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今知っておきたいマーケティング基礎知識

代表的なオン・オフライン別マーケティング手法とマーケティング分析手法を一挙解説


 マーケティングにはさまざまな手法があります。自社の商品やサービス、ターゲットに合わせて最適なマーケティングが大切ですが、それにはどのようなマーケティング手法があるかを知らなければ取捨選択はできません。そこで、代表的なオンライン、オフライン別マーケティング手法を紹介します。また、具体的なマーケティング手法はマーケティング戦略に則って選定するため、事前に必要となるマーケティング分析手法も簡単に紹介します。

マーケティングとは

 マーケティングとは、簡単に言うと「商品やサービスが売れるしくみをつくること」。しかし、アメリカの経営学者フィリップ・コトラーによると、そこには消費者(顧客)の需要を探り、価値を生み出し、消費者に届け、利益を上げることが含まれます。

 いわゆる、市場調査、商品やサービスの企画、具現化、広告宣伝などの活動が当てはまります。

 一方で、日本マーケティング協会は2024年1月に34年ぶりにマーケティングの定義を刷新。マーケティングとは「顧客や社会と共に価値を創造し、その価値を広く浸透させることによって、ステークホルダーとの関係性を醸成し、より豊かで持続可能な社会を実現するための構想でありプロセスであります」としました。

 ここでポイントとなってくるのが「顧客や社会と共に価値を創造」という点です。DX(デジタルトランスフォーメーション)が進み、マーケティングがさらに広義なものへとなっていく中、企業と顧客は、企業が一方的に価値を届けるのではなく、共に創造する関係性へと変化している点に着目。これまでマーケティングは企業および他の組織が主体となっていましたが、新しい定義では個人や非営利組織などが含まれる上記のものに新たに定義されました。

マーケティングの手法とは

 マーケティングを行う際に言及される「マーケティング手法」。ここで言う手法は「方法」を指していますが、マーケティングが「市場調査、商品やサービスの企画、具現化、広告宣伝活動」を含むものであるため、それぞれのプロセスにおいて「手法」が存在します。

 なかでも一般的に「マーケティング手法」と言って想定されるのは「分析手法」と「広告宣伝活動の手法」です。そこで、ここでは主な分析手法と広告宣伝の手法について紹介します。

マーケティングの主な分析手法

 市場調査などで得られた情報をどのように活用し、マーケティング活動に展開していくのか。それらの方針を示すマーケティング戦略を立てるうえで欠かせないのが、マーケティング分析です。

PEST分析

 PEST分析は、自社をとりまく外部環境(マクロ環境)を4つの視点に分け、中長期的な影響を整理し、分析するためのフレームワークです。外部環境は「政治(Politics)」「経済(Economy)」「社会(Society)」「技術(Technology)」に分類され、市場の動きではなく、政治や経済といった世の中の大きな動きの中から自社の立ち位置を分析します。成功するサービスや事業、売れるモノはトレンドなどの時流を背景にしたものが多く、世の中の流れを探りマーケティングに活かしていく分析手法です。

 そのため、経営戦略やマーケティング戦略などの事業戦略を策定時、新規事業・新規参入または撤退時などに用いられることが多くなっています。

3C分析

 「市場・顧客(Customer)」「競合(Competitor)」「自社(Company)」の3つのCを用いて、ビジネス環境を理解するのが3C分析です。顧客のニーズや消費行動、市場動向などを分析して自社の市場での立ち位置を把握し、強みや弱みなどを抽出します。経営戦略やマーケティング戦略などの事業戦略を策定する際、PEST分析と合わせて行うとより詳しく分析していくことができます。

ファイブフォース分析

 PEST分析がマクロの環境分析手法であるなら、ファイブフォース分析はミクロの環境分析手法となり、業界内外で自社の脅威となる5つの要素を分析する手法です。5つの要素は「既存の競合他社」を中心に「新規参入者」「代替品」「買い手(顧客)の交渉力」「売り手(サプライヤー)の交渉力」です。主に収益性があるか、その構造はどういったものかなどを明らかにし、効果的なマーケティング戦略を策定するためのヒントとします。

SWOT分析

 SWOT分析は、自社の内部環境を「強み(Strength)」「弱み(Weakness)」に、外部環境を「機会(Opportunity)」「脅威(Threat)」の4つに分けて分析します。このとき、強みと機会はプラスの要因として、弱みと脅威はマイナスの要因として、現状の洗い出しを行います。

