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大元隆志のマーケター訪問記

「ネットフリックス上陸は脅威ではない」エイベックスが仕掛けるdTVの次なる戦略

 世界最大の動画配信サービス「ネットフリックス」が今秋から日本でのサービス展開を予定している。日本テレビが運営する「Hulu」も今年会員数が100万人を突破した。民放キー局がネットでの見逃し視聴を活性化させる等、動画コンテンツの視聴スタイルが新たなステージへと突入しつつある。今回は国内動画配信最大手の「dTV」の戦略について、エイベックス・デジタル株式会社 常務取締役の村本理恵子氏に迫った。

「ネットフリックス上陸は脅威ではない」エイベックスが仕掛けるdTVの戦略

(左)エイベックス・デジタル株式会社 常務取締役 デジタルビジネス本部 本部長 村本理恵子氏
(右)伊藤忠テクノソリューションズ ITビジネスアナリスト 大元隆志氏

――「dTV」について、教えていただけますか。

村本:一言で言うと、テレビという大きな画面でエンターティメントをもっと便利に快適に楽しんでもらうためのサービスです。もともとは「BeeTV」というサービスとして2009年5月にスタートしました。サービス開始当時はフィーチャホン向けに50本ほどのオリジナルのドラマやバラエティを提供していましたが、スマートフォンの普及が始まった2011年11月に「dビデオ」というサービスへと脱皮。従来のオリジナルコンテンツに加えて、大量のライセンスコンテンツも楽しめるサービスへと変化してきた、そんな経緯があります。

――動画配信と言えば今秋にネットフリックス上陸が注目されていますが、ネットフリックスをどう見ていますか?

村本:動画配信市場に注目が集まるきっかけになり、業界全体にプラスになると考えています。弊社は、これまで6年間にわたり、動画配信事業を行ってきましたが、まだまだレンタル市場等と比べれば小さな規模です。こんなに便利なサービスなんだから、本来もっと伸びシロがあるはずなのに、まだ世の中に浸透しているという状況には至っていないと見ています。ネットフリックスの上陸によって、動画配信市場への関心が高まることは、動画配信業界全体にプラスになると思います。

――では、ネットフリックスは脅威ではないと。

村本:そうですね、脅威、敵というよりは、むしろ、上陸していただけることは大歓迎というのが、正直な気持ちです。もちろん、ネットフリックスさんの上陸によって自分たちとしても身を引き締めないといけません。しかし、身を引き締めるということは、サービスを利用するお客様にとっては良いことです。互いにサービスレベルを競い合ってお客様をより満足させる、そんな競争が起きることを期待しています。良い競争相手として一緒に動画配信市場を拡大していければ、それが正直な気持ちですね。

――dTVの前身であるBeeTVの開始が2009年5月1日、その月末には会員数が30万人を突破していましたよね。有料動画サービスでこのロケットスタートは凄いと思うのですが、ドコモさんの店頭での営業支援はあったのでしょうか。

村本:店頭での告知等もありましたが、当時BeeTVはドコモさんの1コンテンツ・プロバイダーに過ぎませんでしたので、特別に厚遇されていたという感じではなく、他のコンテンツなどと同じ規模感でしたね。

――では、純粋にコンテンツの魅力によって契約数が伸びたと。

村本:はい、コンテンツと分析力ですね。BeeTVの準備には1年を費やしました。その間に徹底的にリサーチしたんですね。「携帯電話はどんな風に利用されているのか」「何処で利用されてるのか」「電車の中で生活者は何をしているのか」「お茶を飲んでいる時に何をしているのか」「そんな時、携帯電話はどういった使われ方をしているのか」など。それと同時に「どんなコンテンツをどんなタイミングで見たがっているのか」「どれ位の価格帯であれば、暇つぶし道具として新しいサービスを受け入れるのか」といったことを追求していきました。そういった調査と分析を通して、サービスを組み立てて、受けるコンテンツを作りました。だからリリース時にはこのサービスならイケるという確信がありましたね。

 実は私たちの目標値は初月で45万人だったので、思ったより行かなかったという感触でした。でも、ドコモさんはこんなにいくとは思ってなかったみたいで、驚いてましたけどね(笑)。

――ドコモさんでなくても驚く立派な数値だと思いますけど(笑)。サービスの認知を広めるために、どういった施策が功をそうしたのでしょうか。

村本:まずは、記者発表等を開いて、お客様に対して「単なる動画配信が始まる」というのではなく、あえて「BeeTV」という名前を付けて、世間で一番小さい放送局が始まります、ということをお伝えしました。それと、、、2009年当時の携帯電話で楽しめる有料動画配信ってどんなものを思い浮かべますか?

――ほとんど思いつかないですね。

村本:ですよね、そんな状況の中に、市原隼人さん主演のドラマとか、普通にテレビのゴールデンタイムで流れるような番組を投入していったんですね。そうすると「これ、なんなの」ってみんなが思った。私たちはエンターティメントとは「驚き」だと思っていますから、それを作りだすことに成功したんだと思います。さらに、当時のこういったサービスでは無かった宣伝展開し、エイベックスの総力戦がロケットスタートに繋がったと思います。

――そうしますと、開始当初はエイベックスとしての強みをフルに活かしたサービスだったんですね。そして、2011年にdビデオへとブランド転換していったと。

村本:そうですね、BeeTV時代はエイベックスの総力戦でした。それがdビデオにブランド転換をした理由は明確です。オリジナルコンテンツでの展開の限界は「200万ユーザー」とBeeTV開始当初から見積もっていたこともあり、その限界を越えるために大きな転換が必要でした。

――BeeTV開始当時から、成長の踊り場が来ることを予見していたと。

村本:はい。次のステージに上がるためには、私たちが製作した物以外の映画やドラマといったライセンスコンテンツの充実が必要だと考えていました。2011年スマホが急速に成長していた時代に、スマホで充実したエンターティメントを提供する世界観を創りだすということと、ドコモさんのブランドを冠することで店頭での拡販を強化する、こ2つの狙いがあってdビデオへとステージを進めました。

――コンテンツの力では、200万人が限界だったと。

村本:そうですね、私たちだけのコンテンツで勝負をしていたら、いくらドコモさんの店頭での拡販があったとしても、200万人を超えることはできなかったですね。その壁を超えるためには、ライセンスコンテンツ、店頭での拡販力この力が加わることが必須でしたね。

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この記事の著者

大元 隆志(オオモト タカシ)

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 クラウドインテグレーションビジネス推進部 エキスパートエンジニア 国士舘大学 経営学部 非常勤講師 通信事業者のインフラ設計、提案、企画を12年経験。現在はCASBソリューションのセールス開発・プリセールスを担当する一方で、国士舘大学 経営学部にて学生向けに企業におけるクラウド、モバイル利活用について講座を担当する。最新のIT動向や技術動向分析が高く評価され、ヤフーニュース、IT Leaders、ITmediaマーケティング等IT系メディアで多く...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2015/05/07 10:00 https://markezine.jp/article/detail/22383

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