SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

おすすめのイベント

マーケティングは“経営ごと” に。業界キーパーソンへの独自取材、注目テーマやトレンドを解説する特集など、オリジナルの最新マーケティング情報を毎月お届け。

『MarkeZine』(雑誌)

第113号(2025年5月号)
特集「“テレビ”はどうなる?」

MarkeZineプレミアム for チーム/チーム プラス 加入の方は、誌面がウェブでも読めます

注目マーケティングトピックス2025

「労働力としてのマーケターはもういらない。」すがけんさんに聞く、生成AI時代にマーケターが生き残る術

 「労働力としてのマーケターはもういらないからみんなキャリアどうするんだろ。」――マーケターであり経営アドバイザーの菅原 健一(すがけん)氏が先日、X(旧Twitter)でこのようにポストした。確かに、広告運用やレポーティングなどの「作業」はAIで効率化されていく昨今、タスクをこなすだけのマーケターは不要になっていくのかもしれない。では、この時代のマーケターの価値とは何か、生き残るためのカギは残されているのか。シビアな言葉の裏に隠された真意や、すがけん氏の考えるマーケターの生存戦略についてうかがった。

空白の30年。マーケター、何してたの?

――すがけんさんの先日のポストには、驚きつつも危機感を覚えました。まず、率直にこのポストを投稿された背景をお伺いできますか。

 では、私がこのように考えた背景となるファクトからお伝えしますね。

 まず、日本はここ30年間、GDPがほとんど伸びていないんですよ。加えて、企業の時価総額もほぼ横ばいの状況。30年前は世界の時価総額ランキングトップ10に日本企業が4社ランクインしていたのに、今は上位からすっかり消えてしまいました。生産力も上がっていなければ、企業価値も上がっていない。これでは給料が上がらないのも当然ですよね。実際にここ20年で、所得の中央値が500万円台から400万円台にまで下がってしまっているのが現状です。

画像を説明するテキストなくても可
株式会社Moonshot 代表取締役 CEO 菅原 健一氏(すがけんさん)
企業の10倍成長のためのアドバイザー。社会や企業内に存在する「難しい問題を解く」専門家。年間でクライアント10社、エンジェル投資先20社の計30社のプロジェクトを並行して進める。過去に取締役CMOで参画した企業をKDDI子会社へ売却し、そのまま経営を継続し売上を数百億規模へ成長させる。スマートニュースでブランド広告責任者とBtoBマーケティング責任者を経て現職。著書に『小さく分けて考える 「悩む時間」と「無駄な頑張り」を80%減らす分解思考』(SBクリエイティブ)『厚利少売  薄利多売から抜け出す思考・行動様式』(匠書房)など。

――深刻な状況ですね。

 ええ。また、PBR(株価純資産倍率)という「株価が1株あたり純資産の何倍であるか」を示す指標があるのですが、上場企業の43%が1倍を切ってしまっています。これはつまり、成長に対する市場の期待が低いということ。広告費は年々増加しているにもかかわらず、企業価値が思うように高まっていない企業も多い。つまり「広告に多くの予算を投じても、顧客や社会から見た価値が伴っていなければ、企業の価値にはつながらない」ということです。日本の広告費は年々増加している一方で、「マーケターは何してたの?」と思ってしまいますよね。

 もちろん、本来であれば「経営者は何をしていたのか?」という問いが正しいのですが、企業や商品の“価値を上げる”という本質的な役割、そして企業内でも最大級の投資対象である広告費を扱っているのがマーケターであることを考えると、マーケター自身も「自分たちは何をしていたのか?」と問い直すことが、むしろマーケターの価値を高めるための本質的な問題設定になると思っています。

マーケターは企業価値向上の当事者。その自覚はあるか?

――現役マーケターにとっては耳が痛い話ですね。すがけんさんは、マーケターは本来どんな役割を担うべきだと考えますか。

 マーケターの仕事の本質は「価値を高めること」だと考えています。上手に広告費を使って企業価値を高めることも、低利益の状態を脱することも、本来はマーケターの仕事であるはず

 また、広告費は本来「コスト」ではなく「投資」です。投資するなら少なくとも1倍以上、もっと言えば2倍、3倍のリターンを期待するものですが、「毎年使っているから」「予算が決まっているから」と、各社が半ば仕方なく広告費を消化している状況です。もはや、宣伝部は利益を生まない「コストセンター」の扱いになってしまっているところも多いです。

――この状況に対して、危機感を持っているマーケターも多いのでしょうか。

 危機感を持っている人が多ければいいのですが……、必ずしもそうではないかもしれません。こんな状況でも会社で働く日常は続きますし、毎月お給料はもらえますよね。マクロの視点では世界にどんどん離されてしまっているのに、自分の周りのミクロな視点で「それでも生活できるから問題ない」と捉えてしまっている人もいるのではないでしょうか。

 マーケターは本来、企業価値向上の当事者であるはず。しかし、現実には、毎年数億円、数百億円を広告費に使って、あまりリターンの測定もせず結果として利益で1倍以上に返すこともなく、「これが現実だ」と無意識に受け入れてしまっている方も多いかもしれません。この状況が非常にまずいと考えています。

会員登録無料すると、続きをお読みいただけます

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
    ※プレミアム記事(有料)は除く
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

次のページ
「労働」はAIで代替できる時代。閉ざされつつあるマーケターのキャリア

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • Pocket
  • note
注目マーケティングトピックス2025連載記事一覧
この記事の著者

安光 あずみ(ヤスミツ アズミ)

Web広告代理店で7年間、営業や広告ディレクターを経験し、タイアップ広告の企画やLP・バナー制作等に携わる。2024年に独立し、フリーライターへ転身。企業へのインタビュー記事から、体験レポート、SEO記事まで幅広く執筆。「ぼっちのazumiさん」名義でもnoteなどで発信中。ひとり旅が趣味。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

福島 芽生(編集部)(フクシマ メイ)

1993年生まれ。早稲田大学文学部を卒業後、書籍編集を経て翔泳社・MarkeZine編集部へ。Web記事に加え、定期購読誌『MarkeZine』の企画・制作、イベント『MarkeZine Day』の企...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2025/06/05 07:30 https://markezine.jp/article/detail/49156

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング