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Yahoo!広告活用の今を追う(AD)

チャネル横断的にデータ連携・活用が可能な
プライベートDMPで行うリアルタイムマーケティング

 「マーケティングイノベーション室」の設立、広告ソリューションのリニューアルと、近年まさに“爆速”を感じさせるドラスティックな変革を続けているYahoo! JAPAN。本連載では、最新のテクノロジー事情を交えて、今後のマーケティングの展望や課題を掘り下げていく。今回は、2013年11月にヤフーとの業務・資本提携が発表されたBrightTagの山﨑友敬氏を招いて、ビッグデータ活用を強力に推進するプライベートDMPの可能性を探った。

ヤフー株式会社 マーケティングソリューションカンパニー 
ディスプレイ広告ユニット ユニットマネージャー 高田徹氏(写真左)
BrightTag, Inc. Senior VP, APAC 山﨑友敬氏(写真右)
ヤフー株式会社 マーケティングソリューションカンパニー ディスプレイ広告ユニット ユニットマネージャー 高田徹氏(写真左)BrightTag, Inc. Senior VP, APAC 山﨑友敬氏(写真右)

データ活用をメーンとしたソリューション事業に本腰

 MarkeZine編集部(以下、MZ):昨年11月、ヤフーさんはこれまでの広告面やプラットフォームの提供に加え、ビッグデータとテクノロジーを駆使したマーケティングソリューション事業を展開すると発表されました。まずはこの背景からうかがえますか?

 高田:ヤフーはメディアビジネスを16年続けてきて、メディアとしてはおかげさまで成長しましたが、一方で近年はユーザーの接触メディアの分散が課題になっていました。デバイスもPC、スマホ、タブレットと3種がスタンダードになり、平たく言えば「ユーザーがどこにいるのかいまいち分からない」状況になっています。

 そこでユーザーをあらためて捉えるために、さまざまな場所に分散したデータをひもづけることが必要だと考え、データ活用を中心に据えた戦略を打ち出すに至りました。

 MZ:11月にはそれぞれ専門性の高い計5社との協業も発表され、その一つがBrightTagでした。具体的な協業の内容は?

 高田:同社とは昨年春にサービスの上で提携してYahoo!タグマネージャーを提供し始め、すでに2,000社以上に導入されています。今回はその提携を拡大し、スマホアプリやPOSシステム、CRMなどのブラウザー以外のデータソースからデータを取得する技術「BrightTag Fuse」を追加採用したプライベートDMPを開発します。

データを“ためる”から “つなげる”へ

 高田:キーワードは「“ためる”から“つなげる”」です。データはためておいても1秒ごとに資産価値が減っていくので、ためるよりつなげることに焦点を当てて、リアルタイムでマーケティングに反映していきます。BrightTagとの協業も、その点でビジョンが一致したので、スムーズでした。

 MZ:もともとBrightTagとは接点があったのですか?

 高田:同じ業界にいる者として注目はしていました。2012年、たまたまBrightTagのセミナーが開催されると知りました。そのセミナーへ参加してその場でパートナーシップを直談判したのです。その後にアジアの窓口として山﨑さんが参画され、密にやりとりをするようになりました。

 MZ:あらためて、どのような会社なのか教えていただけますか?

 山﨑:BrightTagはシカゴをベースにしたスタートアップで、2010年に創立者のマーク・キベン、現CEOのマイク・サンズ、現CTOのエリック・ルントの3人がサービスを立ち上げました。3人ともシリアルアントレプレナーで、デジタルマーケティング業界で豊富な経験と実績をもっています。例えば、エリックはBrightTag参画前にFeedBurner社を創業し、現在もTwitterのシニアテクニカルアドバイザーを務めています。

 タグマネジメントサービス自体は2007年ごろからありましたが、創業当初から、ブラウザーで動作するJavaScriptのタグを超えた広い視野でデータを捉え、より良く、速く、拡張性のある形でデータを収集し、それをマーケティングにつなげる新しい仕組みを世の中に提供することを目指して、サービスをスタートしました。

リアルタイムでアクションを起こせる技術「BrightTag Fuse」

 MZ:先ほど「Fuse」という技術が挙がりましたが、この導入が今回の提携拡大のポイントなのですね。

 山﨑:そうですね。ブラウザだけでなく、スマホアプリやCRM、POSシステムといったあらゆるチャネルからタイムラグなくデータを収集し、マーケティングにつなげる活用できる技術です。私が昨年2月に当社への参画を決めたのも、リアルタイムでチャネルやデバイスを横断してマーケティングアクションを起こせる点が、チャレンジングであり今後の可能性を秘めた領域だと思ったからです。

 高田:リアルタイム性は、今後のマーケティングに欠かせないと考えています。この精度を高めることで、まるで対話をするかのようなユーザーとのコミュニケーションが可能になります。

