「広告感」に敏感な若年層に、メッセージを届ける勝負所とは
MZ:昨今の企業のSNS担当者の悩みとして多いのは、どのようなことですか。
平田:Z世代や高校生のユーザーに「広告感」を拒まれることですね。実は、ユーザーの視聴秒数には“壁”があります。まずは冒頭の「2秒」を見ていただくかが勝負所です。
私たちも冒頭の見出しは効果音を入れてキャッチーにするなど、物理的なフックを作る工夫を凝らしていますね。その後はデータをもとに冒頭からの視聴秒数を突き止め、逆算して「この秒数以降にPR内容を反映させる」といった構成を作っています。
視聴完了率を上げるために、ユーザーのコメントと照らし合わせながら離脱ポイントや反応内容、コメントが多く来る箇所なども分析しています。
オン・オフの話題化で一気にリーチを拡げる
MZ:若年層に受け入れられるためのクリエイティブのポイントは何でしょうか。
平田:まずは「会話を生み出す余白を作る」ことです。かつては、テレビ番組の内容や予告が感想や考察を生み、翌日の学校で話題になりました。縦型動画がトレンドとなった今も、同じことがオンラインとオフラインで起きています。
Z世代は同じコミュニティ内で会話量を増やすことで、トレンドに強く紐づく傾向にあります。全国の女子高生にヒアリングしても、「動画の内容を友達同士で考察している」との声もありました。SNS上で議論や考察を活性化させ、さらにその内容を翌日以降に学校などリアルな場でも話してもらうサイクルが作れれば、話題化していきます。オンラインとオフラインの会話を通して、集団でリーチを拡げられるのはZ世代ならではの特徴だと感じますね。そのためには、会話やコメントをしたくなるポイントを動画内に意図的に入れ込むことが重要です。
MZ:若年層に支持され、共感されるクリエイティブを企画するコツも教えてください。
平田:ポイントは2つあると考えます。1つ目は「今」をリアルに捉えることです。私たちも高校生へのインタビューを通して、ユーザーが今、どんなことにどんな温度感で共感しているのか、常に認識をアップデートしながら企画に落とし込むようにしています。またユーザーがどこでどう共感したのかを知るために、コメント欄もよく確認していますね。
2つ目はユーザー自身が「自分を投影できる部分」を残すことです。憧れの要素だけを強くせず、動画の出演者との共通点を作ることで、親近感がわくように企画しています。

MZ:コメントを意図的に生み出す動画設計も可能なのでしょうか。
平田:はい。企画の際に「ここは絶対にコメントされる」という点をいくつか洗い出しておいて、この要素をポイントの秒数にはめ込んで構成を作っています。このような「ここが反応ポイント」という場所をユーザーにわかりやすく配置するといった工夫は、テレビのバラエティ番組やYouTubeの構成とも共通点があるのではないでしょうか。
MZ:短い動画なのでテンポも重要ですよね。
平田:そうですね。細かく数秒や数コマ単位で調整しています。「オチ」をわざと序盤に持ってきて引きを作るなど、構成もショート動画の特徴を意識してメリハリをつけています。