 SWOT分析を行う際は、最初にPEST分析や3C分析などでマクロ的な視野に立った環境分析を、次にファイブフォース分析でミクロ的な環境分析を行い、各情報を収集。その後、SWOT分析で何をしたいのか、課題を見つけるなどの目的を明確にし、分析結果を用いて売上増を狙うなどの目標を立てていきます。さらに、それぞれの要素を掛け合わせて分析するクロスSWOT分析を行う場合もあり、具体的な戦略を立てるのに有効です。なお、環境分析の一環としてSWOT分析を最初に行う方法もあります。

4P分析

 マクロ的、ミクロ的な環境分析を行い、戦略立案後に具体的な戦術・施策立案時に有効なのが、4P分析です。具体的な戦術を「製品(Product)」「流通(Place)」「価格(Price)」「プロモーション(Promotion)」の4つのPで検討。課題が見つけやすくなり、戦術のアイデアも出しやすくなります。

 4P分析と似た言葉で4C分析があります。4P分析はあくまでも企業側の視点であり、4C分析は顧客側の視点です。4P分析同様に、4C分析は4つのCである「Customer Value(顧客価値)」「Cost(費用)」「Convenience(利便性)」「Communication(コミュニケーション)」で検討していきます。そして、4P分析と4C分析を組み合わせて行うことで、より多角的な分析が可能となります。

マーケティング手法の種類

 マーケティング手法は明確な体系化がされておらず、切り口によって分類方法はさまざまです。特にオンラインマーケティングが台頭してから、分類はさらに多様化し複雑になっています。加えて、現在のマーケティングはひとつの手法に頼るのではなく、さまざまな広告宣伝媒体を介したクロスメディアの手法でなければ訴求が難しくなっています。

 そこでここでは、広告宣伝活動を中心としたマーケティング手法を、オンラインマーケティングと、それに対する意味合いとしてのオフラインマーケティング、オンラインとオフラインの双方に通じるマーケティング、そして概念的、戦略的なマーケティングの4つに大きく分けて紹介。さらにそれぞれを細分化してマーケティング手法として解説します。

 実際にマーケティング戦略を立てる場合は、これらの細分化された手法を複数組み合わせていきます。

オフラインマーケティング

 オンラインマーケティングが登場するまで、一般的にマーケティングと言えばリアルの場で行われるものを指していました。オフラインマーケティングという言葉は、オンラインマーケティングが生まれたからこそ出てきた言葉といえるでしょう。そしてオフラインマーケティングの中でも、現在も訴求力のあるマーケティング手法といえるのが下記の3つです。

マスマーケティング

 マスマーケティングは、ターゲットの絞り込みを行わず、不特定多数の消費者に向けて行われるマーケティング。マスメディアと呼ばれるテレビや新聞、雑誌、ラジオなどを使った広告・CMのほか、街頭広告や交通広告といった媒体を活用したものを指します。

 特徴としては、集中的に広告やCMを出し、多くの消費者に認知してもらう点です。意識しなくとも耳や目に入ってくるため、「なんとなく知っている」層を作り出しやすい手法となっています。老若男女問わず、商品やサービス、事業を広く知ってもらいたいときに有効です。

 しかし近年では、スマートフォンが普及し、情報をインターネットから入手する人が増加。動画配信サービスなども一般化しています。特に若年層にその傾向が強く、20代のテレビ視聴率や新聞購読率は低下。若年層向けにはオンラインを、高齢者向けにはマスメディアを活用したマーケティングを行う企業が増えています。

テレマーケティング

 電話やファックスを用いたマーケティング活動がテレマーケティングです。自社の既存顧客や見込み客を相手に、電話やファックスなどの情報通信技術を活用してコミュニケーションをとるもので、新規顧客の獲得を目指すテレアポとは分けて考えられています。また、広告宣伝よりも比較的「営業」の意味合いが強くなっている点も特徴です。

 テレマーケティングには、資料請求や問い合わせなどで顧客側から連絡をしてきたときにコミュニケーションをとるインバウンド業務と、既存客、見込み客に対してアプローチするアウトバウンド業務があります。既存顧客や見込み客を相手にした場合、自社のデータベースから条件ごとに細かく抽出でき、より確度の高いマーケティング活動が期待できます。

 特徴は、人が応対するため一方通行ではない点。特にアウトバウンド業務では、相手に合わせたアプローチができることが利点です。その分、オペレーターの知識やコミュニケーション力など求められるスキルは高く、多くの人件費も発生します。

