正解がないことをポジティブに捉えてほしい
田岡:後編では、キャリアの話を聞いていきたいと思います。僕も木村さんも、大手企業を辞めて若いうちに起業していますが、木村さんはなぜそのキャリアを選んだんですか?
木村:僕は将来的に独立して、自分でビジネスをしたいと考えていたので、これまでのキャリアは目標の達成に向けて必要なプロセスだったと捉えています。
木村:企業に所属して働く以上は、その中で自分のパフォーマンスを最大化して、その延長線上にブランドや企業の成長が存在しています。一方、独立した今は自分の能力とアウトプットが自社とクライアントの売上や利益にダイレクトにつながります。僕は、できるだけ早く独立することによって、最先端の幅広いマーケティングをクライアントと共有できると考えたんです。それが日本の経済を良くしていくために必要だと感じました。
若い読者にはぜひポジティブに捉えていただきたいのですが、マーケターのキャリアプランニングに“正解”はありません。大企業でメガブランドを担当しても、自社のマーケターがタッチできる範囲が限定的なケースはありますし、スタートアップで新しい事業に携わっても、戦略寄りの施策が先行するケースは少なくありません。変化が激しい上に雇用も厳しい今の時代、ブランドマーケターは総合力が試されていると思います。「どんな商品・サービスでも成長させられるんだ」くらいの気持ちで、粘り強く幅広い仕事を経験することが大事なのかなと。
田岡:僕も木村さんと同様、学生時代から起業する意思を持っていました。就職してブランドマネージャーやCMOを経験するうち「経営にはマーケティングの本質が詰まっている」と感じるようになり、独立に至った流れです。
僕が就職活動に励んでいた頃は、外資系企業か日本の大手企業でマーケティング職に就いて、いずれ責任者になるキャリアがマーケターのいわゆる“王道”だと想像していました。ところが今は、マーケティングを職種ではなく職能として捉えています。「マーケティングを駆使して何ができるか」を考えることに重きを置いているんです。
たとえば採用マーケティングやインナーブランディングは大きな可能性を秘めた領域ですよね。マーケティングがカバーする範囲は幅広いですから、スキルを磨けば何でもできる時代とも言えます。マーケターとしてのキャリアプランに悩まれている方はまあまあ多いと思いますが、キャリアの自由度は高まっているはずです。自分の持っているスキルに、解決したいイシューを掛け算すれば、可能性は無限大だと思います。
木村:事業会社でキャリアを積んだマーケターが独立した先に、外部顧問やアドバイザリーのような立場でマーケティングに関わる道もあると思います。僕自身「ユニリーバで日本法人のトップになってから独立したほうが、仕事がたくさん舞い込むのでは?」と、いろんな人に言われました。ただ、僕は常に新しいマーケティング手法を開発したい性分で、結果にコミットしたい思いも強かったから、事業会社さんと一枚岩になり、より影響力を発揮できる形で成果を残そうと決めたんです。
田岡:めっちゃわかります。アドバイザリーという関与の形もあるとは思いますが、戦略の本質が実行に詰まっている以上、一緒に汗をかいたり現場に足を運んだりする姿勢が重要だと僕も感じます。HOWが突破できて初めて真のグロースが見えてくるので。
木村:本当にそう思います。