シェア拡散力のあるWebメディアを分析
その時々の時流に合わせ、コンテンツがシェアされる理由を分析してきた本連載。前回は2017年1月の「ニュース」コンテンツをエンゲージメント数(※)で分析し、SNS上でシェア拡散されているニュースの内容から、「どのようなコンテンツが生活者にシェア拡散されやすいのか」を解説しました(前回記事はこちら)。
今回のテーマは、「シェア拡散力のあるWebメディアとは?」です。これまで、コンテンツがシェア拡散される理由をコンテンツの中身から考察してきましたが、今回は「そもそもコンテンツがシェアされやすいメディアとは?」について、分析してみたいと思います。
(※)エンゲージメント数とは
「いいね」やシェア、コメント、リツイートなどFacebook、Twitter、Google+での総アクション数に加え、対象コンテンツについて取り上げた記事やSNS上における口コミなどの総数。スパイスボックスの独自ツールにて計測。
「PV」・「UU」でメディアの価値を測る時代は終わり
まずは、SNS時代の到来をきっかけに変化をはじめたメディアのあり方と、それにもかかわらず、いまだ変化の少ないメディアの評価指標についておさらいしたいと思います。
SNSの浸透など、デジタルコミュニケーションのトレンドの変化により、生活者に支持されるWebメディアは目まぐるしく変化してきました。一方、インターネットの黎明期から続くWebメディアの評価指標はいまだに「PV」と「UU」であることがほとんどです。様々なWebメディアの媒体資料(広告メニュー)を見ても、メディアの価値を表す指標として「PV」と「UU」は必ずといっていいほど記載されています。
その根本的な理由は、メディアのビジネスモデルにあると考えられます。これまでのメディアは、基本的に自社のサイトに訪問するユーザーを増大させ、収益を向上させることが前提となっていました。確かに、自サイトのみでコンテンツが閲覧される場合には、サイトの訪問者数、記事閲覧数が最も重要な指標であることは間違いありません。
しかし、スマートフォンが普及し、SNSが台頭し始めると、ユーザーを自サイトに流入させる目的で各WebメディアがFacebookやTwitterなどに自社記事を配信し始めました。その結果、多くのユーザーが各SNSから各Webメディアに流入するという変化が起こりました。
一方、そうした流れの中、昨年Facebook CEOのマーク・ザッカーバーグ氏が、News Feedの活性化に向け「家族や友人の情報が優先される」ようにFacebookのアルゴリズムを変更したと発表しました。自身がよく知る人の情報ほどシェアしたくなる可能性は高まりやすく、これは“Facebook上でよりエンゲージメントし、閲覧されるコンテンツ”を優先するアルゴリズムへの変更だといえます。Instagramでも同様の変更が行われました。
SNSの運営企業としては、できるかぎりユーザーをフィードに滞留させたいわけですから、当然の流れと見ることができます。しかし、この大胆なアルゴリズムの変更は、今後はメディアも自サイトへの誘導ありきでSNSプラットフォームを活用するのではなく、タイムライン上で完結するコミュニケーション設計が重要になることを示唆しています。これは、自サイトへの流入を前提としてPV・UUを通貨に組み立ててきた、各メディアのビジネスモデルを根幹から揺るがす事態です。
この変化は、今後はメディアも自サイトへの誘導ありきではなく、SNSプラットフォーム上で完結するコミュニケーション設計が重要になることを物語っています。