イベントマーケティング

 イベントマーケティングは、セミナーや展示会などのイベントを通じて自社をPRし、見込み客や商談の機会を得る手法です。

 イベントマーケティングのメリットとして挙げられるのが、見込み客の獲得や育成のチャンスの多さです。セミナーや展示会に来場する人は、すでにその商品やサービス、企業、業界に興味があり、詳しく知りたいという要望があります。それだけに営業効率の高いマーケティング活動が行えるのです。

 ここでの分類ではオフラインマーケティングですが、実際にはオンラインイベントやオンラインセミナーなども定番化してきています。しかし、現状ではイベントマーケティングと言うとリアルの場のものを指すことが多く、その効果は依然として高い期待が寄せられています。イベントの様子はメディアやSNSで紹介される場合もあり、情報の拡散も期待できるようになっている点も大きいのでしょう。

オンラインマーケティング

 インターネット通信を活用したオンラインマーケティングは、さまざまなアプリやサービスの登場に合わせてマーケティング手法が確立されており、乱立状態とも言えます。一般的に、それぞれの手法は別の手法と関係性があり、まずは浅く広く各手法を知っておくとよいでしょう。

Webマーケティング

 Webマーケティングは、Webを中心に行うマーケティング手法です。自社のWebサイトなどを通して集客をし、商品の購入や問い合わせなどへと促していくもの。また、サイト内の行動や検索キーワードなどを分析して消費者のニーズを探ることもできます。

 Webマーケティングの強みは、今やマスメディアを凌ぐ勢いの情報伝達力と拡散力、加えて費用対効果を測りやすい点です。Webサイト訪問者の流入元やWebサイト内での動きなどは、データ化されアクセス解析・分析が可能。訪問者が商品購入やお問い合わせなどを行ったかなど、設定した目標に辿り着いているのかいないのかもわかります。数値化できるためマーケティングの成果が分かりやすく、予算をつけやすい利点もあります。

 展開方法としては、Webサイトの立ち上げや、オンラインショップの開設など。他メディアに出稿するWeb広告などもあります。同時に、自社のサイトを検索エンジンで上位に表示させるためのSEO対策も欠かせません。SEO対策は、SEOマーケティングというひとつの手法でもありますが、Webサイトを保有している限りは必要な施策です。そのため、ひとまとめにしてWebマーケティングと呼ばれることが多くなっています。

SNSマーケティング

 SNSマーケティングは、InstagramやX、LINE、TikTokなどのSNSアカウントを用いて行われるマーケティング手法です。Webサイトとともに展開して相乗効果を狙った施策も多く、Webマーケティングの一種と言えます。

 Webマーケティングのひとつの施策でありながら、SNSマーケティングという手法として特化されているのにはワケがあります。SNSがファンの獲得・育成やブランディングに適しているためです。また、近年は商品やサービスについて調べ物をするときに、検索サイトではなくSNSを利用する人が増えている点も理由のひとつです。加えて、投稿記事のシェアが容易で記事の拡散力も高くスピードも速い。コメントがつけやすく、相互コミュニケーションも可能です。コメントがつきやすいため、顧客の声が集まりやすく、一般的なアンケートからでは見えにくい生の意見を聞くことができるメリットもあります。一方で、炎上しやすいといったデメリットや、長期的な視点での運用が必要といった点もあります。また、SNS担当者の資質に頼りがちになる点も注意したいところです。

 SNSマーケティングを実施するにあたっては、自社が扱う商品やサービスとSNSの相性を考慮する必要があります。Instagramは写真や画像を中心にしたSNSであるため、実際にモノがない抽象的なサービスや、写真映えしにくいモノなどとは相性が良いとは言えません。反対に、写真や画像を使ってブランドの世界観を伝えたり、飲食やファッション、インテリア、旅行関連などの訴求には高い効果が期待できます。

 SNSによって利用している年代や利用方法などが異なるため、使い分ける必要もあります。10代~20代に人気の高いInstagramやTikTok、10代~60代まで全体的に利用者の多いLINE。10代~40代とこちらも幅広い世代が利用しているX。全世界ではSNS利用者が最も多いものの、日本国内では30代~60代が中心となり、特に50代~60代の活用度が高いFacebookなど 、ターゲットに合わせた展開が必要です。

