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第106号(2024年10月号)
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MarkeZine Day 2013(AD)

ビッグデータ時代の顧客起点マーケティング実践事例を紹介!分析を駆使し、成果を挙げるプロセスに迫る

 今や生活者には、さまざまな購買チャネルが用意され、購買までのプロセスも多様化している。「その中で価格競争に陥らず、自社商品を選んでもらうには、深い顧客理解に基づいたカスタマーエクスペリエンスを提供することがカギになる」と、SAS Institute Japanの片桐佳江氏。10月4日に行われたMarkeZine Day 2013では、それを実現する詳細なステップが解説された。

アナリティクスこそ、データから知見を掘り起こし、価値を生み出すカギ

 昨今、デジタル領域の進化によって、顧客理解に役立つデータが爆発的に増えている。だが、データを貯めておくだけでは、何の意味もない。

SAS Institute Japan株式会社 マーケティング&ビジネス推進本部
フィールドマーケティング・グループ 部長 片桐佳江氏 

 「データを正しく効率的に分析し、知見を掘り起こすことで、自社ならではの価値あるカスタマーエクスペリエンスを提供する必要があります」と語るのは、SAS Institute Japan マーケティング本部 フィールドマーケティング・グループ シニアマネージャーの片桐佳江氏。「アナリティクスが加速する顧客起点マーケティング戦略~先進企業が『分析』を駆使する理由」と題した講演にて、価値を生み出す分析のステップを詳細に紹介した。

 米国を本拠地とするSAS Instituteは、ビジネス・アナリティクス・ソフトウェアとサービスのリーディングカンパニーとして、設立以来の増収増益を続けている。平均して売上高の24%を研究開発に投じており、最先端の技術によって日本では分析ソフトウェアのシェアNo.1を誇っている。

以下、講演資料より抜粋
出典:NUCLEUS RESEARCH “THE STAGES OF AN ANALYTIC ENTERPRISE”
(2012年3月、Analytics導入企業60社に対して調査)

 片桐氏は、データ分析が生み出す効果について、上記の調査結果を掲げる。「単なるレポートの自動化だけでも、平均してROIが188%に伸長し、部門内の意思決定に分析を活用したり、部門横断的に活用したりするにつれて飛躍的にROIが向上することが分かりました。最終的に社外データまで取り込み統合することで、ROIが1,209%向上するという結果が出ています」

米国百貨店事例:「オムニチャネル化」でマーケティング効果数億円増

 実際にデータ分析によって大きな成果を上げている企業の事例として、片桐氏は米・高級百貨店「MACY'S(メイシーズ)」を挙げる。店舗に加えてカタログ通販やECなども展開する同社は、チャネルが複数にまたがるがゆえに「本当の優良顧客が誰なのか」をつかめていなかったという。

 そこで同社はSASの分析ソリューションを導入し、顧客データベースを統合。優良顧客や、見込み優良顧客像を特定できるようになった。加えて、すべての顧客接点を連携させることで「オムニチャネル化」を実現し、マーケティング効果を数億円単位で改善させた。

 「『マルチチャネル化』という言葉は従来からありましたが、これは単にチャネルの多様化という意味で使われました。一方『オムニチャネル化』は、チャネル横断的な顧客管理、およびそれに基づくコミュニケーション設計を行うことを意味しています」と片桐氏は解説する。顧客がどう買い物をしているか、その実態や視点をベースに施策を展開する“顧客起点マーケティング”を実現することで、大きな成果を得られたというわけだ。

 顧客起点マーケティングを成功させるポイントとして、片桐氏は4つを挙げる。「まず、1.質の高いデータ取得が必要です。次に、2.そこから知見を見つけ出す分析環境。そして、3.より高いROIを目指すための最適な組み合わせを導き、最後に4.施策の結果を検証し次の施策に活かす仕組みを立てていきます」

アナリティクスで顧客起点マーケティングを実現させる!

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データを高価値な顧客情報にする3つのポイント

 前述の4点を加味してマーケティングを行う際、以下のプロセスを経ることになる。

 それぞれについて、どのように行うべきかが語られた。最初のステップ「顧客データの収集統合」について、「実はこのステージが最も重要」だと片桐氏は切り出す。「顧客分析の世界でよく使われる言葉に“Garbage In, Garbage Out”というものがあります。価値の低い顧客データからは、質の悪い分析結果しか得られないという意味です」

 そのため、まず高価値のデータを用意するために、属性や行動履歴など幅広い種類の顧客のデータを集めること、データ間の不整合などを修正し顧客ごとに1行のデータにまとめること、常に最新の情報を統合しておくこと、の3点が重要になる。

