「ブランディングは短期で成果が出ない」のか?
田岡:木村さんに聞いてみたかったことがあるんです。「ブランディングは短期で成果が出ない」みたいな言説があるじゃないですか。木村さんはどう考えていますか?

木村:僕は短期で成果が出ると思っています。なぜなら、ブランディングを重要視しているP&Gやユニリーバ、ネスレなどのグローバル企業ほど、年間のP/Lへのコミットメントが強く求められるからです。よく「ユニリーバさんは2、3年先を見据えているから、ブランディングも中長期の成果に向けた取り組みなんですよね?」と言われるんですが「いやいやいやいや」と(笑)。
田岡:将来だけを見据えたブランディングなんてないですよね。
木村:もちろん中長期的なブランド戦略は作成しますし、そこに向かって歩みは進めますけど、今年の数字を上げられなければ自分の立場やキャリアが危うくなるようなシビアな世界です。毎月・毎年の数字にコミットが求められる状況で「じゃあブランディングじゃなくてマーケティングをやろう」という発想にはならないですね。
田岡:僕もまったく同じ考えです。短期で成果が出ないブランディングは、WhoかWhatが間違っていると思います。
木村:たとえば、めちゃくちゃ美しくてクオリティが高いテレビCMを1億円かけて制作しても、そのCMのメディアプランニングに2,000~3,000万円しか投じていなければ、十分に届きませんよね。メディアに投下しなければ認知は広がらないし、認知が広がらなければ購入に至るわけがない。一見すると刈り取り型のマーケティングのほうが効果は高いと感じますが、ブランディングでもファネルを広げれば最終的には成果が出るはずです。そこまでの期間をどう捉えるかという話な気がします。
田岡:そもそも、短期で成果が出ないものは中長期でも成果が出ないと思うんですよね。生活者の立場で考えると、さっき見たものを「いい」と思って行動に移さなければ、1、2年後に行動することはほぼないです。積み重なることはあるにしても。
木村:「実行した施策が半年後に効いた」みたいな経験は一度もないですね。田岡さんがおっしゃるように、ブランディング施策は積み上がりやすく、刈り取り型の施策が消費されやすいとは言えると思います。かけた投資を回収して売上につなげる場合は3ヵ月、長くても6ヵ月のタームで経過を見ないとだめですね。
田岡:外れる施策はあってしかるべきです。大事なことは何回か打席に立って「これはめちゃくちゃROIが合うな」「事業成長につながるな」と思える勝ち筋を見つけることだと思います。