インフルエンサーマーケティング

 インフルエンサーはSNSなどにおいて多数のフォロワーを獲得し、大きな影響力を持つ存在。こういったインフルエンサーに自社の商品やサービスをPRしてもらうマーケティング手法がインフルエンサーマーケティングです。口コミを、より影響力の高い人にしてもらう手法と言えます。元々その分野に興味のある人がその分野で有名なインフルエンサーをフォローしており、信頼できる人からの口コミは信憑度がより高くなるだけに、効果が期待できます。展開方法としては、SNSマーケティングや動画マーケティングとの組み合わせが一般的です。

 インフルエンサーマーケティングを行うにあたり、最も大切なのは人選です。フォロワー数を見るだけではなく、インフルエンサーをフォローしている人たちが狙いたいターゲット層と一致しているかも確認しなければなりません。依頼するインフルエンサーと自社の商品やサービスとイメージがあっているか、紹介の方法が適切かなどもチェックが必要です。特に、広告宣伝であることを隠して行うステルスマーケティングは炎上などを招きやすく、逆効果となるので気を付けたいところです。

 なお、インフルエンサーを選ぶ際、フォロワー数は重要な指標のひとつ。フォロワー数が数十万を越えるメガインフルエンサーは芸能人・有名人が多く、商品やサービスのジャンルに関係なく拡散力は高くなります。比例して、コスト面も含めて依頼が難しくなります。フォロワー数が数万人ほどになると一般人も増え、料理やコスメなど特定のジャンルで人気のインフルエンサーです。このクラスはフォロワーとの距離も近く、フォロワーからのコメントなどの反応も多いため、ほど良い影響力と拡散力があると言えます。

デジタルマーケティング

 デジタルマーケティングは、デジタルの技術全般を活用したマーケティング手法。インターネットをはじめとした通信技術を利用するものが多くWebマーケティングと混同されがちですが、AI技術など必ずしもWebに関連するものだけではない手法も含まれています。簡単に整理するならば、デジタルマーケティングのうちの一部がWebマーケティングやSNSマーケティングとなります。

 ディスプレイなどの映像機器を活用するデジタルサイネージは、従来の看板やポスター以上の情報量をタイムリーに発信できる施策。動画なら、さらに高いキャッチ力が期待できます。最近では、デジタルサイネージに内蔵された顔認証技術を用いて、その人にあった情報やサービス、商品を提案できるようにもなりました。そのため、店内での接客ツールの補助やプラスのサービスとして利用される例も増えています。このような、双方向でのコミュニケーションがはかれる点も評価されています。

オフラインとオンライン双方のマーケティング手法

 ここまで、オフラインマーケティングとオンラインマーケティングに分けて紹介してきましたが、実際にはオフラインとオンラインの境目はつかなくなってきています。ここでは、その中でも特に住み分けが難しく、オフライン、オンライン双方のチャネルを活用できるものを紹介します。

ダイレクトマーケティング

 ダイレクトマーケティングとは、顧客に直接アプローチして購入などを働きかける手法で、郵送によるダイレクトメールやテレアポなどのオフラインでの展開の他、EメールやWeb広告の最適化などオンラインでの展開もあります。

 チラシを会員や見込み客、過去に購入した経験のある既存顧客に送付するダイレクトメールは古くからあり、通信販売などで利用されています。郵送費などのコストはかかるものの、オンラインショッピングが苦手な層は一定数おり、現在でもダイレクトメールはダイレクトマーケティングの主流です。

 Eメールを用いる場合は、ターゲットを絞り込むセグメントメール、会員登録した顧客に情報を配信するメールマガジン、ターゲットのニーズを想定してタイミングを見計らって複数回送付するステップメールなどが選択肢にあります。送付の際には文章内に顧客の名前を自動に差し込む技術もあり、より顧客との心理的距離を近づける効果があります。

 直接コメントをつけることができるSNSマーケティングもまた、ダイレクトマーケティングの側面があります。SNSマーケティングを展開する際には、どこまで個別対応をするのかをダイレクトマーケティングの観点から決めておくと良いでしょう。

 Web広告も現在はダイレクトマーケティングのひとつとなっています。顧客の属性や、検索キーワードなどに連動して広告を掲載できるためです。同様に、購買履歴やページの閲覧履歴などをもとにおすすめの商品やサービスの広告を掲載してクリックを促すレコメンデーションも、ダイレクトマーケティングとして分類される場合があります。

 いずれにしても、顧客データからターゲットを絞り込み直接アプローチするため、正確で詳細な顧客データが重要です。絞り込みの精度も上げていかなければ、受け取った顧客にとっては迷惑メールのような存在になってしまう危険性も。一方で、顧客とのコミュニケーションを重ねて、顧客のファン化が狙える利点があります。ブランディングも含めて、トータルでの戦略が必要です。

