VAIO社の創業初年度を振り返る
――VAIO社設立から1年が経過しましたが、初年度を振り返ってみて、いかがでしたでしょうか。
大田:私は社長になってからまだ2か月ですが、VAIO社としての初年度は今年の5月で終わりました。最初の1年間は、ソニーから離れて会社の形、箱を創る年でしたね。今年の2年目移行は新体制になり、次は会社の中身、つまり「稼ぐ力」を身につけるフェーズへと舵を切りました。
――では、昨年は組織や、人材、企画体制、販売体制を創る年であり、これからが本番だと。
大田:そうですね、そうおっしゃって頂いても過言ではないかと。
――既にVAIO社からはVAIO Z、Camvasなど複数のモデルがリリースされましたが、昨年度のビジネス面での成果はいかがでしょうか?
大田:VAIO Zのように個別に見れば話題性のある商品はリリースできましたが、全体の販売計画自体は予想を少し下回りましたね。
――下回った要因は何だったのでしょうか。
大田:会社の準備に手間取った部分がありました。ご存知の通り、私達はソニー傘下の元で、製造、販売をしていたわけです。それがソニーが「VAIOを手放す」という報道が有り、世間的には「ソニーがVAIO事業を止めた」というネガティブな印象で受け止められてしまった。設立当初はソニー時代からのラインナップを引き継いでいたこともあって、敗戦処理の会社みたいに言う人もいたんですよ。そういったネガティブな空気から、新生VAIOとして新たな商品をリリースするまでに、かなり労力を割かれてしまいましたね。
――なるほど、ソニーさんのVAIO撤退という報道はかなり影響があったんですね。社長になられる前の話となりますが、VAIO社の1年目という観点では、日本通信さんから発売されたVAIO Phoneがちょっとした騒動になりましたが、どうお考えでしょうか。
大田:VAIOにとっては、通信事業に進出するという目的があったので、その点については成功だったと考えています。しかし、一方で反省点がなかったわけではありません。今後もブランドライセンスビジネスは行いますが、そのブランドが利用される商品については我々もしっかり関与していきます。
――なるほど、VAIO Phoneについては関与できていなかった、と。
大田:おまかせになってしまっていましたね。
――VAIOオリジナルのスマホは登場するんでしょうか?
大田:検討はしています。スマホもタブレットもVAIOとして手がけたいと思っています。
――そうなると、市場ではソニーさんのXperiaとの比較を期待されると思いますが、方向性としてはBtoCではなく、BtoBを狙われる。つまり、Xperiaとは異なるマーケットを開拓するということでしょうか。
大田:そうです。あの世界にこれから入っていくのは厳しいと思いますからね。