20代・30代に増加 自身のスキルセット・キャリアを描きなおす不安
最後は、リモートワークで時間にゆとりができ、パラレルキャリアについて考えるうちに、自分のキャリア・スキルセットに自信喪失気味になってしまったFu-manさんです。

コロナ禍は、今の働き方を変えるだけでなく、未来の働き方を考える契機にもなりました。リモートワークやステイホームによってモラトリアムを手にしたことで、多くの人が改めて自身のキャリアを見つめ直し、第2のキャリアを築けるようスキルセットを考え直しはじめました。
ここ数年で副業を解禁する企業が増えてきたことも、大きな後押しとなっています。女性誌などでも“第2のキャリア・副業”をテーマとした特集が組まれたり、SNSのタイムラインでは“これからのキャリアの組み立て”に関連する投稿を目にしたりする機会が増えました。
そんな社会的ムードの中で「パラレルキャリアについて、少し考えてみようかな」と一歩踏み出してみたところ、人によっては一寸先に“凹みの沼”が待ち構えていたようです。
「自分のスキルの足りなさに気づいて、落ち込んだ」「今の自分のスキルだけでは難しい。もっとこの時代に向けて努力すべきだった」など、現状の自身のスキルセット不足に気づき、焦りを感じる声を多く見かけました。
また「たくさんの情報に触れるうちに弱気になり、調べれば調べるほど落ち込んでしまう」「具体的なビジョンがない中で動き始めると、インプットだけが増えるので、不安が高まる」など、気分が一気に急降下してしまった人も多数。社会の現実や自分のスキルがある程度見えている状態で、就活以来の自己分析をしたことで、心に激痛が走った人がたくさんいるようです。
そんなFu-manさんは、20代・30代の男女の中に見られました。この世代は、1つの会社でキャリアを全うすることが多かった少し上の世代とは異なり、必然的にパラレルキャリアや副業を前提にキャリアパスを描くことが求められる世代です。
突如手にしたゆとりある時間の中で、キャリアを考え直せることを良い機会と捉えて、足りないと気付いたスキルの補強に取り組んでいるといった意欲的な声も存在します。一方で、誰もが新たなキャリア形成に向けて前途洋々であるわけではありません。前向きな気持ちこそあっても、膨大な情報量に戸惑ったり、高次元のお手本だけを見て自信喪失したり、自分を追い込んでしまう人もいるようです。
CX発想のヒント キャリアに寄り添うカウンセリング、レッスン、学習サービスに需要あり
コロナ禍は、あらゆる学びの場を急ピッチにDX化させています。そのおかげで、習い事や趣味の選択肢の幅を広げ、新しいチャレンジへと踏み出す契機を生み出しています。それは、パラレルキャリアについて考えることにも通じるはずです。急増したオンラインレッスン・学習サービス群は、この機会を逃すまいと新規顧客獲得に奔走していますが、他社サービスとの差別化をどうはかっていくかが今後の重要なテーマとなってくるはずです。例えば、提供するカスタマージャーニーを広げて捉え直し、キャリアカウンセリングなどから関係性をスタートさせ、ユーザー個々に最適なオンライン学習や趣味を提案していくような体験を設計できれば、Fu-manさんたちのペイン解消と共に、自社サービスの差別性確保に繋がるかもしれません。
今回紹介した4タイプのFu-manさんの中に、心当たりのタイプはありましたか? 多くの企業が新しい働き方への移行を推し進める中、これからも新たなFu-manさんが出現してきそうです。
Fu-man insight labでは、これからも引き続きFu-manさんの調査・観察活動を続けてまいります。