「PV」・「UU」を稼ぐコンテンツと「エンゲージメントする」コンテンツ
さらに、エンゲージメントを獲得するコンテンツと「PV」・「UU」を獲得するコンテンツは、その性質に違いがあることも認識すべきです。前回の記事でも触れましたが、PVを稼ぐコンテンツとして、大手ニュースメディアは盛んに芸能人のゴシップ記事を掲載します。
しかし、当社の独自ツールで計測してみると、そうしたゴシップニュースは、露出量の割にエンゲージメント数が低いことがわかります。生活者が「見たい」コンテンツと「シェアしたい」コンテンツには、大きな相違があるということです。
コンテンツをエンゲージメントさせるためには、コンテンツの中で訴求される理念や皆が知らない事実、現象など、“思わず人に語りたくなる要素”がコンテンツに含まれていることがとても重要だということです。
その意味では、シェア拡散力のあるメディアとは、エンゲージメント獲得追求の中で、生活者の「シェア拡散する」モチベーションを喚起するコンテンツづくりを追求しているメディアであるともいえます。
広報活動のKPIもエンゲージメント数をもとに設計・計測できる
また、メディアの新たな評価指標が「エンゲージメント」であるならば、企業がメディアとリレーションを築いて獲得した自社に関する露出記事のパフォーマンスも「エンゲージメント」で効果測定することができます。最近では、実際に当社へそうしたご相談も寄せられ始めています。
現状、多くの企業の広報部では、広報活動の成果を測る際、単純に掲載媒体数を数えるか、広告費換算するか、記事の推定「PV」「UU」を掛け合わせて推計することが一般的なやり方で、これでは十分な効果分析にはならないと感じられる方も多いのではないでしょうか。しかし、たとえば、自社のニュースが掲載された記事やSNSへの関連投稿の「いいね」や「シェア数」「口コミ数」などの総数である「エンゲージメント数」を定量的に把握すれば、広報施策のインターネット上でのパフォーマンスを数値として明確に評価することが可能です。
また、自社の話題が「どのメディアに掲載されれば生活者にシェアされやすいか」といった視点で検証すれば、アプローチを強化すべきメディアが見えますし、「どんな記事内容がエンゲージメントしやすいのか」を検証すれば、どんなプレスリリースを書けば良いのかもわかります。
エンゲージメント分析がおもしろいのは、これまで基本的にはブラックボックスとなっていたメディアのパフォーマンスを客観的に把握することができる点です。エンゲージメントを指標とする広報のKPI設計については、また改めて詳しくご紹介したいと思います。
コンテンツのシェア拡散力をメディアの力へ
今回は、シェア拡散されるメディアについて、最新の動向を踏まえて解説しました。各メディアの実際の運用状況を確認していないので、特定のメディアを取り上げて解説することは避けましたが、国内でもエンゲージメントに忠実にビジネス展開するメディアが急増していることは事実です。
今では、メディアの規模に関わらず、SNSを地道に運用することで、コンテンツや広告パフォーマンスの下克上を生む局面も出てきています。巨額の資本を持つ特定のプレーヤーに限定されてきたメディアビジネスは、今や生活者の“語りたい気持ち”に寄り添い、コンテンツのシェア拡散力をいかにメディアの力に変えるかといった、根本的な転換期を迎えているのです。
「純粋にコンテンツの力」によってエンゲージメントを獲得し、生活者の中に浸透していく情報流通構造を前提としたコミュニケーションは、これまでのメディアにおけるヒエラルキーを再びゼロベースに引き戻すことを意味します。こうした環境の中、企業のマーケティングや広報活動においても、メディアをフラットに評価し、人々のエンゲージメントを促すような方法で、企業が伝えるべき理念をもとにした、本質的な企業コミュニケーションが活性化していくことを切に願います。
