうなんです。

 ホンダはハイブリッドカー以外にも燃料電池車やいろいろなエコカーの技術を有していますが、ちょうどそれを一括りで表せる言葉を探していました。そこに聞こえてきた「Honda Green Machine」というワードが、ホンダのスピリットや技術力、エコカーへの意気込みを感じさせるということで、これをタグラインにしてマスメディアを絡めたキャンペーンを張ることになったのです。僕にとって、この事例は初めての大型キャンペーンになり、それから徐々に全体の戦略にかかわる仕事にシフトしていきました。

 コアアイデアといっても、クライアントはクリエイティブのプロではないので、やはり響きやすいのはビジュアルや企画自体ではなく言葉なんでしょうね。世の中向けのコピーとも違う、概念的な。マーケティングの担当者が書いた企画書の中にでも、とっかかりになる言葉があると思います。そういうのを意識することも、より広い視点で仕事をするポイントかもしれません。

Honda Green Machine「クルマを、救え」篇
(新聞広告 2008年10月掲載/出典:HONDAサイト)
Honda Green Machine「クルマを、救え」篇(新聞広告 2008年10月掲載/出典:HONDAサイト)

 ――コアアイデアを共有できればその後もスムーズだし、クライアントと一体になって進んでリスクを取ることもできると。

 そう思いますね。そもそも、クリエイティブはリスキーなもの。創造的であることはつまり今までにないことをしようとするわけだから、危険で当たり前なんです。それを避けようと思った瞬間に、それはもうクリエイティブじゃなくなってしまいます。

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石谷 聡史(イシガイ サトシ)

株式会社電通 プラットフォーム・ビジネス局 コミュニケーション・プランナー

さまざまな企業の統合マーケティング戦略のコンサルティング・プランニング業務を行なう一方、コンタクトポイント・クロスメディア・PDCAなどマーケティング・コンバージェンスに関連する新しい手法開発にも従事。『クロスイッチ-電通式クロスメディアコミュニケーションのつくりかた-』(ダイヤモンド社)やクロスイッチを元にした英語書籍『The Dentsu Way』(McGraw-Hill)を中心となって企画・執筆。中国・韓国・タイでも翻訳本が出版される。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

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MarkeZine(マーケジン)
2014/10/29 14:11 https://markezine.jp/article/detail/17856

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