日本企業に多いブランディングの誤解
田岡:木村さんはユニリーバ、僕はネスレとWeWorkを経て、今は企業のマーケティングを支援する立場じゃないですか。グローバル企業と日本企業でブランディング観にギャップって感じますか?
木村:グローバル企業では、ブランディングとマーケティングをニアリーイコールで捉えていると思います。一方の日本企業では、なぜかマーケティングの“後に”ブランディングを実行する考え方が浸透している印象です。
木村:たとえばグローバル企業の場合、テレビCMを流すにしてもWeb広告を配信するにしても店頭で施策を打つにしても、そのマーケティング施策が「ブランディングとして成立するかどうか」「ブランドとして間違っていないか」「ブランディングの効果が見込めるか」などの視点で検討します。
田岡:確かにそうですよね。
木村:日本企業、特にスタートアップ企業では「マーケティング施策をひととおり実行して効果が頭打ちになってきたから、そろそろブランディングをやったほうがいい」といった言説が多いので、その点が大きく異なる気はします。
田岡:「ブランディング=ブランド認知を高めること」みたいなイメージは強いですよね。ただ、マーケティングとブランディングは本質的に表裏一体。あらゆる活動はブランディングでもあり、マーケティングでもあるかなと。
木村:日本ではブランドという言葉にラグジュアリーやプレミアムな印象を持つ人が多いからか、その印象に引っ張られた結果、ブランディングのアウトプットが「かっこいいロゴをつくる」「価格を上げる」「今あるものを洗練させる」になってしまうのかもしれません。
お金の使い方としては決して間違っていないと思うんです。マーケティングをしっかりやって、営業もしっかりやって、その先でブランドイメージを確立していく──そういうアプローチもナシではありませんが、最初からブランディングを意識してサービス・プロダクトを開発したほうが効率はいいと考えます。