【高価値な顧客情報を用意する3つのポイント】
1.幅広い顧客関連データを集める(深い顧客情報)
2.データを適切な形式にする(高品質・高付加価値な顧客情報)
3.生データをスピーディに統合する(最新の顧客情報)

 特に今、ビッグデータという言葉が広がりつつあるように、得られる顧客データの種類が著しく増えている。属性や購買履歴はもちろん、オンラインの行動履歴、プロモーション施策への反応状況、それから注目すべきは「センチメントデータ」と呼ばれる感情にまつわるデータだ。「SNSに書き込まれたものやコールセンターに寄せられたクレームなども、統合することでより深い顧客理解につながります」と片桐氏。

流通業事例:精度の高い分析を通して休眠顧客を活性化 

 2つ目のステップは、「顧客分析と行動予測」だ。実際に分析を進めるステージでSASが推奨しているのは、精度の高いセグメンテーション。優良顧客から休眠顧客まで、顧客の状況を把握することでそれぞれの特性が分かり、優良顧客の育成や離反の防止がしやすくなる。

 また、行動予測とは、過去の顧客データを分析し抽出した特徴を現在の顧客データに当てはめて、見込み顧客を洗い出すことを指す。例えばある流通業では、優良顧客の分析の結果、「グルメ・料理」に関心がある人の中ではお節料理の購買がリピートのポイントになっており、その人たちは過去に1万円以上を購入している女性が多いことが分かった。

 そこで、休眠顧客の中から同じ条件を持つ人だけを抽出し、ピンポイントでお節料理のキャンペーン案内を行ったところ、大いに活性化につながったという。

 3つ目のステップで、いよいよキャンペーンを実行していく。ここで考えるべきは「4W・1H」と片桐氏。「Who:誰に、What:何を、When:いつ、Which Channel:どの手段で、そしてHow Often:どのくらいの頻度でアプローチしていくのかが、キャンペーンの設計要素になります。これを、統合した顧客データの分析や、優良顧客の育成戦略などに基づいて導き出します」

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効果検証に必要な2つの視点

 そして最後のステップは、効果検証。多くの企業において、キャンペーンは1種類を実施して終わりということはない。複数の施策を組み合わせ、その都度に効果を検証して改善するというPDCAのサイクルを速く回していくことで、全体のマーケティング効果の最大化が可能になる。

 「ここでは主に2つの視点が必要になります」と片桐氏。例えばメールマーケティングなら開封率やクリック率、コンバージョンなど、各施策の数字をKPIで評価する短期的な視点。次に同じような施策を展開する際には、その結果がノウハウとして利用できる。

 もう一つは、長期的な視点だ。例えば先のステップで整備した各顧客セグメント層の増減や、会員数の目標値にどれだけ近づいているか、ギャップなどを常にモニタリングし、マーケティングの特にどの部分に予算を投じていくべきかを戦略的に判断していくことが重要になる。

 以上、顧客データの収集統合から効果検証まで、ビッグデータ時代に対応した“顧客起点マーケティング”の実践が解説されたが、当然ながらこれらを手動で行うことはとても無理である。さらに言えば、IT部門などの専門チームしか扱えないソフトウェアでは、社内フローの点で余計な時間がかかり、スピーディーな展開ができない。

目先の目標達成だけでなく、その先にあるデータ分析のメリットを見通す

 そこで片桐氏はソフトフェア選択のポイントについて、下記の4点を挙げる。

【ソフトウェア選択の4つのポイント】
1.分かりやすいインターフェース
2.高度な分析技術
3.データ統合・準備および分析プロセスの共有を促進する仕組み
4.各ステップをシームレスに連携した統合基盤

 特に1について、「複雑になりがちなコミュニケーションのフローを誰にでも分かる形で整理することで、担当者が変わっても過去の資産を活かせるようになります」と解説する。

 例えばある地方銀行では、同一ソフトウェア上でデータ整備からグラフィカルなキャンペーン設計までを行えるSASのソリューションを用いて、新人とベテランで差が生じがちだった営業業務をデータ分析により支援。経験が浅くても、退職金の振込みなどの顧客のイベントに基づいた適切な営業ができるようになり、マーケティングノウハウの共有も促進された。

 「データ分析にこれから着手するなら、まずは外部コンサルティングサービスの活用がスムーズですが、データ分析で得られる知見は会社の重要な資産なので、ゆくゆくは社内で分析できる人や組織を育てることをお勧めします。そのためにも、施策立案やノウハウが属人的にならず、共有できるソフトウェア選びが重要です」と片桐氏は強調する。目先の目標達成だけでなく、データ分析の先に生じる長期的なメリットまで見通せる講演となった。

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

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MarkeZine(マーケジン)
2015/06/18 15:59 https://markezine.jp/article/detail/18625