なぜ5Gが動画ビジネスを拡大するのか?
5Gとは5th Generationの略称で、通信規格の「第5世代」を表す。1Gは携帯電話の音声通信、2Gはデジタルデータ通信、3Gは国際標準のLTE技術による高速化で、4Gはスマートフォンにそれを適用したもの。そして、5Gはスマートフォン以外のIoT機器も含めた通信で、LTEの100倍に近い20Gbps(ギガビーピーエス)の速度を実現しようとしている。現在の4Gと比べると、通信速度は約20倍の20Gbit(ギガビット)/秒に。同時に接続できる端末数は約10倍の100万台(1平方キロメートル当たり)になる。さらに、配信の遅延は約10分の1の1ミリ秒に減らすことができるのだ。
5Gには様々な利用用途が期待されているが、筆者は動画こそが、5Gの普及に大きく貢献すると考えている。その理由は次の5つだ。
1)コンテンツとしてのストックが大量にある
映画やテレビ番組、YouTubeやTikTokを始めとするUGC(User Generated Contents:ユーザーが生成したコンテンツ)が既に大量に存在しており、それらが流通する時にユーザーに対する利便性が大きい。
2)権利を保護しやすい/課金させやすい
インターネットでは、テキストはコピペ、画像はキャプチャーなどで複製や違法な利用が簡単にできる。しかし動画に関しては、そのような簡単な手法は今のところ存在せず、ファイル形式が大きい分、権利を守るプロセスを入れやすい。そのためユーザーに課金させやすいものとなっている。
3)ユーザーに明確なメリットがある
5Gによる動画配信には二つの特徴があり、そのひとつがスピードだ。たとえば2時間ほどの映画をダウンロードする際、4Gでは5分程度時間がかかっていたが、5Gであれば3秒で済む。また5Gの通信は処理が高速で同時性も高いため、現在インターネット配信で生じている「生配信のずれ」なども起こらず、ほぼリアルタイムで中継ができるようになる。さらに、動画の持つ情報量は多く、1分間の動画はインターネットのWEBページ3,600ページ分、180万語に匹敵すると言われている(参考:動画マーケティングの威力が伝わる統計と動画作成5つのポイント)。
4)プロモーションや研究開発費用が大量に流れ込んでくる
この記事を書いている4月10日には、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクと楽天に5Gの周波数が割り当てられた。サービス開始は2020年の春頃になる見通しである。動画ビジネスの進捗は5Gの目玉になると思うので、筆者の予想では「動画見放題プラン」などが出てくることになるのではないだろうか。また、TikTokのような動画専業のサービスも広がるほか、GAFAやTwitterなどのインターネットインフラ業者が次々と動画サービスを展開している。5Gが始まった際には、携帯メーカー、通信キャリア、サービス業者が入り混じった大きなキャンペーン合戦が繰り広げられるのではないだろうか。
5)誰でも簡単に作ることができ、効果も計れるようになってきている
今回の取材では、現在開発中あるいは拡大基調にあるサービスを取り上げることにした。動画の制作に多くの費用と時間がかかるようでは、マーケティングに活用しにくい。動画マーケティングの普及には、誰でも簡単に、安く動画を制作することができ、さらにその動画のもたらす効果計測が簡単にできることが不可欠なのだ。まさに今、その環境が整いつつある。