 こうして生で会話をしていて、例えば私が3秒も沈黙したら相当な違和感がありますし、会話の流れも止まりますよね。それと同じで、せっかく瞬時にユーザーのデータを取得できても、それらをつなげて新しいメディアプランを立てるのに2か月も3か月もかかっていては、データの価値を毀損してしまいます。

 MZ:まさに会話のようなリアクションを実現すると。

 高田:リアクションは早ければ早いほどいい。マーケティングは本来、そういうことを目指す活動だと思います。教科書通りの言葉遣いのようですが、オムニチャネルでリアルタイムのワントゥワンマーケティングが可能になるのです。

日本でのオムニチャネルの展開は世界に先駆けた事例に

 MZ:チャネルをまたいだデータの連携ができるようになると、例えばビデオ広告で反応が高かったクリエイティブをメールマーケティングに応用する、といったことが簡単に瞬時に可能になるわけですか?

 高田:そうですね。それに、広告ツールの数だけデータソースがある状態と比べると、当然ながらコスト削減にもなります。個別のテクノロジーに頭を悩ます必要もありません。マーケターとして「誰にどんなメッセージを送るべきか」を考え、その実現に注力することができます。

 そうして生まれたクリエイティブは、広告というより情報やエンターテインメントに近い、顧客に役立つものになると思います。

 山﨑:チャネルごとにマーケティングのセオリーや手法は進化してきましたが、今までは個々に閉じていて、それらをスムーズに連携させるのは難しかったのが実状です。ようやく今、技術の進化とともにそこに着手でき、チャネルをまたいだソリューションが提供可能になりました。特に今回ヤフーと提携することで、アメリカでも実現していない規模の事例が得られると期待しています。

 MZ:日本市場での展開が、世界に先駆けた事例になるということですか?

 山﨑: ええ。アメリカはメディアが分散しているので、ヤフーのような存在がありません。日本におけるヤフーのリーチとビジネス規模に、われわれの技術が掛け合わされれば、大きなシナジーが生まれると思います。

アメリカでも関心高まる、リアルな場との連携

 MZ:アメリカのクライアントの状況や課題などは、日本市場と違いますか?

 山﨑:先ほど挙げた、メディアが分散しているという違いはありますが、クライアントの課題は割と共通していると思います。向こうでもオムニチャネルでの展開への関心が高いですね。

 われわれはもともとタグマネジメントサービスを提供しているので、やはり最初はECやリテール、旅行関係のクライアントが多く、オンラインマーケティングで集客するケースが中心でした。それが最近では、チャネル横断的な展開ができるFuseの確立もあって、リアルな場との連携に関心が高まっている状況です。

 例えばアメリカでも日本と同じようにスマートフォンが拡大しているので、スマホアプリや店舗、あるいはCRMの上でどのように連携してエンゲージメントを強化するかという点には、今後特に注目が集まると思います。

 MZ:今回の提携による日本の事例を参考に、海外への逆輸入もあり得そうですね。

  山﨑:ええ、それも視野に入れています。リアルタイムのタグマネジメントがわれわれの事業の第一のベース、Fuseを使ったオムニチャネル展開が第二のベースと考えており、今回の提携で実現するFuseを使ったプライベートDMPの構築は、それらに掛け算するような新コンセプトになります。

 高田:世界に先駆けた展開をするために、業務提携をしたとも言えます。一緒にものづくりをしたかったんですよね

横断的なマーケティング施策をワンストップで実現

 MZ:具体的なサービスのスタートや、体制についてうかがえますか?

 高田:1~3月にテストをして、今年の春のリリースを予定しています。体制としては、開発をBrightTagとヤフーでおこない、コンサルティングやサポート関連で総勢100人程度を配備する予定です。デジタルマーケティングに着手されている企業なら、コンセプトには共感していただけると思いますが、実際の運用段階ではさまざまなフォローが必要だと思うので、その点は力を入れていきます。

 山﨑:今回のプライベートDMPによって、データを蓄積する段階から活用する段階へ踏み出していただければ。個別のチャネルやテクノロジーを意識する必要がなくなると、ユーザーがこういう状況ならこのメッセージを出したい、といった感覚的なイメージをそのまま施策に落とし込むことができるので、より自由にマーケティングを展開できると思います。

 MZ:これまでは、発想は優れていても技術的な問題や連携不足で実現できない施策も多かったと思いますが、今回のプライベートDMPの導入で、まるで蛇口をひねったら水が出るようにスムーズにマーケティング施策を展開できるわけですね。

 高田:ええ。繰り返しになりますが、データはためているだけではどんどん価値が下がるので、データの収集はもちろんですが、それらをつなげて活用する部分を強力にバックアップしていきたいと考えています。

※BrightTag社は、SIGNALに社名を変更しました。

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2014/08/05 18:23 https://markezine.jp/article/detail/19031