コンテンツマーケティング

 コンテンツマーケティングは、消費者にとって有益な情報(コンテンツ)を提供して自社のファンになってもらい、最終的に商品購入や申し込みなどの収益化につなげるマーケティング手法です。コンテンツの提供方法にはWebサイトやSNSなどのオンラインと、会報誌やセミナーなどのオフライン、どちらの方法もあります。

 Webサイトの場合は、自社サイトやWebメディアサイトを利用する方法があるほか、メールマガジンの発行、オンラインショッピングサイトやオウンドメディアを立ち上げる方法、会社情報全般を紹介する自社サイトと商品サイトを分けて情報を整理し充実化させていく方法もあります。どちらにしても、コンテンツへの流入経路は検索サイトやSNSなど。SEO対策や出稿も同時に検討し、予算やコンテンツマーケティングに割ける人材リソースなどを鑑みながら選んでいきます。

 ニーズに合った良い情報を提供し続けることができれば、ファンの醸成が期待できるコンテンツマーケティングですが、デメリットとしてコストがかかる、中長期的な運用が必要などが挙げられます。サイトの立ち上げになると初期費用とランニングコストが発生します。自社サイトに新しくコラムページを追加するなどのスモールスタートも可能ですが、更新作業を社員の通常業務に加えて任せると、社員の負担増とともに更新が後回しになり、新しい情報が追加されないサイトになる可能性もあります。サイトの定着、成長には数年単位の計画が必要であり、中長期的な戦略が必要です。

動画マーケティング

 映像コンテンツを活用した動画マーケティングは、1つの映像に込められる情報が多く、商品やサービスの魅力を理解してもらいやすいメリットがあります。CMや電車内の動画広告、デジタルサイネージなど、オフラインでも活用できる媒体があるマーケティング手法です。

 一方で、自宅にテレビを持たない人も増えています。そこで、多くの企業ではCMをWebサイトやYouTubeにもアップ。オンライン上でも動画を提供するなど、現在の動画マーケティングはオフラインとオンライン双方の展開が必須となっています。

 オンラインでの動画マーケティングは、YouTubeやTikTokなどのSNS型配信プラットフォームを活用したものが主流です。そのほか、InstagramやXでも動画が利用できます。特にInstagramにはテレビの生放送にあたるInstagram Liveがあります。YouTubeでもライブ配信が可能で、録画された動画にはない、ライブ配信ならではの展開も可能です。最近では動画を視聴しながら、動画で紹介されている商品やサービスを購入できる動画コマースという通販システムが登場。動画から直接売上に貢献できるようにもなっています。ライブ配信は事前につくり込む動画と異なり、低コストでできる点も注目されている理由のひとつです。

戦略・概念的なマーケティング手法

 マーケティングの施策的な手法の他、各手法を統括的にまとめて行う戦略、概念的なマーケティング活動も、マーケティング手法として名前が付けられています。

ブランドマーケティング

 ブランドとは、他のものと差別化し、区別をつけることです。企業が統一したメッセージを発信すると、企業や商品、サービスに一定のイメージが構築され、それらはロゴや名前、キャッチフレーズ、デザインなどと紐づいていきます。そのイメージが消費者の中で定着すれば、購入時の選択を左右するひとつになり、企業や商品、サービスを展開していくにあたって欠かせないものです。ブランドマーケティングはブランディングとも呼ばれ、メッセージを効果的に伝えるための戦略であり手法です。ブランドマーケティングを展開する場合、ターゲットに合わせて、これまでに紹介した各手法を組み合わせていきます。

 ブランドマーケティングを行う際に大切なのは、目標の設定です。イメージを定着させていくには中長期の期間が必要であり、何をもってイメージが定着したのかの判断は難しいところがあります。また、効果も目に見えて分かりやすいものではありません。ブランドマーケティングが成功したから売上が向上したという関係性を明確にするのは難しいでしょう。マイルストーンを置き、その時々の目標に併せて展開していくことが肝要です。

オムニチャネル

 オムニチャネルは、オンラインショップやSNSなど企業が持つ複数の販売チャネルの会員情報をはじめとしたデータを統合し、販売機会を逃さないようにするものです。

 リアル店舗とオンラインショップの会員情報データが統合されれば、消費者はオンラインショップで購入したものを実店舗で受け取る、実店舗で売り切れだったものをオンラインショップで注文できる。どちらの場合でも、配信されたクーポンを使用したり、ポイントを貯めたりといったチャネルを横断した購入体験が可能です。そしてその体験は、企業から見れば機会損失を防いだ売上アップにつながります。加えて、企業側はこれまでバラバラだった購入データが統合されるため、精度の高い顧客データの収集が可能になります。

