DuolingoとテレビCMの相性が良いと確信していた
――Duolingoでは、2022年の5月に初めて全国でテレビCMを出稿したと聞いています。その背景を教えてください。
私が2020年8月にDuolingoに入社したときから、テレビCMにはチャレンジしたいと考えていました。というのも、テレビという広告媒体はアプリマーケティングにおいて相性が良いと考えていたためです。
日本において広告媒体としてのテレビはいまだに強大なリーチ力を持っています。また、アプリの場合、認知から比較・検討、インストールまでのフルファネルに効果を発揮できるポテンシャルを持っています。
実際、前職時代に携わっていたアプリのマーケティング活動の中でテレビCMを活用した結果、大きな成果を生むことができました。Duolingoも同様に、テレビCMのポテンシャルを活かせば、大きな成長を生み出せると考えたのです。

――水谷さんのこれまでのキャリアではゲームや配信アプリなど、異なるジャンルのアプリのマーケティングに携わっていたと思います。Duolingoも同様に高い成果を出せると思えたのには、どのような理由があったのでしょうか。
Duolingoは楽しく、そして誰もが等しく学べる教育アプリをコンセプトにしています。そして、このコンセプトを認知している方だと、利用までの転換率が高いことがわかっていました。つまり、Duolingoのコンセプトを強いキャッチコピーやクリエイティブに乗せ、テレビCMで認知を急拡大すれば、ユーザーも自ずとついてくると考えました。
地方のテストマーケは失敗、それでも全国放送できた理由
――入社した当時からテレビCMを出稿したいと思っていた中で、初めての全国テレビCM放映は2022年5月と、少し期間が空いていると感じました。何か実施のハードルがあったのでしょうか。
Duolingoはアメリカ本社のグローバル企業であり、日本以外の多くの国では、テレビCMがワークしないという認識であり、理解してもらうのに苦労しました。当時の私の上司が日本のテレビCMのポテンシャルを理解してくれていたこともあり、度重なる交渉を経て、2022年5月の実施前に地方でのテストマーケティングを行えることになりました。
――地方でのテストマーケティングの結果はどうだったのでしょうか?
テストマーケティングでは、許容CPIに大きく乖離し大失敗と言える結果でした。
――根強く交渉をしてつかみ取ったチャンスだったのに、失敗になってしまったんですね。失敗の原因はなんだったのでしょうか。
アメリカ本社にクリエイティブのチェックが必要なことは知っていましたが、想像よりも確認フロー・項目が存在していたことに進行中に気付き、本来目指していたクリエイティブの完成が間に合わなかったのです。
急遽グローバルで使われていたブランド広告をクリエイティブに使用した結果、日本の視聴者には受け入れづらい内容で成果も得られませんでした。
――ここまでの話だけ受けると、とても2022年5月に全国放映できると思えないのですが、どのように失敗を乗り越えたのでしょうか。
テストマーケティングの失敗をそのままにするのではなく、この数値をベンチマークとして、クリエイティブの検証を行い、失敗した数字を大きく上回るスコアを出せるものができたら、再度チャレンジさせてほしいと交渉しました。
そして、無料や40言語以上が学べる、UIを見せる/見せないなど、様々な要素を検証し始めました。この当時から「デュオリンゴロゴロ」の原型と言えるアイデアも実は存在していました。そして検証を続け、伝えるべき要素と構成を突き詰めた結果、テストマーケティングで実施したクリエイティブを大きく上回るスコアをたたき出し、メディアプランが間違いなければ確実に成果が出せると実感できるところまで改善できたのです。この検証プロセスを上司やグローバルも見ていたので、2022年5月に全国でテレビCMを放映することができました。
――検証の段階から「デュオリンゴロゴロ」の原型があったのですね。
検証の段階から「デュオリンゴロゴロ」のスコアは高く出ていました。ゴロゴロしながらでも語学学習ができるというのが、日本人の「勉強はしたいけど、正直気が進まない」というインサイトに根差していたのだと思います。