他コンテンツとの違いは「冒頭の数秒」と「中身の濃縮度」
「ショート動画は生活者にとって、新しい情報やトレンドの発見ができるメディアの役割を担っています」。電通デジタルでチーフメディアリサーチャーを務める天野彬氏はそう語る。「タイパ(タイムパフォーマンス)という言葉も流行りましたが、特に若年層においては、効率よく情報を得られるショート動画が重宝されています」(天野氏)。

東京大学大学院学際情報学府修士課程修了(M.A.)。SNSマーケティングや若年層のトレンドに関するリサーチ・コンサルティングを専門とする。著書に『新世代のビジネスはスマホの中から生まれる ショートムービー時代のSNSマーケティング』(世界文化社刊)
LINEリサーチのショート動画に関する調査によると、ショート動画をほぼ毎日見ている人の割合は10代で7割を超え、20代で約6割、30~60代では3~4割が利用しており、生活者に広く浸透していることがわかる。ショート動画の広告活用に詳しい鈴木悠真氏も「若年層だけでなく消費者全体に定着してきている」と説明する。

SNSマーケティングにおける広告領域、プランニング・コミュニケーション領域、データ領域の統合的なビジネスプロデュース業務に従事
ショート動画は他のコンテンツとどのような違いがあるのだろうか。「ショート動画の特徴は、結論が最初にわかる『タイパ型』という構造にあります」と天野氏。ユーザーは冒頭の数秒程度で視聴するかどうかを判断するため、最初のアテンションをいかに掴めるかが重要だという。
鈴木氏も、ショート動画の「驚くべき消費スピード」について補足する。興味がなければすぐにスワイプし、興味があれば止まる。企業では、このスピード感の中で視聴者の手を止めるための工夫が必要である。
エンタメからインフォメーション、そして高品質コンテンツへ
企業のSNSアカウント運用や活用提案に携わる金丸洋子氏は「ショート動画は静止画や長尺動画と比べて『情報が濃縮されている点』が大きな違い」だと強調する。短い時間の中に多くの情報が詰め込まれていて、テキストでは表現できないニュアンスや複雑な感情を効率的に伝えられるのがショート動画の特徴の1つだ。

ソーシャルメディア領域のオウンドメディアを中心に、マーケティング課題解決のためのコンサルティングを行う
ショート動画を利用するユーザー数が増えていく中で、コンテンツの幅も年々広がりを見せている。初期は「踊ってみた」「歌ってみた」などの自己表現を中心としたエンターテインメントが中心だったが、役立つ知識や学びがある情報を提供するインフォメーションへと移り変わり、現在はショートドラマなど60秒以上の中尺動画といったより高品質なコンテンツを求める傾向にあるという。

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「2020年以降ファッション、料理、ペットなどのライフスタイル系や、考察系、知識系、教育系といわれる情報が増加し、実用的な情報が人気を集めるようになりました。これらのジャンルはコンテンツが作りやすいため参入者も増えました。そして2024年より、高品質なコンテンツを求める消費者が増えていることから、今後、コンテンツの“研ぎ澄まし”が進んでいくと考えています」(天野氏)