Owned Mediaでマーケティング価値の約6割を生み出せる時代に
今年のad:tech tokyoのKeyNote「顧客創造のいま」では私もかつて同僚だった日本コカ・コーラのマーケティング本部 IMX(インテグレーテッド・マーケティング・エクスペリエンス)事業本部長の今西周氏が、電通 統括執行 役員の深田欧介氏、電通 ゼネラル・マネージャー 小宮広高氏と登壇した。
小宮氏がコカ・コーラはイベント、製品パッケージや自販機なども含め70あるOESPのマーケティング効果を図る仕組みがあるという説明をした後に、今西氏は衝撃的な事実を語った。
「我々もまだ学んでいる最中なのですが、かなり実験的な分析をして、発見がありました。世界的に見ると、製品そのものやパッケージデザイン、自社サイト、ブランドの公式アカウントといった我々が保有しているアセットから、マーケティング価値の約6割が生まれているということがわかってきたんです。もちろん、お金を払うペイド広告で認知を広げていくことも引き続き大切です。これからはOESPのすべての接点、すなわちタッチポイントをしっかり活用して、統合的なマーケティングの価値を作っていくということが改めて大事だと再認識しています」(日本コカ・コーラ 今西氏)
私自身、2000年代より長年に亘りデジタルマーケティング、ブランドサイトなどの台頭にあたり「Owned Mediaを主軸に据えるべき」と主張してきたが、今年のad:tech tokyoはそれが“理想論”ではなく“実装論”として語られ始めた節目に見えた。
ちなみにOESPは「Owned Media」「Earned Media」「Shared Media」「Paid Media」の略であり、2010年ごろにデジタルの発達とSNSの台頭によりコカ・コーラでできた概念である。そしてなぜこの順番になっているかというと「投資検討の順番」がOESPだからである。
マーケティングの全体のプランの中でまず自社所有のOwnedを活用し、報道やSNSなどEarnedを設計し、店頭などのSharedを実施した後に、他では得られない足りない部分をPaidでバイイングするという順番を示しているものであった。Ownedで60%のマーケティング価値をカバーできるということは、このIMCの概念は最近になってまた大きく成果が出る手法として機能しているのだろう。

