リテールメディアは「断片化」から「統合ネットワーク」へ
──リテールメディアは「バズワード」として注目を集め、今では多くの企業が取り組み始めています。現在地をどう見ていますか。
サードパーティーCookie規制の動きを受け、より精度の高いターゲティングや買い物の瞬間に近いタッチポイントが求められるようになった背景から、リテールメディアは注目を集めてきました。リテールメディアが先行する米国では、「広告の第3の波」と呼ばれバズワード化したことで、広告主・リテーラーともに「リテールメディアを活用して、新しい打ち手を何か試さなければならない」という空気感が生じていたと思います。
ところが現在の日本で「リテールメディア」と言うと、依然として店舗内サイネージをはじめとする「実店舗のメディア化」のイメージが強く、実際に導入が進んでいるのもオフライン施策です。そのためデジタル領域のリテールメディアは、まだまだ発展途上と言えるでしょう。しかし効果計測の観点でも、デジタルのほうがパフォーマンスを突き詰めやすいので、今後伸びていくと見ています。
──2026年には、どんな変化が起きそうでしょうか。
大きく2点が考えられます。1つは、EC化率の向上を背景に、デジタルのリテールメディア文脈でデータの統合・整理が進んでいくと思います。
もう1つは、個別の店舗・個別のリテーラーで断片化しているリテールメディアが、協業によって統合されていく流れです。現在は各社が個別に立ち上げていますが、それでは広告主にとってのスケールが限定的です。今後は複数のリテーラーが束ねられ、広告主が1つの窓口から広範囲にアプローチできる、本来の意味での「リテールメディアネットワーク」が形成されることで、各リテーラーがAmazonのようなコマースエコシステムを構築できる可能性が広がると見ています。
広告主とリテーラーを悩ませる「運用の分断」
──1社単独の限界を超え、ネットワークとして「統合」していくことが本来の姿なのですね。しかし、現状はリテーラー各社でデータや仕組みがバラバラで、運用の壁にぶつかっている広告主も多いと聞きます。
おっしゃる通りです。現状、多くの現場で起きているのは、本来目指すべき統合とは逆の「断片化」による疲弊です。たとえば、オフサイトは複数のプラットフォーム、オンサイトは検索連動型、ディスプレイは別の仕組み、と分かれていると、レポーティングがバラバラになってしまいます。
さらにIDが別々だと、本当に同じユーザーに当たっているのかが見えづらい。結果として、重複配信や広告疲れが起きていても把握しにくい、という課題にもつながります。
──リテーラー側の課題はいかがでしょう。
リテーラー側も同様に、「運用の断片化」がコストと工数の負担を増大させています。複数ベンダーを入れてしまうと、契約・実装・運用工数がそれぞれ増える一方で、リテールメディアの担当人数は社内で多くないケースがほとんど。要件定義から複数社との調整、実装、運用にいたるまでの管理工数が非常に重く、結果として「やりたいことは増えるのに、体制が追いつかない」という現象が起きやすいと思います。

