2.「ルイ・ヴィトン財団美術館」に設置されたVR体験コーナー
アメリカを代表する建築家、フランク・ゲーリーの作品で知られる『フォンダシオン ルイ・ヴィトン』(ルイ・ヴィトン財団美術館)にも、VR体験コーナーが設置されていました。この美術館の建物は、ゲーリーの独特で彫刻のようなフォルムが特徴で、船の帆を思わせるデザインもよく知られています。
VR体験では、CGで再現されたゲーリーの建築のバーチャル空間内に、複数人で同時に入り込むことが可能。模型のように俯瞰で見て回ったり、生身の人間のガイドから詳細な解説を受けたりすることができます。最後には、建物が船となり空を飛ぶという、建築の物語をイメージした演出もありました。
体験自体はそこまで凝った演出があるわけではなくシンプルですが、生の人間が詳細を解説してくれる点は、十分新たな発見を感じられるものになっていたと思います。また「立体構造物の見せかた」の観点からも、ひとつの手法としておもしろいと感じました。
3.広場にある「ノートルダム大聖堂」に関する展示施設でVRを活用
2019年の火災により、再建工事が続くノートルダム大聖堂は、パリの象徴とも言える歴史的建築物です。フランスゴシック建築の代表例として世界的に知られ、美しい鐘楼や彫刻、ステンドグラスなどが観光の目玉となっていました。火災事故は日本でも大きなニュースになりましたが、以後の試みとして、広場には聖堂に関する展示施設が設置されており、そのなかでVRが活用されています。
このVRもこれまで紹介した事例と同様、バーチャル空間内を実際の空間のように自由に歩き回るタイプ。復元されたかつてのノートルダム大聖堂の内部を歩き回ったり、歴史上のできごとを追体験したりできるほか、修復工事にも言及されています。「エンタテイメントとして文化を見せる」という体験デザイン力の高さだけでなく、CGの完成度も素晴らしく、技術と表現の融合体として一目置ける内容だと感じました。
地震災害が多い日本でも「物理的な空間や文化をどのように保存し情報として伝えていくか」という観点は重要なはずです。今回はロケーションベース・エンタテイメントとしての具体的な見せかたの事例として紹介していますが、ウェブブラウザで表示できるメディアに変換して考えることも可能でしょう。デバイスはいったんおいておきますが、情報デザインの次のかたちとして、バーチャルな見せかたには何らかのヒントがあると改めて感じました。