 データ統合にはシステムの改修や新たなシステム構築が必要となり、コストがかかります。しかし、ここを統一しない場合はオムニチャネルといえません。メリットも半減します。顧客にとってはどちらで買うのがお得なのかがわからず、ポイントシステムも別々となればデメリットしかないため、逆効果です。狙いはあくまでも顧客体験の向上に置くべきでしょう。

O2Oマーケティング

 O2Oマーケティングは「Online to Offline」の略で、自社サイトやSNS、Web広告、アプリなどで集めた見込み顧客であるユーザーをリアル店舗へ誘導するマーケティングです。WebマーケティングやSNSマーケティング、コンテンツマーケティングなどでファンとなってくれたユーザーに、顧客になってもらうための施策であり、オンラインショッピングが一般化した中で、改めて消費者にリアル店舗へ足を運んでもらうために生まれたマーケティング手法です。リアル店舗に足を運んでもらうきっかけとして、店舗で利用できる割引クーポンをアプリで配布するのは、その最たる事例でしょう。

 O2Oマーケティングで呼び込んだ顧客は、データを介して効果測定が容易になります。また、期間限定のクーポンであれば、即効性の高い来店を誘導できるほか、来店客数の少ない時間帯や曜日、時期の需要喚起も可能です。新規顧客の獲得だけではなく、再来店率を向上させて、リピーターの獲得も見込めます。

OMOマーケティング

 「Online Merges with Offline(オンラインとオフラインの融合)」の略であるOMO。オムニチャネルが販売機会を逃さないよう消費者が複数のチャネルを行き来できるのに対し、OMOマーケティングは消費者に「オンラインショップで購入した」「店舗で購入する」などの意識をさせない購入体験を提供するものです。オムニチャネルの手法では、消費者は店舗で商品が売り切れていた場合、オンラインショップに訪問して購入手続きを行います。しかしOMOマーケティングの考え方では、店舗で売り切れていても消費者側がオンラインショップを調べなおさずに在庫があれば、その場で購入が可能。商品は後日配送または受け取りになりますが、消費者は購入のために訪れることが1回で済むメリットがあります。さらに、キャッシュレス決済が進む中国では、商品棚から会計作業をせずに持ち帰ることが可能な事例も登場しています。

 ここまでは消費者側の体験の話ですが、企業側はそれらを実現するためには、オンラインショップとリアル店舗で分けていた在庫管理の統一など、裏側のシステム統合が必要です。これらを含めて、顧客の利便性向上や良質な顧客体験を提供することがOMOマーケティングです。

AIを活用したマーケティング

 これまでの各マーケティング手法を見ると、そのほとんどで顧客データが大きなポイントになっています。集めた顧客データは活用しなければ意味がありません。しかし、データは膨大な量になり、従来の分析手法だけでは分析しきれなくなっています。そこで必要となるのが、AIを用いた分析およびマーケティングです。まずは、マーケティング分析にAIを使うことから始めてみると良いでしょう。

 そのほか、商品のレコメンドや価格の最適化、購買履歴などに合わせた個別のクーポン掲示などにもAIは有効です。Web広告の最適化やSEOなどにも力を発揮します。また最近では、AIによるチャットのカスタマーサービスも増加。よくある質問を中心とした簡易な問い合わせはAIが対応し、より高度で複雑な問い合わせを人間が対応するように住み分けると、サービスの質の向上はもちろんスタッフの負担軽減にもつながります。

 AIの技術進歩は速度が速く、次々と新しい活用方法が生まれています。難しそうといったイメージにとらわれず、積極的に活用していくと新たなマーケティングのヒントになりそうです。

まとめ

 マーケティング手法は細分化され、ここで紹介したものはほんの一部です。そして実際にマーケティングを展開するには、複数の手法を組み合わせていく必要があります。戦略的に、メインにする手法の確定は必要ですが、広く様々な手法を検討し、商品やサービスに合うマーケティングを展開していくことが大切です。

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マーケ研究所(マーケケンキュウジョ)

 マーケティングに関する情報を調べ、まとめて届けています。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/10/04 12:59 https://markezine.jp/article/detail/46915

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